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毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第六十九話 アーサー様とメアリーさんの結婚式当日

 いよいよ、アーサー様とメアリーさんの結婚式当日になった。

 主だった貴族は大教会に集合し、結婚式から参加する事となる。

 パレードの後に馬車で大教会から王城に移動し、大部屋で結婚披露宴の予定だ。

 因みに結婚式に参加するのは基本的に男爵以上となり、準男爵と騎士爵は選ばれた者のみの参加となる。

 エレンお祖父様のノーム準男爵家は、僕の関係者として結婚式に招待された。

 エレンお祖父様曰く、陛下の結婚式には招待されなかったのでとても幸運な事らしい。

 でも、僕の母親は王妃様の依頼もありシスター姿で結婚式のお手伝いをしていたという。

 ある意味、母親の逸話の方が凄いと思った。


「わあ、飾り付けが凄いです!」


 大教会の中に入ると、いつもよりも神々しさが増していた。

 派手ではないが荘厳な雰囲気の飾り付けとなっており、まさに王太子殿下の結婚式に相応しかった。

 僕は結構早く着いたのでまだ貴族などは殆どおらず、代わりに警備兵が何人もいた。

 道も既に兵が警備を行っており、万が一に備えて厳重警戒を敷いていた。

 そんな中、祭壇前に数人のシスターさんがいた。

 全員が祭壇前の絨毯を見ていたが、何かあったのだろうか。

 僕は、顔見知りのシスターさんのいる祭壇前に歩いて行った。


「おはようございます。何かあったのですか?」

「あっ、【蒼の治癒師】様……」

「実は、絨毯の一箇所に染みを見つけまして……」

「経年劣化によるものなのか、掃除しても全く取れずにいまして……」


 確かに、赤い絨毯の一箇所にこげ茶色の染みがあった。

 スラちゃんたちがいれば直ぐに染みを綺麗にしてくれるが、生憎アーサー様とメアリーさんの護衛で不在だ。

 でも、綺麗な状態で結婚式をやった方がいいはずだ。

 それならばと、僕は生活魔法で絨毯を綺麗にしようとした。


 シュイン、ぴかー。


「こ、これは……」


 シスターさんが驚きの声を上げる中、僕は絨毯に生活魔法を放った。

 直ぐに絨毯の染みは綺麗になり、絨毯自体もピカピカな赤い色を取り戻した。

 すると、シスターさんが周囲を見回しながら固まっていたのだ。

 何かあったのかなと思ったら、直ぐに理由に気がついた。


「あっ……生活魔法の範囲を間違えたみたいです……」


 何と、大教会の中がピカピカに光り輝いていたのです。

 なんというか、神々しさが一層増してしまった気がした。

 警備兵も、突然のことにあんぐりとしたまま固まってしまった。

 すると、この人が大教会の中の異変に気がついて急いでやってきた。


「な、何が起き……これは……」


 今日の結婚式の責任者の一人でもあるサイオン枢機卿様は、ピカピカに光り輝いている教会の中を見るやいなや目を見開いてしまった。

 僕は、直ぐにサイオン枢機卿様に頭を下げた。


「サイオン枢機卿様、ごめんなさい。絨毯の染みを取ろうとしたら、大教会の中もピカピカにしちゃいました」

「お、おお、そうか。いや、綺麗になったのなら何も問題はない。しかし、ケン君の魔法は物凄いのう……」


 サイオン枢機卿様は、驚きつつも何とか事情を理解してくれた。

 そして、シスターさんにこう指示を出した。


「【蒼の治癒師】様が、本日の結婚式のために大教会内を生まれ変わらせたかのように綺麗にしたと説明するように。実際に間違ってはない。王城にも連絡するように」

「「「「はい」」」」」


 シスターさんも、直ぐにそれぞれ動き始めた。

 すると、サイオン枢機卿様は追加の話をした。


「そうそう、陛下の結婚式の際にもイリスさんは丁寧に大教会を清掃した。母子揃って素晴らしい心がけだと付け加えるように」

「「「「「分かりました」」」」」


 あのあの、その言い方だとまた凄いことになりそうな気がするよ。

 でも、母親の話は本当らしく、母親の美談の一つだという。

 警備兵も、同様の内容を上司に報告していた。

 教会ルートと軍ルートにより、一気に話が広まっていったのだった。


「そうか、私は素晴らしい娘と孫を持ったものだ」


 エレンお祖父様も早めに大教会にやってきて、ピカピカになった状況に驚きつつも直ぐに納得してくれた。

 多くの貴族が集まり始めたが、僕と母親の話を聞くと直ぐに納得した。

 エレンお祖父様に声を掛ける貴族も多く、エレンお祖父様もにこやかに対応していた。


「そ、その、僕は綺麗な状態で結婚式ができたらいいなと思いまして……」

「それでも、素晴らしい心がけだ。しかも、ケン君は陛下の結婚式の時の母親の行動を知らない。ケン君自身が素晴らしい心を持っているという証拠だ」


 クリスちゃんの父親であるビーズリーさんだけでなく、他の貴族も僕のことを凄いと褒めてくれた。

 うう、僕としては失敗しちゃったと思っていたから、何だか恥ずかしいなあ……


「なに、今回の件は何も失敗していない。それどころか、多くの者は奇跡が起きたと思うだろう。しかし、そこには親子二代に渡る尊い心がある。実は私の結婚式の際にも、ケン君の母親は他のシスターに混じって長椅子などを丁寧に拭いていたと聞いている」


 ヘルナンデス様は、僕の肩をポンポンと軽く叩いていた。

 因みに、いつの間にか町中にも僕が結婚式のために大教会の中をピカピカにしたという噂が広まっているという。

 そして、遂にこの人たちも大教会の中に入ってきた。


「うむ、これはちょうどいい。煩わしいものも、唖然として静まり返っている。このまま大人しくしてもらいたいものだな」


 陛下を始めとする王家の方々が大教会に入り、陛下は僕にニヤリとしながら語っていた。

 今日の結婚式のために僕が大魔法を使ったことになり、何かやらかしたら大魔法が放たれるという噂も広まっているらしい。

 そのため、事前に警戒していたアーサー様に嫁を送り込めなかった貴族もかなり大人しいという。

 何だか、多方面に影響が出てしまっていた。

 因みに、陛下の胸ポケットにアクアちゃんが護衛として潜んでいた。


「ここは、とても綺麗な大教会で神聖な結婚式が執り行われると思いましょう」


 そして、王太后様が綺麗にしめてくれた。

 こんな感じで、結婚式前の時間は過ぎていったのだった。

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