第八話 王太后様への治療
こうして王妃様と少し歓談し、僕とスラちゃんもかなり気持ちが落ち着いた。
すると、王妃様が別の話をしてきた。
「ケン君、お義母様の所にも行かないと行けないわね。重傷だったヘルナンデス様を随分と気にかけていたし、ケン君のお母様とも親交があったのよ」
あの、王妃様のお義母様って陛下の実のお母様ってことじゃないかな。
僕の母親の交友関係って、想像以上に広い気がしてきた。
既に使用人が王太后様のところに連絡したそうで、僕は再び王妃様と共に席を立った。
衣装部屋から王家のプライベートエリアに入り、警備も一段と厳しくなった。
そしてある部屋の前に着くと、王妃様がドアをノックした。
コンコン。
「お義母様、リリアーナです」
「入って頂戴」
部屋の中から声が聞こえ、王妃様がドアを開けた。
王妃様に続いて部屋の中に入ると、ベッドで白髪交じりの初老の女性が体を起こした。
ベッドの側に二つの椅子が置かれているが、最初に挨拶をしないといけない。
「王太后様、ギャイン騎士爵家のケンです。このスライムは、スラちゃんです」
「まあ」
僕がペコリと頭を下げて挨拶をすると、王太后様はとても嬉しそうな反応をした。
そして、王妃様が色々と説明してくれた。
「お義母様、ケン君がヘルナンデス様を治療してくれました。ヘルナンデス様の歩いている姿を見た瞬間、私はとても信じられない思いでおりましたわ。流石は、イリスさんの息子だと思いました」
「私も、イリスさんのことをよく知っているわ。民にもとても優しい方だったわ。そして、ケン君が部屋に入ってきた時に、まるでイリスさんの生き写しかと思った程だったのよ」
王妃様と王太后様は、母親の話で盛り上がっていた。
何だか、僕までこそばゆい感じだ。
でも、僕が気になったのは王太后様の容態だ。
時折胸を押さえて、少し苦しそうだ。
僕の腕の中にいるスラちゃんにも、念の為に確認した。
「王太后様、僕とスラちゃんで治療します!」
「えっ、ても、ケン君はヘルナンデスを治療したばかり……」
王太后様は僕のことを気にしてくれたが、さっき甘いお菓子などを食べて随分と体力も魔力も回復した。
それに、これだけ母親の事を良く言ってくれるのだから、息子である僕も何とかしないといけない。
シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!
「な、何という回復魔法なのでしょうか……」
今回も、僕とスラちゃんは回復魔法と聖魔法の合わせ技で治療を始めた。
部屋を眩しく照らす魔法の光を見るなり、王妃様はかなりビックリした。
でも、手首再生と両足の骨折の修復が必要だったヘルナンデス様と比較すると、それほど魔力は必要としなかった。
「ふう、何とか治療できました。胸の悪いものは、すっかり良くなったと思いま……」
ガバッ。
「嗚呼、私はあのイリスさんの息子がこうして治療してくれたことを神に感謝します」
僕の説明途中で、王太后様は涙ながらに僕のことを抱き締めてきたのだ。
突然のことで僕はとてもビックリしてしまったが、それだけ感激してくれて僕も嬉しかった。
因みに、スラちゃんはいつの間にか王妃様の腕の中に避難していた。
その王妃様も、ハンカチで目尻に浮かんだ涙を抑えていた。
こうして王太后様は暫く僕を抱き締めた後、改めて話をするために応接セットに移った。
ここでも、僕たちに甘いお菓子を出してくれた。
糖分が、甘い物が体に染み渡るよ……
「ケン君は、本当にイリスさんの命を引き継いでいるのだと実感したわ。イリスさんは、結婚するかどうかかなり悩んでいたのよ」
王太后様は結婚する前の母親のことを知っており、家族のためにと結婚を決めたという。
結果として、母親は病弱というのもあって早くに亡くなってしまった。
王太后様も王妃様も、そのことをかなり惜しんでいた。
「もしイリスさんが生きていれば、ケン君は酷い仕打ちを受けることはなかったわ。それだけの人望があったのよ。残念ながら、ギャイン騎士爵と嫡男はイリスさんのことをその美貌だけで中身まで理解しようとしなかったわ。貴族主義、嫡男主義、当主絶対主義。昔はそれでも良かったのかもしれないけど、今は違うわ」
王太后様は、父親と兄の考え方は根本的に違うと断じた。
僕も、父親と兄の考え方は理解できなかったし、何よりも周りにそう言わせないだけの実力もなかった。
だからこそ、父親と兄が行った僕への仕打ちが大きな波紋となっているのでしょう。
「こんな状況になって言うのもあれだけど、ケン君とスラちゃんがギャイン騎士爵家から離れて良かったわ。暫くはルーカスの配下になるけど、あの子はとても優しい子よ。例え戦地に行くとしても、ケン君に色々と配慮をするはずよ。もちろん、ヘルナンデスもね」
王太后様は、僕がルーカス様とヘルナンデス様と共に戦地に行くのを知っていた。
それでも、多分どうにかなると思っていたのだ。
「正直に言うと、さっきまでこの国はどうなるのだろうかと心配でとても不安だったわ。でも、ケン君が現れて今日一日だけでも凄いことをしたのよ。私は、帝国との戦争はどうにかなると思っているのよ」
王太后様曰く、王国は攻撃系の魔法使いが多くて回復魔法を使う治癒師は数少ないらしい。
そのため、治療というと生薬やポーション頼みだという。
もちろん、帝国との戦争が始まってポーション増産が指示された。
でも、原材料の薬草に限りがあるし、戦争が長期間すると不利になると言われていた。
僕が現地で負傷兵をたくさん治療するだけで、かなり状況が違ってくるという。
「今は軍での治療が優先だけど、戦争が終わって王都から戻ってきたら大教会にも連れて行ってあげたいわ。イリスさんを知る人が沢山いるわよ」
「そうですわね、是非ともケン君を大教会に連れていきたいですわ。きっと、ケン君を大歓迎してくれますわよ」
王太后様と王妃様は、戦争が終わってからの話で盛り上がっていた。
でも、暗い雰囲気になるよりも全然良かった。
その後も、僕の母親を話題の中心にしてにこやかに談笑した。
全く知らなかった母の話題に触れて、僕もスラちゃんも思わずニコリとしていたのだった。
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