第六十二話 上級官僚試験
その後は、様々な訓練や勉強をする日々が続いた。
相変わらず王妃様や王太后様から普段の報告を兼ねたお茶に誘われ、日々のことやクリスちゃんとのことを話した。
治療も引き続き行い、奉仕活動などにも積極的に出ていた。
町の人や教会の人に接するのも良い勉強になり、知り合いからも治療を褒められた。
屋敷の馬に乗って、乗馬の訓練をする事もあった。
因みに、屋敷の馬は僕が軍の馬に乗ったと聞いて少し拗ねていた。
クリスちゃんだけでなくシンシアお姉様が屋敷に遊びに来ることもあり、とても賑やかな日々が過ぎていった。
「それでは、試験を開始する。始め!」
暑い季節になったある日、僕は王城の一室で多くの受験者と共に試験を受けていた。
前々から多くの人に受験するように言われていた、上級官僚試験だ。
日々勉強をした上に前世の知識もあったが、流石に上級官僚試験の内容はとても難しかった。
とはいえ、解けない内容ではないので、慎重に見直しをしながら回答を記入していく。
上級官僚試験は初級官僚試験に合格しないと受験できないため、周囲にいる人も少し年齡が高い人が多い。
僕みたいな子どもは、周囲には全くいなかった。
「そこまで」
試験監督の合図で、僕はペンを机の上に置いた。
僕は、緊張から解放されて思わず息をついた。
回答は全て埋めたし、見直しもできる限り行った。
やるだけやったのだから、後は結果を待つばかりだ。
この後は面接だったが、初級官僚試験と大差なかった。
こうして、なんとか受験を終えることができた。
僕は、受験完了手続きをして屋敷に戻った。
「はぅ……疲れた……」
「ケン様、お疲れ様です。毎日一生懸命勉強しておりましたね」
応接室に移動し、僕はハンナおばさんが出してくれた甘いお菓子を口にした。
嗚呼、甘いものが体に染み渡るよ……
「流石に合格発表までは勉強したくない……」
ソファーに体重をかけてもたれると、ハンナおばさんは何かを思い出したみたいだ。
何だか、嫌な予感がする。
「そういえば、ヘルナンデス様より新しい本が届いておりました。新しい分野の勉強の本だそうです」
おお、まさかの新しい本が届くとは。
僕はガックリして、ソファーに倒れ込んだ。
とはいえ、今日は試験を終えたばかりだしゆっくりしよう。
というか、脳が疲れて勉強どころではなかった。
因みに、届いた本を見たスラちゃん曰く、更に難易度が高い本らしい。
僕は、またまたガクリとしてしまったのだった。
一週間後、試験結果が王城正門前に張り出された。
僕は、朝から結果を見るために並んでいた。
「ふはは、ようやく俺も官僚になるのだな」
昨年初級官僚試験に落ちて、試験監督に文句を言っていた偉そうな態度の貴族もいた。
てっきり受験しないかと思ったが、また受験したんだ。
本人が受験できない状況にならなくて、ちょっと良かったとも思った。
「これより、試験結果を発表する」
バッ。
掲示板を覆っていたカバーが外され、試験結果が一斉に表示された。
試験結果に、集まった人たちはまさに悲喜交交だった。
「おい、何で俺の受験番号がないんだよ!」
「そこ、煩いぞ!」
どうやら、偉そうな態度の貴族は今年も初級官僚試験に不合格だったみたいだ。
また試験監督を巻き込んでぎゃーぎゃー騒いでいるが、気にしなくていいだろう。
「えーっと、あっ、あった!」
改めて受験番号を確認すると、上級官僚試験合格者のところに僕の受験番号が掲載されていた。
一生懸命勉強した結果が出て、思わず声を上げてしまった。
「くそー、なんで落ちたんだよ!」
「煩いぞ、こっちに来い!」
うん、合格の感動も大騒ぎしている豪華な服を着た貴族と試験監督との一悶着で薄れてしまった。
騒ぎに巻き込まれないように、この場から抜け出して手続きしておこうっと。
この後は、昨年と同様に王太后様に呼ばれていたので、王城の中に入っていった。
応接室に案内されると、王太后様だけでなく、王妃様、メアリーさん、シーリアさん、フリージアお祖母様、シンシアお姉様、クリスちゃんが僕を待っていてくれた。
予想外の大人数に、僕たちは思わずビックリしてしまった。
「ケン君、試験合格おめでとう。毎日頑張って勉強した成果が出たわね」
「「「「「おめでとう!」」」」」
多くの人に合格を祝ってもらい、僕はとても嬉しくなった。
席に座ると、両サイドにクリスちゃんとシンシアお姉様が座った。
「皆さん、ありがとうございます」
改めてお礼を言うと、集まってくれた人たちもニコリとしていた。
すると、王妃様がこんなことを言ったのだ。
「アーサーが持っていた最年少合格記録を大幅にやぶるとは、流石はケン君ね」
アーサー様が十二歳で上級官僚試験に合格したのが、今までの最年少合格だったらしい。
その時でも、アーサー様は神童だと言われたという。
うーん、僕の場合はほぼ強制的に受験させられた気がするけど。
「ただ受験するのと、試験に合格するのとは全く違いますわ。アーサー様も、ケン君は合格するだけの努力をしたと言っておられましたわ」
「確かに、ケン君は勉強を良くしていたもんね。軍の訓練も真面目だし、馬も上手に乗りこなせているわ」
メアリーさんとシーリアさんにも、手放しで褒められた。
僕の頑張りを見てくれていて、とっても嬉しかった。
そして、フリージアお祖母様からこの後の予定を伝えられた。
「昼食後に、ケン君の屋敷に知り合いを招いてお祝いをすることにしているのよ。既に、ケン君の屋敷の使用人とは話をつけてあるわ」
フリージアお祖母様は既に下交渉を済ませていて、合格が発表されたら直ぐに手配してくれたという。
もちろんこの案には賛成だし、シンシアお姉様やクリスちゃんたちもやってくるという。
きっと、みんな楽しいお祝いになりそうだ。
「ケン君が上級官僚試験に合格したことで、屋敷運営はほぼ問題は無くなったわ。相応の給与が入るのは保証されるわ」
王太后様曰く、仕事は大変だけど給与はとてもいいという。
でも、僕はまだ八歳だし、成人しないと王城で働くことはない。
当面は、勉強と訓練の日々が続くことになる。
そして、午後から行われたお祝いは、僕の知り合いがたくさん集まってくれた。
みんなが純粋に僕のことを褒めてくれ、僕は頑張って良かったと改めて思ったのだった。
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