第九十四話 辺境伯家のちびっ子と歓迎会
用意された部屋で少し休み、夕方になると僕たちは客室を出た。
因みに、僕とヘルナンデス様は貴族用の客室でとても良い部屋だった。
部屋の中にお風呂があったり使用人用の部屋があったりと、とにかく豪華だ。
個人的には、他の人が泊まっている狭い部屋で充分だった。
やっぱり、広い部屋って落ち着かないんだよね。
トトトト、ぽすっ。
「うにゅ?」
すると、僕の足に小さな男の子が抱きついてきたのだ。
まだ歩き始めたくらいのとても小さな子どもで、不思議そうに僕を見上げていた。
「あにゅ」
すると、男の子は両手を挙げて僕に何かを訴えてきた。
これは、もしかして抱っこしてということかな。
「にやー」
僕が男の子を抱っこすると、満足そうな表情をした。
ぴょんぴょん。
「キャッキャ!」
僕の肩でチビスライムたちが飛び跳ねると、男の子は手をフリフリしながら喜んだ。
さてさて、この子は誰かなと思ったらこの人が僕に話しかけてきた。
「ほほう、ランディはケンのことが気に入ったか」
「うにゅ?」
いつもは迫力満点のハーデス様が、ニンマリとした柔らかい表情で僕と男の子を見ていた。
間違いなく、この子はハーデス様の関係者だ。
「ケン、その子は私の孫のランディだ。最近歩き始め、屋敷の中を色々と動いているのだよ。しかも人見知りもしているのだが、ケン君は初対面なのに平気なようだ」
「あい」
おお、ハーデス様が優しい祖父の顔になっているよ。
それだけ、ランディちゃんが可愛くて仕方ないのだろう。
「ランディ、どこにいるの?」
すると、栗毛のショートヘアの女性がランディちゃんの名前を呼んでいた。
程なくして、僕たちのことに気がついたみたいだ。
「ま!」
「あら、ランディ。ここにいたのね」
女性は、僕が抱っこしているランディちゃんを見るなりかなりホッとした。
そして、ランディちゃんは僕から離れて女性の方によちよちと歩いていった。
「ランディ、お兄さんに遊んでもらったのね」
「あい!」
ランディちゃんは、抱っこしてくれた女性に笑顔で返事をしていた。
そして、女性はランディちゃんを抱っこしたまま僕に頭を下げた。
「【蒼の治癒師】様、息子の相手をして頂きありがとうございます。ガルフォース辺境伯家のエリと申します」
どうやら、エリさんは僕の髪の毛の色で二つ名を直ぐに理解したみたいだ。
そんなエリさんの様子に、ハーデス様も満足そうに頷いた。
「以前の戦争の際、息子夫婦はたまたま王都にいたのだよ。その後も、レオとは顔を合わせるタイミングがなかったのだ。今日は元々決まっている上級官僚の研修で、更に子育て中だ」
王都から領地が離れているため、定期的に息子が王都に行っているという。
前回の戦争は本当に突発的だったし、会えなかったのは仕方ない。
「お義父様、会場の準備が整いましたのでこのままケン君をお連れしますわ」
「うむ、頼むぞ」
ということで、僕はエリさんとランディちゃんと一緒に会場に向かった。
といっても、前に来た事のある部屋なので僕も直ぐに分かった。
僕以外の上級官僚の十人分が増えているが、そこまで大人数ではない。
王太子様であるアーサー様の結婚式とかは、物凄い数の来賓が来ていた。
ぴょんぴょん、ぴょんぴょん。
「おー!」
ランディちゃんの目の前でスラちゃんたちがぴょんぴょんと跳ねており、ランディちゃんは手を叩きながら喜んでいた。
スラちゃんたちは、子どもを相手にするのがとても上手ですね。
「おっ、ランディはここにいたのか」
「ぱ!」
僕達は、声がした方を振り向いた。
すると、ハーデス様と同じ茶髪なのだが短く切りそろえた、爽やかな好青年が立っていた。
何となく予想できているが、ここは先に挨拶をしよう。
「はじめまして。ケン・アスターです。そして、スライムのスラちゃんたちです」
「有名な【蒼の治癒師】のケン君だね。私はワーグナー、ガルフォース辺境伯家の跡取りだ。そして、ランディの父親でもある」
僕は、ワーグナーさんとガッチリと握手をした。
そして、今度はワーグナーさんがランディちゃんを抱っこした。
ランディちゃんも、ワーグナーさんに抱っこされてとても嬉しそうだ。
「ケン君には、王国を、そして辺境伯領を守ってもらい感謝しかない。ああ、国境であった大体の話は聞いているよ」
ということは、練習で魔力弾を放ったら山や帝国の陣地前にクレーターが出来たのも知っているんだ。
僕は、なんとも言えない戸惑った表情になってしまった。
このタイミングで、上級官僚たちや他の貴族家もやってきた。
戦争が終わった際の夜会で会った人ばかりだから、僕は思わずホッとした。
上級官僚たちは、数多くの貴族にちょっとビビっていた。
とはいえ、歓迎会なので何かをするということはなかった。
「皆のもの、待たせてすまない」
そして、主催のハーデス様とヘルナンデス様が姿を現し歓迎会はスタートした。
上級官僚も、意を決して多くの人に話しかけていた。
そんな上級官僚たちに、ハーデス様もヘルナンデス様も満足そうに頷いていた。
僕はというと、多くの人に声をかけられててんやわんやだった。
その間、スラちゃんたちはランディちゃんの相手をしていたのだった。
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