第六十四話 年末の奉仕活動
その後は上級官僚としての研修がある日は研修を優先し、引き続き魔法や剣の練習を積んでいった。
ヘルナンデス様だけでなく多くの人が僕に本を送った結果、勉強も更に大変になった。
クリスちゃんに負けじと剣も頑張り、馬に乗るのもだいぶ慣れてきた。
スラちゃんが一番上手に馬に乗れていて、僕もクリスちゃんも少し悔しかった。
研修も王城内の各部署を案内して貰っており、初めて知る事も多くとても勉強になった。
こうしていよいよ年末となり、僕たちは年末の奉仕活動に参加するために馬車に乗って大教会に向かった。
「皆さん、おはようございます」
「ケン君、おはよう。今日は宜しくね」
「今日は治療で忙しくなるけど、頑張りましょうね」
王太后様とメアリーさんが、大教会で僕たちを出迎えてくれた。
王妃様は、陛下とともに王城で来賓からの年末の挨拶対応をしているという。
そして、アクアちゃんとリーフちゃんが直ぐに王太后様とメアリーさんの護衛に着いた。
シーリアさんとも挨拶をすると、この人たちも姿を現した。
「ケン、おはよう。一生懸命頑張ろうね」
「ケン君、おはよー!」
今日も元気なシンシアお姉様とクリスちゃんに、僕もニコリとしながら返事をした。
スラちゃんとシロちゃんも直ぐに二人のところに飛び乗り、一緒に治療をしようとアピールしていた。
軍の治療兵や教会の聖職者も一緒に治療し、セレナさんたちも護衛についてくれた。
そして、実は上級官僚の研修としても行われており、各自が何かの手伝いをすることになっていた。
僕は何をすれば良いのかなと思ったが、普通に王族をサポートしているのでそのままで良いと言われてしまった。
王太后様のサポートをすることになった平民出身の人は、にこやかにしている王太后様に対してかなり恐縮していた。
炊き出しなども行われており、メアリーさんは器などを配る係をするという。
ここで力を発揮したのが、アクアちゃんとリーフちゃんだった。
シュイン、チャポン。
「アクアちゃん、とても綺麗な水をありがとうね」
アクアちゃんは水魔法が得意なので、安全で清潔な水を作り出すことができる。
王太后様に褒められ、アクアちゃんもとても上機嫌だ。
シスターさんたちにとっても、いちいち井戸から水を運ばなくても良いのでとてもありがたかった。
シュイン、スパパパパ。
「リーフちゃんの風魔法は、とても素晴らしいわ。これなら、予定よりも早く皆さんにスープを提供できますわ」
リーフちゃんは風魔法が得意なので、野菜や肉を手早く切っていた。
アクアちゃん程ではないにしろ水魔法も使えるので、料理の補助もできる。
メアリーさんも他の人も、リーフちゃんの活躍に大絶賛だった。
僕たちも負けじと、どんどんと町の人を治療していった。
「【蒼の治癒師】ともなると、治療の腕もそうだけど町の人も笑顔にしているわ」
「私も、ケン君に負けないもん!」
僕の治療の様子をシンシアお姉様はニコリとしながら見ていたが、クリスちゃんはヤル気に火がついてしまった。
クリスちゃんと一緒にいるシロちゃんも、アクアちゃんとリーフちゃんに負けないぞとやる気満々だ。
こうして、奉仕活動は順調に進んでいった。
因みに、以前奉仕活動で王太后様や王妃様に接近しようとした貴族主義勢力のものはいなかった。
どうも、自分の勢力維持に忙しくて奉仕活動は二の次らしい。
お陰で、トラブルの元がいなくてとても助かった。
「あの、パンください……」
「あらあら、それは大変ね。たくさん食べなさい」
そして、時々孤児と思われる子どもが炊き出しにやってきた。
今も、王太后様のところに一人の小さな女の子がやってきた。
教会側も孤児の対策は万全に整えていて、事情を確認したら直ぐに保護していた。
合わせて、他に孤児の情報を得たら兵が保護に向かった。
この世界は何らかの事情で親を亡くした子どもが多く、力のあるものが何かしらの施しをするのが通例だった。
教会に寄付をする貴族や豪商も多く、もちろん僕も定期的に寄付をしていた。
僕にできることは少ないかもしれないが、何もやらないよりもできることをやろうと思った。
シュイン、ぴかー!
「相変わらず、ケンの魔法はすげーな。今日だけで、何人の怪我人を治療したのか?」
僕に付き添ってくれた兵は、思わず呆れた様な声を出した。
午後になっても多くの人が治療に訪れ、僕は治療に追われていた。
治療に来た人に理由を聞くと、どうも重税を取り立てている領地から逃げてきた人が多かった。
直ぐに王城に情報がもたらされ、分析を行っているという。
シーリアさん曰く、話のあった貴族は全員貴族主義勢力らしい。
もしかしたら、自分たちが贅沢をするために重税を課していたのかも。
流石に王太后様も心を痛めており、人々に申し訳ないと言っていた。
「とにかく、元をどうにかしないといけないわ。陛下やアーサー様が既に動いているそうなので、暫く待つことになりそうですわ」
なんとか奉仕活動は終わったが、領民の苦労を聞いてメアリーさんも心を痛めていた。
恐らく、陛下や王妃様、アーサー様とルーカス様も何かしらの対応をするはずだ。
「とても残念ですが、これが国の現状です。私利私欲に走り、人々の痛みを感じないものがいるのです。難しいことですが、少しずつ対応して行きましょう」
「「「「「はい!」」」」」
王太后様の訓示に、今日一緒に活動した上級官僚が威勢の良い返事をした。
僕もとても勉強になったし、父親や兄みたいな人を野放しにしてはいけないと思ったのだった。
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