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あの頃に戻れるはずだった

作者: 拓夢
掲載日:2026/05/11

久しぶりに5人全員で公園に集まっていた。

「ねぇ、ちょっとこのゲームのここ難しいんだけどさ、どうやるのか教えてくれない?」

恒一がまた悠人のことを頼っていた。悠人の返事には、少し間があった。

「わかった、えーっと、ここはこうするんだよ」

悠人が解説をし始めるが、なぜか、その間が気になった。

でも、それが何かはまだわからなかった。

「お、そのゲームやってんの?今どこまで行ってる?」

大樹が2人の間に割り込み、明るく話しかけた。

「今はこのステージまで行ってる。ここ結構難しいんだよね~」

「あー確かにな。そこ結構きついよなぁ」

二人はそのままゲームの話で盛り上がり始めた。

「あれ、まだ解説終わってないのに…」

悠人がそうボソッと呟いた。

明るく言っていたはずなのに、どこか空っぽに聞こえた。

「瑛太はこのゲームやってるか?」

大樹が瑛太にそう尋ねた。瑛太は間を置かずに答えた。

「う、うん、このゲームやってるよ。楽しいよね」

瑛太が軽く笑顔を作るが、口元は少し硬かった。

「おぉ、瑛太はどれくらい進んでるん?」

「えーっと、ちょっと待ってて」

瑛太はスマホを見るふりをして視線を逸らした。

「そういや、晃はこのゲームやってる?」

「僕は、やってないよ」

「あーそっかぁ、じゃあ他にはどのようなのやってる?」

「最近あんま覚えてないかも」

「オッケー」

大樹が別の人のところへ行った。

うまく混ざれない感覚だけが残った。

「ちょっと僕は帰るね」

そう言って僕は早歩きでその場から離れた。


翌日の昼休み、恒一が悠人のことをまた頼っていたところを目撃した。

「ちょっとこれ重いから一緒に運んでくれない?」

恒一は軽くそう言った。まるで当然だと思っているかのように。

「わかった、これのこと?」

「そうそう、これ重いんだよ」

僕はまた何かが引っかかった。昨日の感覚と似ていた。

そこでようやく、昨日の違和感と繋がった気がした。きっと、恒一は悠人のことを利用しているのかもしれないと思った。

悠人が恒一の手伝いをし終わった後、僕は話しかけた。

「ねぇ、恒一って、悠人のこと利用してるんじゃない?」

「え?なんで?」

悠人が不思議そうに言った。

「だって、なんか頼み方が軽すぎるじゃん。礼を言いながらも、もう別の話を始めてたことだってあるし。」

「恒一は元々そういう感じだよ」

「じゃあ最初から利用する気だったんだよ」

「…いや、違う、きっと違うはず…」

悠人はそう言った。声の終わりだけが、静かに沈んだ。

「もうそろそろ授業あるし、教室に戻るね」

悠人がそう言い、教室へ向かった。

まだチャイムまでは時間があった。


放課後、公園に来た。まだ悠人と僕しか来ていなかった。

「なんか大樹最近あんまり来ないしグループLineもほぼ返してこないよね」

僕がそう言うと、悠人はいつもより早く答えた。

「わかる。実際来たとしても大体すぐ帰るもんね」

「うん。僕らに関心ないのかな」

「それはやだな、関心持ってほしいな」

悠人の声は震えていた。

「確かに、関心ないって悲しいよね」

「うん、離れさせないように今日は色々と話題振らないと」

色々話していると、大樹が来た。

「ごめんちょっと遅れたわ」

「全然いいよ~」

「なんか今日機嫌いい?」

「んー、まあ、多分いいよ」

曖昧な返答だった。悠人は、いつもより少し無理に笑っているように見えた。

でも、どこか違和感を感じた。

「そういえば俺そろそろ予定あるからあんまり長くここにいれない」

「そうなんだ、いつ頃に帰るの?」

「6時くらいかな。ちょっとあの遊具で遊びたいからあっち行ってくる」

そう言って大樹はあの遊具に向かって走っていった。

「やっぱ、大樹僕たちに関心持ってなさそうだよね」

「来たばっかりなのに、もう帰る話してたし…」

「そうだよね。やっぱ不自然に見えるよね」

「でも正直、実は僕ちょっと大樹のこと苦手なんだよね」

悠人が少し不安そうな声で言った。

「どうして?」

「明るくていい人なんだけど、ずっと話しかけてくるから、ちょっと疲れちゃうんだよね」

「あー、僕もそれはわかるかも」

「でも、最近あんまり来なくなったら、それはそれで嫌なんだよね」

悠人は少し視線を落とした。

「ちょっと苦手なのに、なんでだろうね」

悠人がそう言って苦笑いした。

「あれ、大樹いなくなってるね」

「本当だ、まだ5時半なのに」

「僕たちももう帰る?悠人だって塾の宿題あるんだよね」

「あーそうだね。じゃあいったん帰るか~」

そうして帰ることになった。ふと悠人のほうを振り向いてみると、悠人の足取りは少し震えているように見えた。


翌日の休み時間、悠人と恒一と瑛太がいた。

「あ、それ重そうだね。手伝おっか?」

「いや、大丈夫」

「いや遠慮しなくて大丈夫だって。ほら」

「え?ま、まあありがとう」

「全然大丈夫だって。これくらい当然でしょ?」

少し間が空いた。恒一は少し困ったような表情をしている。

「う、うん、そうだね」

この悠人と恒一の会話は、いつもとかどこか違うような気がした。

「じ、自分も手伝おうか?」

瑛太が近寄り、そう声をかける。

「2人で運べるから大丈夫だよ」

悠人がそう言って笑った。でもぎこちなかった。

「あ、わかった」

瑛太がそう言ってその場から離れ、

「無駄なお世話だったかな…」

と呟いていた。

戻ってきた二人は、そのまま話し始めた。

「なんか悠人協力的になったね」

「まあ、友達として当然でしょ?」

「悠人がそういうこと言うの初めてな気がするな」

「ん?そう?」

「少なくとも俺からはそう見える」

また間が空き、恒一は一瞬だけ視線を逸らした。

「ま、まあ、僕は元からそうだよ」

「本当か?今までと様子違うぞ」

「…大丈夫だって。そんなことより、恒一は僕らのこと大事に思ってる?」

「え?どうしたのいきなり」

悠人は答えず、恒一の顔をじっと見ていた。

「ま、まあ、大事だよ」

「信じてるからね?」

悠人が笑みを浮かべる。その笑みは不自然でもないのに、どこか怖かった。

恒一はもう何も言わなかった。ただ不安そうな表情をしていた。

そうしてチャイムが鳴り響いた

「あ、そろそろ授業だから教室に戻るね」

恒一は逃げるかのように走って教室に戻った。


放課後、僕は悠人に公園に呼び出された。

「大樹も呼んだのに来なかったな、やっぱ捨てられたのかな…」

悠人が心配気にそう言う。

「そうかもね、捨てられたのかな」

「晃は、僕らのこと捨てないでくれるよね?」

「まあ、多分ね」

「多分…か。僕はもう友達を失いたくないよ、いつもはすぐ返信くるのに恒一から全然Lineが帰ってこない。普通友達ならすぐに返すものだろう?恒一からも捨てられた、裏切られた…!」

「そんなことあったんだ…」

「頼むぞ、残ってるのは晃と瑛太だけなんだよ。僕のこと捨てるなよ」

「わ、わかった…」

急に肩が重くなったような気がした。同時に、悠人のことを不気味にも感じた。

なぜかわからないけど、なんだか不安だ。

「そうだ、瑛太にも確認しよう…」

悠人がそう言ってスマホを触りだした。

「瑛太にも捨てないでくれるか聞くの?」

「うん、そうだよ。だって不安で仕方なくて…」

公園の音だけが妙に大きく聞こえた。これ以上深堀りする気にもならなかった。気になるのにも関わらず。

そして約10分後、瑛太が来た。そして悠人が確認し始めた。

僕は、そっとその場を離れた。

帰ろうとした時、ふと後ろが気になった。

振り返ると、まだ二人は話していた。

気づけば僕は、公園の端からその様子を見ていた。


「…晃も、何も言わずに帰っちゃったな。また、僕は裏切られたのか」

悠人が低い声で言った。

「瑛太、君だけは俺の本当の友達だよ。君も裏切らないでくれるよね」

「うん。裏切ったりはしないよ。自分は、友達がいれば、それで十分だよ」

瑛太はそう言った。まるで、自分に言い聞かせているみたいだった。

「ありがとう…やっぱ瑛太だけは、本当に気が合うね。この数日の間で、みんな離れていった。なんかもう、誰を信じればいいのかわからなくなりそう…」

「そっか、大変だったんだね…」

僕はお互いに慰め合うことはいいことだと思ったけど、胸の奥がじわじわ重くなった。

僕が悠人を壊してしまった感覚が、胸に刺さった。

この2人、うまくやっていけそうだけど、大丈夫かな…

なんとなくそういう感覚があった。なぜかはわからなかった。

「…戻りたい…あの頃に…たくさん遊んだあの頃に…いや、きっと戻れる…戻れるはずだ…」

悠人はそう呟きながら、どこか遠くを見るように視線を落としていた。

「そ、そうだね、きっと戻れるよ」

「だよね…何が悪かったんだ?なんでみんな離れちゃったの?」

「わからないよ。でも、友達がいればそれで十分だよ」

瑛太が笑顔を作るが、どこか引きつっていた。

「そうだよね、裏切るようなやつと無理に友達にならなくてもいいか…うん、きっとそうだ…」

悠人が手を握り締める。でも、その手は震えていた。

「やっぱ僕は、瑛太がいればもうそれでいいや。離れないでよね」

「うん。ねぇ、ちょ、ちょっと重くない?」

瑛太がハッとして少し焦ったような表情を浮かべた。

「…は?」

空気が固まったような感じがした。

「別にいいだろ?僕は大事にしてただけなのに。離れないって言ったじゃん。裏切らないって言ったじゃん。なぁ、何か言えよ」

「あ、ごめん…じょ、冗談だよ。一緒にいよ?す、捨てないから…悠人のこと大事に思ってるから…」

瑛太は笑顔さえも作っておらず、何度も視線を泳がせていた。

「よかった、冗談で。でもそういう冗談はやめてほしいかも」

「ご、ごめん…」

僕は止めた方がいい気がした。でも、入るのが怖かった。入れるわけがなかった。

僕は、悠人をここまで追い詰めてしまったのかも…

その場にいるだけで苦しかった。もう僕はここにいられず、その場から離れた。

ふと振り向いてみると、二人は笑っていた。でも、その笑顔はどこか不自然に見えた気がした。

まるで、お互いを安心させるためだけに笑っているみたいだった。

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