第九十七話 決着と父親の醜態
またまた土煙が晴れると、多くの帝国兵が体が痺れて地面に倒れていた。
複数のサンダーバレット攻撃により、元気な帝国兵は殆どいないみたいだ。
双眼鏡で確認をすると、この状況は聞いていないよと辛うじて動ける帝国兵はかなり困惑した表情だった。
「隊長の指示に従い、攻撃兵は突撃開始!」
「「「「「はっ」」」」」
この時を待っていたかのように、ジーグルト様が兵に指示を出した。
実は突撃してきた帝国兵の中に魔法兵がいたため、魔法障壁で僕の魔法が防がれないように二段攻撃したのだ。
そして、今度は別の報告がされた。
「報告します。奇襲部隊と思われる帝国兵は、全員身柄を拘束しました。ケン様の連れているスライムが魔法を乱射して帝国兵を昏倒させ、結果として王国兵はほぼ無傷です」
「武装解除した捕虜の扱いは、丁重に行うように。王国軍は帝国軍と違うのだ」
「「「「「はっ」」」」」
奇襲部隊を撃退したチビスライムの中にシロちゃんとレモンちゃんがいるので、帝国兵を拘束すれば直ぐに治療も可能だ。
僕はというと、この後連れてこられるであろう負傷した帝国兵の数に慄いていた。
そして、やはりというか数多くの負傷した帝国兵が運ばれてきた。
チビスライムたちはそろそろ戻ってくるが、スラちゃんは前衛の防衛に残るはずだ。
そう思いながら、僕は拘束されている帝国兵を治療していった。
「うぐっ……」
「おい、大丈夫か?」
一時間程すると、前線から負傷した王国兵も運ばれてきた。
切られた傷跡があることから、帝国兵に剣で切られたのだろう。
十人程が血まみれで担架に乗せられてきたので、直ぐに治療をしようとした時だった。
「うげっ、げふっ!」
「うっぷ、ぐふっ……」
「はわわ……あわわ……」
突然、僕の後方から様々な声が聞こえてきたのです。
思わず振り向くと、武装した数人の太った兵が地面に手をついて吐いているのだ。
中には、腰が抜けたような地面に尻もちを着いたものがいた。
というか、あの中の一人って僕の父親じゃないかな。
「お前らが手柄を取りたいと言っていた戦場が、まさに目の前で行われている。ここで失態を犯しているのではなく、いま直ぐ戦場に向かうのだ!」
「「「「「へはっ……」」」」」
ジーグルド様の叱咤激励にも、太った五人の武装兵には全く通じなかった。
足ががくがくして力が入らないのか、その場から全く動けなかったのだ。
うん、気にしないでおこう。
僕は、目の前の複数の怪我人に意識を集中した。
そのうち僕の後方から声が聞こえなくなったので、太った武装兵は恐らく別の兵に連れていかれたのだろう。
「あばばばば……」
「はあ、親分自ら前線に出るとはご苦労なこった」
そして、一際豪華な服を着た兵が体を痺れさせながら連行されてきた。
ジーグルド様曰く、帝国の陣地の責任者だという。
ちょうど王国の前線基地に突入しようとする兵を指揮しようとして、僕のサンダーバレットの直撃を受けたようだ。
ジーグルド様はポーションでもかけておけば大丈夫という判断をして、そのまま厳重な警備が敷かれている麓の軍事基地に護送したのだった。
他の捕まえた帝国兵も、どんどん麓の軍事基地に送られた。
ちなみに帝国の陣地はほぼ無効化しているのもあり、これ以上の無理な戦闘はしていない。
ぴょんぴょん、ぴょんぴょん。
「みんな、お疲れ様ね」
負傷兵の治療が一段落したところで、スラちゃんたちが僕たちのところにやってきた。
チビスライムたちは周囲の警戒もしてくれて、特に潜んでいる帝国兵もいないという。
「ふう、何とか落ち着きました。でも、帝国は何で急に奇襲なんてしたのでしょうか?」
「流石にそれは分からないが、王都経由で帝国にも対応を通告した。そこで、詳しい話を聞けるだろう。捕まえた帝国軍の幹部からも話を聞かないとな」
ヘルナンデス様も、流石に奇襲攻撃に心当たりはなかった。
うーん、何というか分からないことだらけだ。
「しかし、上級官僚たちは基地内でよく働いてくれた。間違いなく、戦時中の成果と言えよう」
ヘルナンデス様、上級官僚たちの成果に満足な表情をしていた。
連絡役や状況の整理を進め、戦況が落ち着くと帝国兵の誰を麓の軍事基地に護送したかという。
そして、司令官室に移動して休憩を取りつつ今後の話をすることになった。
「帝国軍は、今回の国境での軍事作戦を容認しなかったらしい。なのに、幹部の独断で攻撃した。これが、幹部を尋問した一次調査結果になる」
「間違いなく、出世するための手柄が欲しくて無茶なことをやったのだろう。攻撃の規模を精査したが、ケン君がいなくても防げるレベルだ。負傷兵は多く出たがな」
ジーグルト様とヘルナンデス様は、お互いに話しながら戦況の分析を行った。
つまり、今回の衝突は前回みたく計画されたものではないと判明した。
「この程度の衝突なら、今までも何回も起きている。少し規模は大きいがな。帝国側の態度次第だが、人質交換と合わせて、それなりの補償を求めることとする」
ヘルナンデス様の方針に、僕たちも頷いた。
何にせよ、軍事衝突が大規模な戦いに発展しないことを祈るばかりだった。
そして、話は父親たちの件となった。
「ギャイン騎士爵たちは、前線基地に着いた当初手柄を立てるために帝国軍を攻撃しろと言ったのだ。あまりにも馬鹿馬鹿しい発言に、他の兵と衝突をしたのだよ。だが、実際の戦闘を目の前にした瞬間、ケン君も見たあの失態を犯した。妄想と現実は全く違うということだ」
「その、父親が申し訳ありません」
「ケン君は本当に律儀だ。まあ、ケン君は父親と全く違うとこの目で見れただけでも大きな収穫だ」
ジーグルト様は、呆れながら状況を説明してくれた。
戦場はそんな簡単なものではなく、まさに生きるか死ぬかの世界だ。
血だらけの兵を見るなり、話が違うと物凄く怖くなったのだろう。
そして、父親たちは今夜は国境の前線基地に泊まることになる。
というのも、足腰が立たなくなり動けないからだ。
僕たちも今夜は前線基地に泊まるが、父親たちとは離れたところに泊まることになる。
戦闘中ってのもあり、夜も奇襲を警戒しながらとなる。
とはいえ、帝国軍の兵の多くを捕らえているため、奇襲するだけの勢力はないという。
こうして、突然の帝国軍の襲撃は何とか撃退することができたのだった。
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