第六十六話 上級官僚研修で会ったサボっている兵
新年の謁見後に作った服も出来上がり、上級官僚研修などで着用していた。
騎士服に似た服も作り直し、クリスちゃんとの手合わせや軍での魔法訓練の際に着用した。
王太后様をはじめとする僕のファッションショーを見た人たちは、良いものができたと大満足していた。
実際に新しい服はとても動きやすく、僕もかなり気に入っていた。
尚、服のお金は王太后様と王妃様が出してくれた。
お礼を言う僕に気にしないでと言うけど、こうして良くしてくれるのは本当にありがたかった。
今日は上級官僚研修の一環で、軍の施設見学を行うことになった。
一度王城に集まってから軍の施設に移動するのだが、騎士服っぽいのではなく貴族服で軍の施設に行くのは何だか新鮮な感じだった。
スラちゃんはいつも通りって感じで、僕の頭の上でふよふよとしていた。
「皆さん、ようこそ王国軍施設へ」
僕たちを出迎えてくれたのは、なんとシーリアさんだった。
もちろんシーリアさんはキチンとした軍人で、こういうアテンド業務はお任せらしい。
確かに凄く顔が広いし、色々な人と知り合いだ。
最初に事務棟に行くのだけど、もちろん機密関連の事は説明がない予定だ。
「諸君らの来訪を歓迎しよう。しっかりと軍のことを学び、諸君らの業務に大いに役立ててもらいたい。軍は多方面に業務がある。近い内に、間違いなく諸君らと共に仕事をすることがあるだろう」
事務棟の応接室で、ヘルナンデス様が僕たちを出迎えてくれた。
僕も軍の業務の全てを知らないし、勉強して覚える必要があった。
もちろん、他の人たちもヘルナンデス様の言葉に深く頷いた。
その後も、シーリアさんの案内で色々な所を見学した。
事務棟の中に知らない場所があったし、大きな会議室も見学できた。
顔見知りの職員からも話しかけられながら、僕たちは次の場所に移動した。
「ここが軍の訓練場です。剣や魔法、基礎訓練などに分かれて訓練を行うことが可能です」
訓練場は何回も来たことがあるけど、僕はいつも魔法の訓練を中心に行っていた。
剣の訓練をじっくり見るのは初めてで、多くの兵が真剣な表情で訓練に臨んでいた。
魔法兵も剣の訓練に参加しており、魔法訓練場には今は誰もいなかった。
すると、シーリアさんがこんなことを言ってきたのです。
「上級官僚試験合格者は、多くの人と接する関係上最低限の武力が求められます。自身を守るだけでなく、要人を守る必要もあるでしょう。今後、定期的に剣の訓練に参加してもらう予定です」
この辺りは、以前の説明でも聞いたところだった。
様々な状況を想定しながら訓練に参加する予定で、剣だけでなく護身術も学ぶという。
実は、僕もとっても楽しみにしていた。
クリスちゃんと定期的に手合わせしているが、実際に兵がどのくらい強いか興味があった。
護身術は全くの素人だし、しっかりと覚えないと。
その後も数箇所の施設を回り、いよいよ最後の後方支援の倉庫にやってきた。
武器庫とは違うが、テントや備品などが保管されていた。
すると、この人が僕たちのところにやってきた。
「皆、真剣に見学していて感心する。軍は、後方支援部隊がしっかりしないと活動できない。前線が確実に動けるように、後方支援部隊も責任持って活動しないとならない」
「「「「「ヘルナンデス様!?」」」」」
シーリアさんの側に来て説明をしたのは、さっき事務棟で僕たちに訓示をしたヘルナンデス様だった。
何でこの場にいるかと思ったら、どうも後方支援部隊の担当者に話があるという。
そのついでらしいが、結果的にヘルナンデス様がこの場にいて良かったというトラブルが起きてしまった。
「ちっ、俺様に面倒な仕事を押し付けやがっ……うん?」
なんと、僕の父親が倉庫から一人ブツブツと文句を言いながら出てきたのだ。
帝国との戦争で国境から戻って開かれた謁見以来で、特別訓練を受けていたはずなのに更に横に大きくなっていた。
そして、父親は僕の姿を見るなりいきなり怒号をあげた。
「おい、ケン! 貴様何をしているんだ! 貴様のせいで、我が家は大損害だ! 死んで詫び……」
「ギャイン騎士爵、黙れ!」
「!?」
ヘルナンデス様の一喝に、父親はビックリした表情のまま固まった。
作業をしていた兵も手を止め、ヘルナンデス様と父親の成り行きを見守っていた。
「ギャイン騎士爵、貴様は以前の謁見で言われたことを全く理解していない。貴様は自ら愚かな行為をし、その報いを受けたに過ぎない。何故、被害者であるケン君に死ねと要求できるのだ?」
「そ、その……」
父親は、相変わらず頭に血が上ると後先考えずに行動する。
多分、ヘルナンデス様の言う通り、謁見での指摘を理解してないのだろう。
その上で、ヘルナンデス様は父親にこう言った。
「ケン君は、難しい勉強を乗り越えて上級官僚試験に合格した。何も努力をせずに贅沢をしようとした貴様とは、もはや何もかもが違う」
「はっ? ケンが上級官僚試験に合格?」
父親は僕が上級官僚試験に合格したことに驚き、ヘルナンデス様の指摘を完全にスルーしていた。
というか、そもそも父親はここにいていいのだろうか。
僕の予想は的中し、直ぐに倉庫の中からたくさんの兵がやってきた。
「貴様、ここで何をしている! 倉庫整理の途中だろうが!」
「げっ……」
父親は、怒り狂う兵を見てヤバいという表情をした。
どうやら仕事をサボってどこかに行こうとしたところで、僕たちとバッタリ出くわしたみたいだ。
そういえばシーリアさんの姿が見えないなと思ったら、どうやら倉庫内に行って父親の上司などを呼んできたみたいだ。
「ギャイン騎士爵に専属で兵をつけ、作業が終わるまで監視せよ。後ほど、正式に処分を通達する」
「「「「「はっ」」」」」
たくさんの兵によって、父親は連行された。
そして、僕は厳しい表情で指示を出したヘルナンデス様に頭を下げた。
「ヘルナンデス様、父親が迷惑をかけてごめんなさい。シーリアさんも皆さんも、本当にごめんなさい」
「ケン君が謝ることではない。全て、指揮違反をして勝手な行動をしたケン君の父親が悪いのだから」
ヘルナンデス様曰く、後方支援部隊には問題を起こした貴族も配置されることがあり、昔から軍の施設案内をするのは作業などで問題のあったものが表に出てこない日を狙っているという。
しかし、今回は父親がサボったのもあり予想外のことになったという。
シーリアさんや他の人たちも大丈夫だと言ってくれたが、僕は本当に申し訳ないと思った。
そして、父親は心が変わることはなかったと辟易してしまったのだった。
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