第八十五話 ベテラン宮廷魔導師
「それで、宮廷魔導師の服を着ているのか。ははは、よく似合っているぞ」
「ええ、ケン君らしい宮廷魔導師の服ね」
謁見から一ヶ月後、僕は真新しい宮廷魔導師の服を着て軍の施設にある魔法訓練場にきていた。
僕の髪色である蒼色に、回復魔法をイメージした白色と黄色をメインカラーとしたマントと軍服っぽい服を頂いた。
王太后様や王妃様も、よく似合っていると褒めてくれた。
シンシアお姉様とクリスちゃんも、カッコいいと手放しで褒めていた。
でも、僕はまだ成長期で体が大きくなるし、後々服は着れなくなりそうだ。
因みに、マントは大きくなっても大丈夫なように長さが調節可能となっていた。
すると、オーフレア様が僕が予想しなかったことを言ってきたのだ。
「ケン、勘違いしているみたいだが、宮廷魔導師の証はマントだぞ。服装はある程度自由が利くぞ」
「多分、王族の方々は純粋にケン君に服を贈りたかったのではないかしら?」
そ、そういえば、ローリー様はちょっと際どい魔法使いのドレスだったし、オーフレア様に至っては初めて会った時は上半身裸だった。
ま、まあ、ありがたくもらって置くことにしよう。
そして、今日は別の宮廷魔導師の人と会うことになっていた。
「他の宮廷魔導師は、いつも忙しいというか研究者タイプなのよ。なので、私とオーフレアが動くことが多いのよ」
「魔法研究は、俺はやりたくねーな。やっぱり、魔法は使ってナンボだ」
ローリー様とオーフレア様曰く、研究者を思い起こせばいいらしい。
もしかしたら、マントよりも白衣の方が似合う人なのかもしれない。
「しかし、モーニングのじーさんはまだ来ないのか。年だから、足腰が駄目になって……」
オーフレア様が周囲を見回しながら悪態をついた、その瞬間だった。
ブオン、ボカン!
「あたー!」
「こりゃ! オーフレアよ、勝手な事を言うのではない!」
「じーさんこそ、なんつーもので叩いてくるんだよ!」
突然、オーフレア様の背後から背の小さいおじいさんが、如何にも魔法使いらしい木の杖でオーフレア様の後頭部を叩いたのだ。
前世の漫画の博士を思い出すような、頭頂部はハゲていて側頭部に白髪がある、口髭を生やした背の低いとても元気なお爺さんだった。
オーフレア様は杖で叩かれた痛みでしゃがみ込んでいるが、今のうちに挨拶をしておこう。
「はじめまして、ケン・アスターです。宮廷魔導師に任命されたばかりですが、宜しくお願いします」
「おーおー、オーフレアと違って小さいのに礼儀正しいのう。わしゃ、モーニングじゃ。土魔法を主に使っておるぞ」
僕は、モーニング様とにこやかに握手をした。
すると、モーニング様は握手をしたまま急に真面目な表情をした。
「うむ、とても強い魔力を持っておる。ただ、制御は途上といえよう。常に精進するように」
おお、僕と握手をしただけで、モーニング様は僕の弱点を言い当てた。
流石、宮廷魔導師の先輩だ。
でも、スラちゃんたちとも握手をしてくれて、とても良い人だと思った。
因みに、モーニング様に頭を叩かれたオーフレア様に、シロちゃんが回復魔法をかけていた。
「凄い、宮廷魔導師が四人も揃っているわ」
「これは、とんでもないことね。宮廷魔導師が二人揃うだけでも凄いことなのに」
セレナさんとユリアさんが、僕たちのことを見てテンションが上がっていた。
他の魔法兵もテンションが上がっていたが、そのうちの一人は先日まで一緒に訓練していた僕なんだけど……
「いやいや、ケン君は初めて会った時から只者ではないと思ったわ」
「国境で見た魔法もそうだし、私たちに的確に訓練のやり方を教えたもんね」
セレナさんとユリアさんと初めて会って、一緒に訓練したのは僕も良い経験だった。
それに、僕は実力もまだまだだと思うけどなあ。
「いーなー、私もケン君みたいにカッコいいマントを羽織りたいなあ……」
因みに、クリスちゃんは僕が宮廷魔導師の服を着る度に羨ましいと言っていた。
勝手にマントを羽織ってはいけないらしく、クリスちゃんもそこは我慢していた。
色々とあったが、さっそく訓練を始めた。
「魔力制御は、針の穴に糸を通すように細かいところにも気を配りながら行うように」
「「「「「はい!」」」」」
オーフレア様からの厳しい言葉が、魔法兵にかけられた。
今日集まっているのはエリート魔法兵で、セレナさんとユリアさんも無事に仲間入りを果たした。
クリスちゃんも、スラちゃんたちと一緒に一生懸命魔力制御を行っていた。
クリスちゃんの実力も、普通の魔法兵よりも上になってきたという。
基礎訓練を終えた後は、それぞれの魔法訓練に入った。
カンカンカン!
「えい、やあ!」
「うむ、嬢ちゃんいいぞ。もっと打ってくるのじゃ」
クリスちゃんは、なんと木剣を手にしてモーニング様と打ち合っていたのだ。
二人とも身体能力強化魔法を使って高速で打ち合っており、モーニング様は年齢を感じさせない動きだった。
流石は、宮廷魔導師といえるだけの実力を持っていた。
シュイン、シュシュシュ。
「相手が、止まっていることは殆どないわ。常に、次の動きを予測して魔法を放ちましょう。バインドなどで、相手の動きを止めるのも有効です」
僕は、魔法兵が放つ魔法の的を作って少しずつ動かすようにした。
これはローリー様からの指示で、魔力弾を円を描くように動かしたりしていた。
僕の方も魔力制御の良い訓練になり、チビスライムたちも一緒に混ざっていた。
因みに、スラちゃんは何故かダガータイプの木剣を手にして、モーニング様と打ち合っていた。
オーフレア様も、身体能力強化魔法を使う魔法兵を相手にしていた。
こうして、今日の魔法訓練も無事に終了した。
「嬢ちゃんも中々頑張っておるのう。様々な相手と手合わせをして、経験を積むことが大事じゃ」
「はい!」
モーニング様は、孫を相手にするようにニコニコしながらクリスちゃんの頭を撫でていた。
実際にクリスちゃんはとても頑張っていたし、とてもいい笑顔だった。
「やっぱり、ケン君は凄いわ。以前よりも、魔力制御が格段に上がっているわ」
「私たちも、ケン君に負けないように頑張らないとね」
僕も、セレナさんとユリアさんたちと共ににこやかに話をしていた。
今日は、チビスライムたちもとても頑張っていた。
僕も、みんなに負けないように頑張ろうと思った、その時だった。
「うおらー! ケン、テメー!」
突然、隣の剣の訓練場から僕に向けて叫び声が聞こえてきたのだ。
読んでいただき、誠にありがとうございます
ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
作者のモチベーションも上がります!




