気分屋
随分久しぶりだね
残念イケメンはぼっちで帰宅中だった。が、
「やあ、そこのお兄さん。寄って行かない?」
品揃えもいいよ?
翔は声を掛けられた。
「え、と?」
驚いたので少し怯む。
それもそのはずだ、翔に声を掛けたこの男の気配はさっきまで無かった。
人間というものは、何か特殊な訓練をしていなくても大なり小なり他人の気配を感じることが出来る。吸血鬼の翔にとっては尚更だ。
だが、しかし気付かなかった…。否、気付けなかった。
「品揃え、ねぇ…?」
道の脇に露店を出している男性の店をチラッと見たが何も置いてなかった。
と、いうかこれは露店と云うのか?と目を疑った。
何故なら、まだ20と少しぐらいの金髪でピアスをジャラジャラと着け、如何にも人生謳歌してますみたいな男が軽トラの荷台で体育座りをしていたからだ。
此れ程シュールな光景は滅多にお目にかかれないだろうし写メを撮ってさらに送ってやろう、と考えていた翔だが、幾らなんでも失礼だと残念な頭ながら理解したのですることは無かった。
「どう?すぅっごい、品揃えいいっしょ?」
「はぁ…?」
何もなくね?とか思いつつ相槌の様なモノを適当に打つ翔。
「ここは何を売ってるんですか?」
余りにも気になったので聞いてみた。
「気分。」
「は…?」
「だから、気分だって言ってんじゃん?」
気分って売りモノだったか?と首を傾げる、というか180度ぐらい捻りながら考える翔。
「うーん?つまり…」
どういうことだ?と言いかけて遮られた。
「俺っちはね、気分屋。気分屋の九十九九九里」
つくもは九十九って書いてくくりは九を二回書いて里。それで、九十九九九里。
と、丁寧に説明してくれたがはっきり言って鬱陶しい。
部活をやめたため帰宅時間はさほど遅くないため門限なんかは気にしなくていいが、面倒くさい。
「あれ?お兄さん。面倒くさいなんて思っちゃってるぅ?」
何故鬱陶しいかはっきり言おう。
「アンタみたいな奴にお兄さんなんて言われたってこちとら何も面白く無いんだよ!寧ろ面黒いわ!」
ということらしい。お願いだからそんな特殊な性癖をこんな道端で見せないで。
「へぇ、ふ~ん。まあ、気分屋っていうのは俺の二つ名ってだけなんだわ。本当は、俺っち何でも屋なんだぜ?だから、ちぃーっとお前さんの家族に手を出させてもらったぜ?」
依頼されただけだが断る理由もねぇし、報酬も良かったからな!と付け加えた。
それよりも、少し手を出したとはどういうことなのだろうか…?
「俺の、家族。」




