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毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第七十九話 ケイマス直轄領で作業開始

 僕達が魔導船に乗っている間、何もしていない訳ではなかった。


「ゴードン様、被害の状況はどうなっていますか?」

「あまり良くない。怪我人が多いのと、多数の家屋が倒壊して閉じ込められているものがいる。軍が手分けして行方不明者の捜索をしている」


 行方不明者の捜索をしつつ、怪我人の治療もしないといけない。

 それに、炊き出しも必要になってくるはずだ。

 更に、未だ春先だから夜はだいぶ冷えるはず。

 色々なことを考えていたら、遂にケイマス直轄領上空に到着した。


「うわあ! これは酷い……」

「うむ、あまり良くない。直ぐに陛下に連絡しよう」


 山の至るところで土砂崩れが発生し、街道にも大きなヒビ割れが出来ていた。

 頑丈な建物は何とかなっていたが、小さな建物などは軒並み潰れていた。

 軍も捜索などに力を発揮していて、多くの人が教会や代官邸などに避難していた。

 僕たちを乗せた魔導船は、直轄領の防壁の門の前に着陸した。

 直ぐに魔導船から降り、僕たちは急いで代官邸の前に移動した。


「怪我人を運んで……おお、これはゴードン司令官ではないか」

「アナザー、生きていたか」


 赤髪短髪の人が、矢継ぎ早に指示を出していた。

 ゴードン様と知り合いらしく、ガッチリと握手をした。


 シュッ。


「「「「「おおっ!」」」」」


 この間に、僕は魔法袋から色々な荷物を取り出した。

 代官邸に集まっていた人から感嘆の声が響き、直ぐに使用人が荷物の仕分けを始めた。


「はじめまして、ケン・アスターです。ゴードン様と共に、荷物を運んできました」

「おお、かの有名な【蒼の治癒師】ではないか。私はアナザー、以前ゴードン司令官の元で働いていたことがある」


 アナザー様は、ゴードン様と上司部下の関係にあったんだ。

 だからこそ、こうして再会を喜んだんだ。


「ゴードン様、さっそく治療を始めます」

「直ぐにやってくれ。私は、現地駐留軍の司令官と話をする」


 ゴードン様の許可をもらい、僕たちはさっそく魔力を溜め始めた。

 いけるかどうか分からないが、先ずは試しにやってみないと。


 シュイン、シュイン、シュイン。


「おお、これが【蒼の治癒師】様の魔法……」


 できるだけたくさん魔力を溜めたので、僕たちの周辺にはかなり多くの魔法陣が現れた。

 町の人たちが驚きの声を上げる中、何とか範囲指定をすることができた。


 シュイン、シュイン、ぴかー!


「な、なんだこれは!?」

「町全体が、光り輝いているぞ!」


 町の人たちの驚きは、僕たちの超広範囲の回復魔法にあった。

 実は、町全体を範囲指定して回復魔法を放ったのだ。

 これは、このケイマス直轄領がそこまで大きな町ではないことから可能となった。

 威力は弱まるが、多くの人を治療できたはずだ。


「はあはあはあ……」


 流石にこの規模の魔法は初めてだったため、僕たちは地面にペタリと座り込んで息を整えていた。

 すると、この人が血相を変えながらやってきたのだ。


「おいケン、この代官邸に集まった人を治療したのではないのか? とんでもない魔法の光だったぞ!」

「この町全体に、回復魔法を放ちました。威力は弱いですが、何とか成功しました」

「町全体に回復魔法を……」


 ゴードン様も、流石に僕の魔法は予想外だったみたいだ。

 とはいえ、代官邸にやってきた町の人たちは、自分の体が良くなっているのに驚いていた。


「もう少し休んだら、念動で瓦礫の除去を手伝います。少なくとも、今の回復魔法で急を要する怪我人はいなくなったはずです」

「全く、ケンは初めて会った時からいつも私の想像を超えている。先ずは、ゆっくりと休め」


 ゴードン様は、苦笑しながら通信用魔導具であれこれ連絡をしていた。


 シュイーン、キーン!


 その間に、小型魔導船は王都に向かって戻っていった。

 明日、魔法袋を持っている魔法兵が荷物を持ってくることになった。

 よし、休憩も取ったのでこれで大丈夫。


「ゴードン様、救助現場に向かいます」

「待て待て、ケン焦るな。念のために、兵をつけさせる」


 仕切り直しして、僕たちは兵と共に建物の倒壊現場に向かった。

 そして、手分けしてみんなで倒壊した建物の瓦礫を取り除いていった。


 シュイン、ミシミシ。


「これで良いですか? 魔法で支えています!」

「よし、今のうちに助け出すぞ」

「「「おお!」」」


 僕たちは、兵と共に倒壊現場から多くの人を救い出した。

 中には即死状態の人もいたが、それでもこの規模の災害ではたくさん助け出せているという。

 遺体は、腐らないようにアクアちゃんが氷魔法で凍結させて、教会へ運ばれた。

 こうして、僕たちは暗くなるまでひたすら倒壊現場での作業を続けた。


 ドサッ。


「はあはあ……ご、ごめんなさい、もう魔力も体力も限界です……」

「無茶しすぎです。今日はここまでです」


 暗くなっても魔法の明かりを頼りに閉じ込められていた人の救助をしたが、遂に体力も魔力も限界を迎えてしまった。

 先に、スラちゃんやチビスライムたちも体力と魔力が尽きて代官邸に運ばれていた。

 僕も力尽きて倒れて動けなくなってしまい、兵にお姫様抱っこされながら代官邸に運ばれた。


「すみません……」

「全く、ここまでするとは。とにかく、今日はゆっくりと休むことだ」


 代官邸の客室は重傷者が運ばれていたため、僕は応接室のソファーに寝かされた。

 ゴードン様も呆れた感じで話をしたが、それ以上は何も言わなかった。

 というか話しているうちに僕は眠くなってしまい、そのままソファーで眠ってしまったのだった。

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