第六十五話 新しい年と嬉しいトラブル
年末の奉仕活動の翌日、いよいよ新しい年になった。
僕も九歳になり、一つ歳を重ねた。
王城で貴族当主向けの新年の謁見もあるのだが、ここでちょっとした嬉しいトラブルが起きた。
「うーん、新しい服を作られた方が良さそうです。ケン様の体が、以前よりもだいぶ大きくなっています。今は何とかなっておりますが、直ぐに服が着れなくなります」
ハンナおばさん曰く、今日はどうにかできるという。
直ぐに、服飾担当の使用人が僕の服を手直ししてくれた。
今日は夜会などもあり、近日中に御用商人に服を頼むことになった。
何とか身支度を整え、僕はスラちゃんと共に王城に向かった。
「ケン君も体が大きくなったのね。初めて会った時はかなり痩せ細っていたから、こうして成長を実感できるのはとても良いことよ」
昨年と同じく王家の食堂に招かれ、王家の方々に新年の挨拶をした。
服のことを話すと、王太后様が嬉しそうに語っていた。
実家にいた時はまともに食事ができず、背が小さい上に痩せ細っていたもんなあ。
今も同じ歳のクリスちゃんよりも背が小さいし、もっと体が大きくなればと頑張って食事をしていた。
すると、今度は王妃様がこんなことを提案してきた。
「そうだわ、謁見が終わったら御用商人に服を見てもらいましょう。ケン君の屋敷の御用商人と同じだし、何も問題ないわ。アーサーとルーカスの子どもはまだだし、可愛い子に服を買ってあげたいのよ」
王妃様はキラキラした目で僕を見ており、提案を断るのは不可能に感じた。
王太后様も、うんうんと感慨深そうに僕を見ていた。
ということで、僕の謁見の後の予定が図らずとも決まった。
「今日は、こうしてゆっくりと過ごすと良い。謁見後は、母上とリリアーナの予定が空くからな」
陛下が意味深な発言をしたが、この時は何のことだか全く分からなかった。
アーサー様とルーカス様は既に何のことだか分かっていて、僕は新年の謁見で発言の意味を知ることになった。
「残念なことに、年末に大教会で行われた奉仕活動にてとある犯罪が発覚した。民に過剰な税を課し、自らは贅沢をしていたものがいたのだ」
謁見の始まりで、陛下は例の避難民の件に触れた。
集まった貴族から、大きなざわめきが起きていた。
確か、三つの貴族家の領地から逃げてきたはずだ。
昨日発覚した事件なのに、既に犯罪の証拠まで掴んでいるとは。
王家が本気になると、こんなにも凄いんだ。
そして、この場にキョロキョロと焦ったように周囲を見回しているものがいた。
体も横に大きく、かなり豪華な服を着ていた。
「対象の三家については、王城に入場した際に捕縛した。屋敷への捜査も行っており、不正の証拠も押さえている。それだけではない!」
ザッ。
陛下が右手を上げて合図をすると、近衛騎士が先程からキョロキョロとしていた数人の貴族を取り押さえた。
突然のことに、取り押さえられた貴族は逃げることも言葉を発する間もなかった。
「重税で得た資金を元に、自らの組織の維持を行っていた不届き者がいた。金品を得ていただけではなく、資金洗浄も確認した。屋敷への捜索も開始している。言い逃れはできんぞ!」
「「「「ぐっ……」」」」
陛下の厳しい声に、取り押さえられた貴族は悔しそうな表情をしていた。
直ぐに連行されたが、まさか謁見の間で大捕物が起きるとは思わなかった。
そして、ざわめきが落ち着いたところで陛下は再び話し始めた。
「さて、今年はアーサーとメアリーの結婚が行われる。そして、来年ルーカスとシーリアの結婚式も行う。だが、あの様な不届き者を祝いの場に出させる訳にはいかない。この場にいる者が、正直に政務に邁進することを期待する」
ルーカス様とシーリアさんの結婚式という重大な情報が、サラリと流された。
それだけ、陛下も今回の件は怒っているのだろう。
それに、今回の件は貴族主義勢力への大きな牽制にもなる。
願わくは父親や兄にも聞かせたかったが、謁見そのものへの参加を禁じられていたので残念ながら不可能だった。
「今年は大きな行事があるが、つつがなく終わることを願う」
こうして、謁見は何とか終わった。
臣下の礼を取りながら、陛下の言葉に苦々しい表情を浮かべていたものもいた。
アーサー様とメアリーさんの結婚式が終わるまで、大人しくしてくれるのを願うばかりだった。
「私も、ケン君に似合う服を選んであげたいですわ」
「ケン君はとても綺麗な蒼の髪色だし、どんな色の服が似合うかしら」
そして、謁見後に王家御用商人が来ると僕の着せ替えタイムが始まった。
メアリーさんとシーリアさんも加わって、僕に生地のサンプルを手にしてあーだこーだ話をしていた。
実は、この後面会を申し込んでいたのが捕まった貴族家だった。
もちろん面会はキャンセルとなり、その分ガッツリと時間が取れたのだ。
しかも、普通に面会をするのがメアリーさんとシーリアさんの実家並びにヘルナンデス様のところだった。
そのため、面会という名の僕のファッションショーが開催されてしまった。
何回も着替えをすることになり、僕は夜会前にヘロヘロになってしまった。
因みに、スラちゃんはちゃっかりとルーカス様のところに避難して着せ替えショーから逃げ出していた。
夜会参加のために王城に来たシンシアお姉様とクリスちゃんも最後の方に加わり、何とか僕のファッションショーは終了した。
女性陣はやりきったというとてもいい表情をしていたが、僕はヘロヘロな状態で夜会に参加していたのだった。
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