第七十七話 新しい年と夜会での事件
翌日は、いよいよ新しい年になった。
僕もいよいよ十歳になり、節目の年となった。
「また、服が小さくなっていますね。こうして、体が成長しているのを実感します」
ハンナおばさんは、服が小さくなくなることで僕の体の成長を喜んでいた。
まだ同年代の人よりも背は低いが、これからもっと伸びると思っていた。
今日はルーカス様から話があると言われ、またまた早めに王城に向かった。
「ケン君、これが結婚式の招待状だ。秋に結婚式を行う予定だから、もう少し先だがな」
王城について王家のいるエリアにある応接室で新年の挨拶を終えると、ルーカス様がわざわざ招待状を手渡してくれた。
流石に王太子でもあるアーサー様とメアリーさんの結婚式程ではないが、かなりの数の来賓を呼ぶという。
来賓は軍関係者が多いので、僕の知り合いも必然と多くなる。
その点は、僕もとても安心した。
「何もなければ、今年は穏やかに過ごせるだろう。ケンが成人するのはまだ先だし、今は勉学に励むのが優先だ」
ルーカス様の結婚式は、王家は絡むが国家行事ではない。
なので、陛下の言う通りそこまで大きな行事はないという。
僕は春先までスラム街での奉仕活動をして、後はいつも通りに訓練と勉強をすれば良いことになっていた。
上級官僚研修もほぼ終わり、成人した時に改めて研修をすることになる。
「本当は、ケン君も子どもらしくもう少し遊べればいいんだけどね。とはいえ、クリスちゃんたちとも仲良くしているのはとても良いことだと思うわ」
王太后様は、どうしても年上の人と接することが多い僕のことを気にかけていた。
僕は前世の記憶もあるため、子どもらしくするのが難しいのかもしれない。
とはいえ、クリスちゃんやシンシアお姉様が僕を良くしてくれるのはとても助かった。
こうして王家への挨拶も無事に終わり、新年の謁見もほぼ問題なく終わった。
新年の謁見で問題になったのは、スラム街を拠点にする犯罪組織と繋がりのあった貴族への処分くらいだった。
とはいえ、前年の内に貴族当主は捕まっており、ほぼ処分内容も決定していた。
その後は、いつも通り新年の夜会に移った。
ところが、その新年の夜会で少し問題が起きてしまった。
ドン!
「わあっ!」
早めに夜会の会場に到着した僕を待ち構えていたのか、五人の恰幅の良い豪華な服を着た貴族が集団でいきなり僕を壁際に追い込んだ。
そして、ニヤリとちょっと気味悪い笑みを浮かべながら、揉み手で近づいてきたのだ。
「アスター男爵様、昨年の王太子殿下の結婚式での活躍は見事でした。是非、お茶会にお誘いできればと。その際に、私の妹を紹介します」
「いやいや、勇猛果敢なその魔力こそ褒め称えられるべきです。私の娘なら、きっと強い子を産みますぞ」
「皆さん、分かっていないですな。積極的に奉仕をする優しさこそ、素晴らしいのです。是非、娘とお茶をしてくれればと」
同時に色々喋って何が何だか分からないが、どうやら何とか僕と縁を繋いで嫁を送り込みたいようだ。
唾が大量に飛んでいて臭い息がかかって物凄く嫌だが、圧が凄すぎて抜け出せないでいた。
でも、流石に魔法で吹き飛ばすわけにもいかない。
どうしようかと悩んでいたら、僕に救いの声がかかった。
「貴様ら、いったい何をしている!」
「「「「「ひっ!?」」」」」
鋭い声がかかったかと思って声のする方を何とか見ると、ヘルナンデス様がブチギレモードで仁王立ちしていたのだ。
しかも、ヘルナンデス様の足元にはいつの間にかスラちゃんの姿もあった。
どうやらスラちゃんは、僕が囲まれた時に上手く抜け出してヘルナンデス様を呼びに行ったみたいだ。
ダッ。
「「「「「あっ!」」」」」
僕を取り囲んでいた五人の貴族が怯んだ隙に、僕は何とか抜け出してヘルナンデス様のところに走り出した。
その間に、生活魔法でちょっと臭っていた自分の体を綺麗にした。
僕が抜け出したのを確認して、ヘルナンデス様はゆっくりと五人の貴族に歩み寄った。
「貴様ら、ケン君への面会が許可されないからと、保護者である私や母上、ノーム準男爵がいない時を狙って狼藉を働くとは。こんな事をして、ケン君が貴様らの話に頷くかと思ったのか!」
「「「「「ぐっ……」」」」」
ゆっくりと近づくヘルナンデス様の声と圧力に気圧され、五人の貴族もゆっくりと後退していた。
図星を指摘され、五人の貴族は大量の汗が止まらなかった。
「例え紹介するものが良くても、貴様らのような当主がこのようなことをすれば魂胆は見え見えだ。まあ、紹介するものが良いとは決してないがな」
「うぅ……」
あっ、このヘルナンデス様の言葉で何となく想像がついてしまった。
この場合、親が親なら子も子のケースなんだ。
それなら、僕は絶対に嫌だな。
すると、この人も姿を現して追撃したのです。
「なに、夜会前なので余は何も言わん。何も言わんがな……」
「「「「「陛下!」」」」」
これまたブチギレモードの陛下が、静かに威圧しながら低い声で話していた。
予想外の人物の登場に、五人の貴族は目を見開くほど驚いていた。
陛下の足元にはチビスライムたちがぴょんぴょんと飛び跳ねていて、スラちゃんと同じタイミングで王家の人々に助けを求めたんだ。
「「「「「失礼しました!」」」」」
ダッ!
陛下の分かっているなという圧力に、五人の貴族は一斉に脱兎の如く逃げ出した。
僕はようやくホッとでき、改めて二人に向き直った。
「陛下、ヘルナンデス様、助けてくれてありがとうございます。スラちゃんたちも、本当にありがとう」
「ケンは気にしなくてよい。というか、まだ十歳の貴族当主を寄って集って壁際に追い詰めるなど、話以前に言語道断だ」
「問題のありそうな貴族は、大体ピックアップしている。ピックアップ通りの動きをするとはな」
陛下も、ヘルナンデス様も、何も問題ないと言ってくれた。
スラちゃんたちも、大丈夫だよとぴょんぴょん飛び跳ねていた。
なんというか、夜会前にかなり疲れてしまった。
因みに、夜会時は話を聞いたクリスちゃんとシンシアお姉様がやる気満々でガッチリとガードし、下心のある貴族当主や貴族令嬢は近づくことさえできなかった。
もちろん、いつも奉仕活動などで顔見知りの貴族や貴族令嬢とはにこやかに話していたのだった。
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