とある朝のお話(7)
ーピンポーン…ー
来客を表すチャイムの音が鳴った。いわずもがな誰か分かり切っていた。
「急ぎなさい、翔。紗良ちゃんが来たわよ。」
紗良ちゃん、と呼ばれたのは残念イケメン翔の家の隣に住む世話焼き美少女、此里紗良であった。
「うへっ、嘘だろ…。」
驚いたようにいいながらチラッとテレビの左上に表示されている電波時計を見る。
「7時30分…。」
翔はいつも隣に住む紗良と一緒に学校へ通っている。いつも紗良が翔の家へ迎えに来てくれる。約束の時間は7時30分。つまり、今なのだ。
「えーっと、あー、はは。」
今の自分は全く以って学校に行ける格好ではない。いつも留めているピン留めは留めてない、三つ編みをしている髪は適当に散らばっていて、顔は洗ってない、歯も磨いていない、服は上だけ着替えただけで下はジャージだ。
「母さん!俺、全然準備出来てねーわ…はは。」
全く全く残念な奴です。
「髪は電車の中で紗良ちゃんにといてもらいなさい!くくるのは自分で出来るわよね?今から歯磨きして顔洗って!着替えはズボン取って来てあげるから!その間に全部終わらせなさいね!」
きびきびと指示を出す夕子。あれ、全然残念じゃない、だと…?!
「分かった。あー、さら?そういうことだから5分待ってくれねーかな?」
インターフォンを通して外にいる紗良に話しかける。
「仕方ないから5分だけ待ってあげないこともないよ。でも、5分で無理だったら知らないから!さてさて、計りますかな?」
といいながら紗良が出したのはストップウォッチ。しかし、それに驚いた様子を見せない翔から日常茶飯事だということが分かる。
「よーい、スタート!」
の掛け声とともに翔は洗面所へと走る、走る。
「うっし、3分で終わらせてやる!」
顔を洗い歯を磨いた翔の後ろには夕子が立っていて
「はい、ズボンよ。」
と渡してくれた。ついでにスクールバッグも。
そのまま靴を履き玄関を開ける。
「4分39秒、まだまだね。」
と和やかに立っている幼馴染がいた。
ああ、学校に馴染めない…
お友達がほしいどすー…
ぷはぁ