0.1 Prelude
本編が始まる25年ほど前のお話。
とある夕暮れ時の一室で見るからに上等な着物を着た三人の男性(?)が白鷺紋の彫り込まれ
た特注品の執務机に向かい各々の雑事をこなしている。
ふと、部屋の一番奥に座っていた中性的な顔立ちをした人物が筆を置き、手元の懐中時計で時間を確認すると、左右前方に腰掛けた二人に話し始めた。
「今日も、もうそろそろ定時だねぇ。」
左前方の机に座っているコレと言って特徴のない普通の男性がおもむろに口を開き、
「だなぁ~」
と気の抜けた返事を作業を続けたまま、つぶやくのであった。
それを気にもとめず、最初に会話を始めた男性はそちらに顔を向けると会話を開始した。
「私も君らも明日から休暇だけど何か予定は結局決まったかい?」
左前方の男は顎に手をやり、しばし考えた後にこう問い返した。
「そっちは、なんか決めたんか?」
そういうだろうと思っていたと思しき微笑みを漏らした後に男はこう答えた。
「久々に下に行ってみようかと思う。」
すると、今まで黙っていた右前方に座る顔立ちの整った男性がため息を漏らしながらあきれたように筆記具を机のペン差しに立てるとこう切り返した。
「同僚が何人も殺られたのに本当に行くんですか?」
「何か問題でもあるかねぇ?」
「おまえなら問題ないとは思うが・・・」
「だなぁ、何も問題は起きないだろうさ。」
右と左からそれぞれに返答をもらい、苦笑いを浮かべた後、右前の男からこう切り返された。
「たださぁ、おまえ何しに行くの? あんな所へ?」
すると、男は簡潔にこう答えた。
「そうさねぇ、いろいろと実験してみたいこともあることだし、それにあそこはおもしろいしねぇ。実験と物見遊山と休暇を全部やってみようかなぁ~と思ってねぇ。」
「確かに、俺の好きな鉄道も種類多いし、お前さんが好みそうな娯楽にもことかかないなぁ。」
「確かになぁ~。あそこで声優にでもなってのんびり休暇するのもいいかもなぁ~。」
「そそ、まぁ救いようが無いか、救ってもいいかっていう決裁も上から以来きてるしねぇ。まぁこっちはついでだけどね。」
左の男性は少々あきれたようにこう切り返した。
「本当に思えさん仕事狂やなぁ。ある意味尊敬するわ。」
男も笑いながら、
「まぁ、仕事が趣味だしねぇ。というより少々は仕事してないと落ち着かないんだわさ。」
「本当にあきれるくらい仕事好きやなぁ、お前さんは。」
「でも、それだからこそ、あの方の右腕まで上り詰めたともいえるけどなぁ?」
「だわなぁ。俺もお前も未だにお目通り願えた事皆無だしなぁ?」
すると、見守っていた奥の男は驚いたようにこう返した。
「あれ、そうだっけか?」
「あぁ、用もないし。取り次いでももらえんしなぁ。」
「だわなぁ~。」
この答えにさらに驚いた奥の男性はこう答えた。
「じゃあ、この後会いに行くか。休暇届出さないとだしさ?」
疑問を浮かべた顔で右の男はこう返した。
「あれって、総務に出しとけば問題ないんじゃ?」
「ああぁ、良いの良いの。どうせもう遅いから上に直接上げないと承認取れないしさ。」
「あとこの後。一緒に飲みに行く約束もしてるんだわ。だからいいのさ。」
この発言に二人はあきれながらも、少々興味を引かれたようでこう言った。
「う~ん。せっかく上役に会えるんだし顔売っとくか。」
「そういえば、そうだわなぁ。」
二人はある意味で意気投合し奥に座る男に同行の節を願い出た。
「そういえば、二人は結局どうする? 私はとりあえず休暇届は書けてるんだけどさ?」
「そうさなぁ、あそこもたまにはいいか。」
「だなぁ~。」
そういった後に二人は机の筆を取り、奥に座る男と同じ行き先へ行く事に決めた休暇届を書出すのであった。しばらくして、書き終えた二人は、手早く残りの仕事を片付け、各々の机の後ろに設置されたアンティーク調の棚から鞄を取り出し上役の部屋に向かう準備を始めるのであった。ちなみに、、この二人。渡した後の居酒屋への付き合いは固辞したそうな。
こうして、この場所で一緒だった三人は彼の地においてお互いを知らない状態で再開する事になるわけだが、今は奥に座り物事を仕組んだ上役の右腕の男しか何も知らないのであった。
余談だが、休暇届を持ったまま居酒屋に二人が乗り込み手続きが当日朝になったばかりか、処理する時間が足りなかった理由で記憶の継承が不完全になってしまったのは、しばらく後になってから発覚する事実なのであった・・・。
プレリュードだけでは困るので、
できれば今週中に本編一話を掲載します。




