第九十九話 研修の続きと王都への帰還
翌日以降は、ハーデス様やワーナーさんたちから教えを請うことが続いた。
平時と戦時下での物資輸送の違いや、季節ごとに行う政策の違いなども習った。
干ばつ対策にため池などを用意したりと、やはりどんな時も食料維持が課題だと言っていた。
治療研究も盛んで、ポーションだけでなく生薬なども改良を続けているという。
こういった新しいことにチャレンジする精神が、辺境伯領には息づいているという。
とても素晴らしいことで、王都でも積極的に活用すべきだと思った。
「帝国軍は、またレーベンス大将が出てきた。今回の一部幹部の暴走は、帝国内の開戦派からも非難されているらしい」
帝国軍との衝突から一週間後、ヘルナンデス様が国境の前線基地からガルフォース辺境伯家の屋敷に戻った。
たまたまだけどヘルナンデス様がいたのもあり、帝国軍もそれなりの人物を出さないといけなかったという。
再び停戦状態となり、帝国軍兵の捕虜も全て返還された。
僕の功績が大きいらしく、後で褒賞が入るという。
贅沢することもないし、当面は貯金かなと考えていた。
「ケン君の父親を始めとする五人の当主は、軍の施設にある牢屋に入れられている。軍事法廷を行った後、貴族当主として国の裁判も受けることになる。軍人として、そして貴族当主として、重い罰を受けることになるだろう」
ヘルナンデス様の言葉に、僕はコクリと頷いた。
元々僕にした仕打ちの件もあり、これで実家の評判は最悪最低レベルとなった。
実家が存続していること自体が、ある意味奇跡とも言えるだろう。
兄は嫡男として国に認められていないため、現時点ではギャイン騎士爵を継ぐことすらできない。
ギャイン騎士爵家をどうこうすることは僕にはできないが、国が何らかの対応をするのは間違いないだろう。
その後更に一週間の研修を行い、ガルフォース辺境伯領での研修として予定通りの日程を消化したのだった。
「あっ、王都の町並みが見えてきました!」
「「「「「やっと帰ってきた……」」」」」
ガルフォース辺境伯領を出発した魔導船は、途中軍の施設に泊まりながら王都を目指して飛んでいた。
僕は前回の戦争を経験しているから全然大丈夫だったが、他の上級官僚はやはり精神的に疲れていたみたいだ。
そして、僕たちを乗せた魔導船は無事に王都郊外にある軍事基地に着陸し、出迎えの馬車に乗って王城に向かった。
「諸君らの働きは大義であった。今回は、かなり貴重な経験をしたといえよう。物事が順調に進むことは、思いの外少ない。予想外のことが起き時にどう対処するか、今後も学んでいくように」
「「「「「はっ」」」」」
王城に着くと、僕たちは玉座の間に案内された。
陛下を始めとする王族や閣僚の面々からも、お褒めの言葉を頂いた。
陛下との面会は元々予定になく、王国軍と帝国軍の衝突を受けて急遽予定されたものだった。
これで上級官僚としての研修は終了し、陛下との面会終了後に各自解散となる。
僕は応接室に呼ばれたので、そのまま向かうことにした。
「ケンが魔法で帝国軍を圧倒したのが、今回の一番の功績だ。無駄な殺生もせずに対応したのも良く、これで大虐殺など起きたら帝国軍との全面戦争になるところだった」
陛下は、用意されたお菓子をパクパク食べながら上機嫌で答えていた。
僕は、作戦を立案したヘルナンデス様の指示に従っただけなんだよね。
それに、やはり人を殺すことにはかなりの抵抗があった。
「ケンは、ヘルナンデスの指示を忠実に実行できる実力があるということだ。常日頃の訓練を怠らない結果と言えよう。これを見るだけでも、十分宮廷魔導師としての実力がある」
何故、僕が宮廷魔導師なのかと指摘する貴族主義勢力のものがいるという。
前回の戦争時の治療と合わせて、説明をする良い例になるらしい。
僕としても、変に絡んでくる貴族が減るのはとても助かった。
「何にせよ、ケンは必要な治療以外は少し休むように。まだ、年が明けて二月になったばかりだ」
「ありがとうございます。もう、一年分のイベントが起きた気がします」
「ケンの気持ちは分からないでもない。だが、今年はまだ始まったばかりだ。アーサーとルーカスのところの出産も控えているぞ」
王家はダブルでおめでたいので、陛下のみならず王太后様や王妃様も赤ちゃんの誕生を待ち遠しく思っているはずだ。
その後も、少し話をして僕への話は終わった。
迎えの馬車に乗って、ようやく一息つけるかと思った。
「ケン、また帝国軍と衝突があったのよね? 怪我はしていない?」
「ケン君、大丈夫なの?」
「わあっ!?」
屋敷に入ると、玄関ホールにシンシアお姉様とクリスちゃんが心配そうに待ち構えていたのだ。
僕の体をペタペタと触りながら色々と尋ねてきたが、どうやら二人にもある程度情報が伝わっていたみたいだ。
「皆さま、応接室に移動しては如何でしょうか。ケン様もお疲れですし、少し休憩された方がよいかと」
ここで、ハンナおばさんのナイスアシストにより僕たちは応接室に移動した。
そして、二人にお土産を渡しつつ話せる範囲でだいたい何があったかを説明したのだった。
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