第八十七話 ルーカス様とシーリアさんの結婚式の日
ルーカス様とシーリアさんの結婚式の日になり、僕は早朝から身支度を整えて大教会に向かった。
ルーカス様は、来年の新年の謁見で貴族家を立てて新しい屋敷を下賜される予定だという。
今日は、大教会で結婚式を挙げてパレード無しの王城で披露宴の予定だ。
本当はルーカス様は王子様だから結婚式後にパレードをしてもよかったんだけど、シーリアさんが恥ずかしいと断ったらしい。
因みに、アーサー様は王太子殿下なのでパレードは必須だという。
「ケン君なら、パレードしても良いんじゃないかな?」
「国を救った【蒼の治癒師】だし、多分というか間違いなく盛り上がるわよ」
僕が大教会に早く来たのもあり、王太后様と王妃様に捕まって雑談をしていた。
えっと、例え僕は結婚してもパレードはしませんよ。
メアリーさんも、いいことを聞いたという反応をしないで下さい。
そして、今日はスラちゃんたちにあることを頼まれていて、シーリアさんの控室にいた。
僕も話を聞いた時にとても良いアイディアだと思ったし、メアリーさんも自分の結婚式で採用したかったと言っていた。
「今日は、貴族ではない軍人も多いんですよね。さっき、治療施設の調理室に勤めているおばちゃんたちに会いました」
「二人とも軍人だから、軍の知り合いを是非とも呼びたいと言っていたのよ」
王妃様も、招待状を送った軍人なら問題ないとしていた。
平民なのに王城で行われる披露宴に参加するので、調理室のおばちゃんたちはとても楽しみにしていた。
因みに、シーリアさんの知り合いということでクリスちゃんとシンシアお姉様も結婚式に参列する予定だ。
「それに、これだけの軍人がいると教会としてもとても助かる」
サイオン枢機卿様も、結婚式の準備を終えて話に参加してきた。
アーサー様の時みたいに厳戒態勢でもないのに、軍人が多いから必然的にピリッとしていた。
ところが、何も問題が起きないと思っていたのに、完全に予想外のところで問題が起きてしまったのだ。
「こらー! 俺たちも結婚式に参加させろ!」
「平民が参加しているのに、何故俺たちが結婚式に参加できないんだ!」
「「「「「中に入れさせるな!」」」」」
なんと、大教会の入口で横に大きい貴族と軍の兵が押し問答をしていたのだ。
しかも、押しかけてきた四人の貴族当主は、新年の夜会で僕に無理矢理縁を結ぼうとした貴族じゃないですか。
確かケイマス直轄領復旧の謁見で陛下に意見をして、一人はその場で捕まったはずだ。
謁見の際に僕に敵意のある視線を向けてきて、王家からも要注意人物扱いになっていた。
「はあ、あの馬鹿どもね。官僚への贈収賄の疑いで、結果が出るまで屋敷で謹慎処分になっていたはずよ」
王妃様が物凄く呆れた表情を見せたが、流石に謹慎処分を豪快に破るのはいけない。
僕が行くと余計にトラブルになるということで、王妃様が護衛を引き連れて大教会の入口に向かった。
僕は、入口から見えない位置でこっそり成り行きを見守った。
「何故、貴方たちがいるのかしら。確か、謹慎処分を受けていたはずよね?」
「「「「げー!」」」」
四人の貴族は、王妃様の姿を見るなり目玉が飛び出そうな程驚いていた。
というか、王子であるルーカス様の結婚式なのだから、母親の王妃様がいるのは当たり前だと思うけど。
「四人とも、謹慎処分を破った罪で牢屋に入れて頂戴。屋敷への強制捜査も、謹慎を破った事で自動的に付くわね。ふふふ、徹底的にやらないといけないわ」
「「「「あわわわ……」」」」
どうして、貴族主義勢力のものは後先考えずに行動するのだろうか。
強引に押し通せば、どうにかなるとでも思ったのかな。
当然ながら、四人の貴族は兵に拘束されて連行された。
何だか、一種の喜劇を観ている気分だ。
「王妃様、その、お疲れ様です……」
「本当に疲れたわ。何で、晴れの結婚式なのにあんな馬鹿どもの相手をしないといけないのかしら……」
王妃様も、思わずげんなりする対応なのは間違いない。
実際の対応自体は一分もかかっていないが、精神的な疲れは計り知れないだろう。
「ふう。母上、着付けが終わり……何かあったのですか?」
このタイミングで、王家の服装に着替えを終えたルーカス様が姿を現した。
結婚式前なのに疲れた表情をしている僕たちを見て、何があったのというキョトンとした表情を見せた。
しかし、僕が事情を説明すると、ルーカス様も思わず溜息をついてしまったのです。
「他の貴族家の結婚式ならいざ知らず、王家の結婚式に謹慎中の貴族当主が参加できるはずがない。兵には徹底的に調査することを指示した」
今度は、陛下とアーサー様が疲れた表情で僕たちの前に現れたのです。
話を聞くと、どうやらちょうど大教会に到着したタイミングであのゴタゴタに遭遇したらしく、連行されていく四人の貴族当主に対し改めて己の罪を宣言したという。
確かに、陛下にとっても疲れる対応なはずだ。
「何とかルーカスとの縁を繋いで勢力拡大を狙ったのだと思うが、どう考えても逆効果だ。そんなことすら分からないでいるうちは、勢力拡大など到底無理だ」
陛下の言うことは、僕も良く分かった。
僕の父と兄も、軍で真面目に活動していれば少しは違ったはずだ。
己の欲だけで動けば、大失敗するのは目に見えていた。
あと、今回は周囲を巻き込むような大失敗じゃなくて良かったかもしれない。
こうして、結婚式前の時間は過ぎていったのだった。
シンシアお姉様やクリスちゃんも、僕たちが疲れていたのを見て何があったのだろうかと不思議そうにしていたのだった。
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