第六十三話 合格証書授与式
上級官僚試験に合格したら、定期的に研修を受ける必要がある。
とはいえ、僕の場合は成人まで時間があるので年に何回もというわけではない。
因みに、今回上級官僚試験に合格した人は僕を含めて十二名で、平民出身も含まれていた。
貴族を相手にするため、上級官僚試験に合格すると自動的に名誉準男爵になるらしい。
僕は男爵家の当主だから、爵位はそのままだ。
そして、今日は合格証書授与式という大層な式典に呼ばれた。
王城内にある玉座の間にて行われ、王族や閣僚などの主要貴族が勢揃いしていた。
「諸君らは、これから国の政治を担うものとなる。切磋琢磨し、自己研鑽を続け、国のために働くことを期待する」
合格証書を一人ずつ陛下から手渡され、更に陛下から訓示があった。
初級官僚試験に合格してもこの様な式典はなく、如何に上級官僚試験合格者への期待が大きいかが伺えた。
そして、初級官僚試験に合格しても普段は陛下や王族、主要貴族に会うことは殆どない。
そのため、相当緊張している人が殆どだった。
僕はというと知り合いが殆どなのだが、周りの人の緊張が伝染して緊張していた。
「それでは、式典はこれで終了とする。この後は、昼食を兼ねての懇親会を行う」
司会のアーサー様の言葉で、式典は終了。
しかし、部屋を移動して引き続き偉い人と会うのだから、僕以外の上級官僚試験合格者はまだまだ気が抜けなかった。
「あっ、そういえばヘルナンデス様酷いですよ。試験が終わったかと思ったら、また新しい本を送ってくるなんて」
「おっ、ケン君も一丁前に文句を言うようになったか。ケン君なら試験に合格するだろうと思ったし、これからもどんどん勉強しないとならないからな」
うう、ヘルナンデス様に文句を言ったらあっさりと返されてしまった。
僕は、前世を含めても人生経験が足らなすぎる。
特に、ヘルナンデス様は百戦錬磨の経験を持っている。
勉強もそうだけど、こういう会話のやり取りももっと学ばないと。
そして、懇親会が行われる部屋に着いた。
立食形式で行われ、まだ昼間なので酒類はなかった。
全員のグラスに飲み物が注がれた。
「それでは、ひとときの食事を楽しんでくれ。乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
陛下の乾杯の音頭で昼食会は始まり、王族や閣僚などが合格者に話しかけていた。
合格者自ら話しかけるのは中々難しく、基本的に受けの姿勢だ。
「うーん、僕は知っている人ばかりだからどうしよう……」
「それなら、同じ合格者同士で話し合うのもいいわよ。私もついてあげるわ」
王妃様のアシストもあり、僕は同じ合格者同士で話すことにした。
ところが、ここで予想外のことが分かったのだ。
「その、【蒼の治癒師】と呼ばれるアスター男爵様も、他の方と同じ位凄い人ですので……」
何と、僕も凄い人認定されていたのだ。
そういえば、合格証書授与式の前にチラチラと僕のことを見ていた気がした。
よく考えると、誰からも話しかけられなかった。
「あのその、僕はそんな凄い人じゃないですよ! 普通に『ケン』と名前で呼んで下さい」
「「「「「今は無理です!」」」」」
どうも、まだ小さいけど貴族当主ってのも大きいらしい。
しかも、今回はたまたま僕以外の全員が平民、準男爵、騎士爵出身で、爵位の差もあるという。
いやいや、僕は騎士爵出身だし男爵になったのも七歳の時ですよ。
それでも、僕以外の合格者は年上なのに名前で呼んでくれなかった。
「ケン君は気にしないだろうが、帝国から国を救ったものとしてとても有名だ。更に、最近はケン君の母親の逸話も人々の間で広まっている。もう少し時間が経てば、普通に話すようになるだろう」
ルーカス様の説明に、多くの人が頷いていた。
何だか僕が凄い人扱いされているが、只の魔法が使える男の子ですよ。
でも、合格した皆さんは最後まで「アスター男爵」って僕のことを呼んでいた。
「まあ、こればかりは仕方ないだろう。そうそう、もう少ししたら王城内を見学することになっている。ケンも必須参加だ。来年には、軍の施設も見学するぞ」
陛下の言う施設見学も、僕は特に問題なさそうだ。
新しいものに触れるのはとても新鮮だし、良い勉強にもなる。
そういえば、軍の施設でも行ったことがないところがあるんだよなあ。
こんな感じで、懇親会は進んで行った。
ちなみに、全員僕の屋敷に遊びに来て良いと言うことになったが、畏れ多いという謎のリアクションをしていたのだった。
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