第八十三話 王都に帰還
兄が王都に護送された後、兄は派遣部隊にいなかったものとして作業は進んでいった。
兄は未だに新兵扱いなので、災害派遣の対象になるのは必然だという。
もちろん新兵は災害時の対応について学ぶし、兄は人よりも多く学んでいたはずだ。
とはいえ、まさか到着早々に大問題を起こすことになるとは思わなかった。
僕も、兄がやったことを忘れて目の前の災害復旧に全力投球した。
治療や街道の復旧だけでなく、炊き出しや住民からの相談などなんでもやった。
意外と喜ばれたのが、亡くなった人への凍結処理だった。
災害時は死体の腐敗による病気の蔓延も懸念されるが、今回は僕の凍結処理のおかげでその心配もなかった。
無事に合同の葬式を行うことができ、本当に感謝された。
こうして二週間が経って復興の道筋がついたところで、僕とゴードン様は先に王都に帰ることになった。
因みに、ルーカス様は兄が問題を起こした翌日に王都に戻っていた。
「何だか、凄く時間が経った気がします」
「間違いなく、ケンたちはよくやった。帰る際に、多くの人が見送りに来たのが何よりの証拠だ」
小型魔導船でケイマス直轄領を出発し、段々と王都の町並みが見えてきた。
ゴードン様とケイマス直轄領での救出活動を振り返ったが、実は小型魔導船が出発する際に町の人が駆けつけてくれたのだ。
多くの人に助けてもらってありがとうと感謝を言われ、スラちゃんたちと頑張って本当に良かったと実感した。
復興までの道のりはまだ長いが、きっと上手くいくだろうと思っていた。
そして、小型魔導船は王都にある軍の施設に着陸した。
「ゴードン司令官、アスター男爵、任務お疲れ様でした」
「うむ、出迎えご苦労。これから王城に報告に行く」
「はっ。馬車を用意しております」
ゴードン様は、通信用魔導具で手はずを整えていたらしい。
用意されていた馬車に乗って、王城に到着の報告に向かった。
「ご案内いたします」
王城でも僕たちの到着を待っていたようで、直ぐに係の人が僕たちを出迎えてくれた。
僕とゴードン様が到着の挨拶の対象になるため、謁見の間ではなく小規模な玉座の間で報告することになった。
玉座の間に案内され、僕とゴードン様は膝をついて待っていた。
スラちゃんたちも、僕の側でちょこんと座っていた。
「静粛に、陛下が入場されます」
係の人のアナウンスの直後に、陛下を始めとする王族の方々と閣僚などの有力貴族が入場してきた。
そして、陛下が席に着き謁見が始まった。
「ゴードン司令官、アスター男爵、面を上げよ」
陛下の声で、僕とゴードン様は顔を上げた。
今回は、王太后様、王妃様、メアリーさんも姿を見せていて、まさに王族勢揃いだった。
「恐れながら、陛下に到着の報告をいたします。ケイマス直轄領で発生した震災対応について、アスター男爵との初期対応を完了し帰還いたしました」
「うむ、大義であった。被災した住民からも、よくやったと感謝の言葉があったと聞いている」
「恐縮にございます」
陛下への報告は、全てゴードン様がしてくれた。
そして、話は僕のことになった。
「ケンは、かなり無理をして治療にあたったと聞く。しかし、結果的に国が真剣に災害対応をしているという姿を被災したものに示すことになった」
「お褒め頂き、ありがとうございます。その、兄が部隊到着時に問題を起こし大変申し訳ありません」
「既に他家になっているとはいえ、血の繋がりというのは切れないものだ。軍事行動中の問題のため、処分は軍に一任する」
僕は、兄の件で陛下に謝らなければならないと思っていた。
住民への不快な対応まではいかなかったにせよ、ケイマス直轄領に来るまでも問題を起こしたと聞いていた。
正直兄が処分されても何も思わないが、迷惑をかけた人には謝罪しないと思っていた。
これで謁見は終わりとなり、僕たちは応接室に移動して改めて話を聞くことになった。
「ケン君が無茶をして倒れたと聞いた時には、思わず私も現地に行こうとしたわ。優しいケン君の事だから、一人でも多くの人を救おうと集中しすぎたのね」
王太后様と王妃様、それにメアリーさんは、改めて僕の顔を見てホッとしていた。
王太后様だけでなく、シーリアさんもケイマス直轄領に行こうとしたらしい。
やり過ぎちゃったと、思わずシュンとしてしまった。
「でも、ケン君の頑張りで多くの人を救うことができたのは間違いないわ。亡くなったものへの対応もとても良かったと聞いているし、住民に感謝されるのもよく分かるわ」
王妃様が僕をフォローしてくれ、思わずホッとした。
王都に戻る僕たちを見送りに来た人たちが、何よりの証拠だ。
ここで、メアリーさんがちょっと不安になることを言ってきたのだ。
「ケン君が倒れたと聞いて、シンシアさんや仲の良いクリスちゃんが大慌てだったわ。この後ケン君の屋敷に行くと言っていたから、顔を見せて安心させてあげてね」
何となくどんな状況になっているのか、想像できちゃうのが怖いところだ。
ハンナおばさんをはじめとする、屋敷の使用人にもキチンと顔を見せてあげないと。
そして、陛下がこの後の予定を教えてくれた。
「一週間後に、改めて貴族を集めて謁見を開く。ケンの屋敷にも通知を送った。それまで、しっかりと体を休めるように」
僕が無茶をして三日連続で倒れたりフラフラになったのもあり、ゆっくり静養するようにと半ば命令に近い形で出された。
貴族家から出ている治療も急ぎではないため、謁見後に再開するようにと言われた。
そして、色々な人に顔を見せて安心させろと言われ、僕たちは屋敷に戻ることになった。
なお、ゴードン様も王城から軍の施設へと向かったのだった。
ドタドタドタ。
「ケン、大丈夫だったの? 倒れたと聞いて、本当に心配したのよ」
「ケン君、大丈夫? 大丈夫なの?」
屋敷の玄関に着くと、待っていたシンシアお姉様とクリスちゃんが物凄い勢いで馬車から降りた僕のところにやってきた。
二人はペタペタと心配そうに僕の体を触っていて、そんな僕たちの様子をフリージアお祖母様とハンナおばさんが仕方ないねといった表情で見ていた。
「えっと、ただいま帰りました」
「「お帰りなさい」」
改めて帰宅の挨拶をすると、シンシアお姉様とクリスちゃんはニコリと返事をしてくれた。
お帰りって言ってくれるのって、とっても嬉しいね。
「さあ、ケン君は帰ってきたばかりなのだから応接室で少しゆっくりしましょうね」
そして、フリージアお祖母様が声をかけてくれ、ようやく心配している二人から解放された。
でも、王都に帰ってきたという賑やかな感じがするね。
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