第六話 陛下との面会
十分ほど休憩すると、僕とスラちゃんは何とか普通に動ける程度に体力が回復した。
大規模な魔法は、体力もかなり消費してしまうと分かった。
残念ながら、魔力の回復はもう暫くかかりそうだ。
「ルーカス殿下、すみません。入院している負傷兵の治療は、今日は無理そうです……」
「いや、あれだけの魔法を使ったのだから、私も承知している。それに、既に多くの負傷兵を治療しているのだ。気に病むことはない」
僕は立ち上がってペコリと頭を下げたが、ルーカス様は気にしなかった。
すると、ルーカス殿下は別の質問をしてきた。
「ケンは、回復魔法と聖魔法の二つの魔法が使えるのか?」
「あの、多分殆どの魔法が使えると思います。簡単なものを発動して、確認しましたので。多分、スラちゃんも僕と同じです」
「そ、そうか。なら、明日朝改めてケンとスラちゃんの魔力適性を確認しよう」
新兵なら必ず全員魔力適性を確認しないと駄目で、魔力適性を測るための専用魔導具もあるという。
簡単な確認しかしていなかったので、僕とスラちゃんにとってもとても助かった。
その間に、ヘルナンデス様は専用の軍服に着替えて身だしなみを整えた。
「これから、私とルーカスは陛下に一連のことを報告してくる。準備を整えるように」
「「「「「はっ」」」」」
ヘルナンデス様の命を受け、部下が直ぐに準備を始めた。
確かに、元気になったのなら兄である陛下に姿を見せないといけない。
えーっと、僕はこの後どうすればいいのだろうか。
周囲を見回しながら座っていると、ルーカス殿下が僕に声をかけた。
「ケン、スラちゃんも私たちと一緒に王城に行くぞ」
「えっ!? あ、あの、僕はボロボロの服で……」
「大丈夫だ、父上はそんな些細なことなど気にしない」
僕は、ルーカス殿下に手を引かれながら個室を出た。
そして、警備していた兵は、ヘルナンデス様が自分の足で歩いているのを見て信じられないという表情をしていた。
それは、この人も一緒だった。
「ルーカス殿下、ケン君、お帰りなさ……えぇ! ヘルナンデス様が歩いている!?」
一階玄関前で僕たちを出迎えてくれたシーリアさんは、ヘルナンデス様を見るなりあんぐりとした表情になった。
そして、数秒間固まってしまったのだ。
「シーリア、私と一緒に来れば奇跡的な光景を見ることができたぞ」
「ルーカス殿下、私は既に信じられない気持ちでいっぱいです……」
やっと再起動したシーリアさんだったが、まだ信じられないという表情だ。
そして、僕のこともチラチラと見ていた。
僕とスラちゃんがヘルナンデス様を治療したということには、シーリアさんも何となく気がついたみたいだ。
そして、僕たちは治療施設前に停まっていた豪華な馬車に乗り込んだ。
朝乗ってきた我が家の馬車とは何もかもが雲泥の差で、外装だけでなく内装も豪華だった。
恐る恐る座ったソファーは、体が沈み込みそうになるほどとても柔らかった。
更に、目の前にロイヤルなお二人がいるのでとんでもなく緊張した。
「ケンよ、そんなに緊張しなくてもいい。兄上は見た目はとても厳ついが、とても優しい性格だ」
「父上には、既に多くの情報を伝えている。もちろん、ケンが軍に来た事情もな」
ヘルナンデス様とルーカス殿下は、ガチガチに緊張している僕を見て思わず苦笑していた。
僕の緊張を解してくれているのは分かったが、残念ながら馬車はあっという間に王城に着いてしまった。
僕とスラちゃんは、周囲をキョロキョロしながら馬車を降りた。
「わあ、とっても大きな建物です。凄いですね」
「ハハハ、喜ぶ姿を見るとケンも小さな子どもだと分かるな」
目の前にドーンと建っているとても大きな王城を見て、僕とスラちゃんは大興奮していた。
前世の社会の教科書に載っている城そのもので、多くの人が王城から行き来していた。
そんな人たちを横目に、僕たちは兵の先導でズンズンと王城の中に入って行った。
王城の中もとても豪華な作りで、貴族と思われる豪華な服を着た多くの人が忙しく歩いていた。
そして、僕たちはある装置の前に並んだ。
「こ、これは、本で見たことのある『魔導昇降機』ですか?」
「ケンはよく勉強している。王城に設置しているのは、最新型の魔導昇降機だ」
ヘルナンデス様は、僕の呟きにニコッとしながら答えてくれた。
この世界は魔導具研究もとても発達しており、研究成果の一つがこの魔導昇降機だという。
他にも魔導船などを研究していて、あと少しで実用化できると本に書いてあった。
日々の技術革新は本当に凄い。
そして、魔導昇降機に乗ってどんどんと上の階に向かった。
階のボタンが特別な操作をしないと動かなかったので、特別な階に行くのは間違いなかった。
チン。
前世のレンジの音みたいなのが鳴り、目的の階に到着した。
一階とは比べ物にならない程、とても豪華な調度品が並んでいた。
この階にいる人がどんな人たちなのか、直ぐに分かってしまった。
「では、応接室に向かおう。兄上が待っている」
「わわっ!?」
今度は、ヘルナンデス様が僕の手を繋いできた。
ルーカス殿下も周りにいる兵も、和やかな光景だとニコリと微笑んでいた。
そして、ヘルナンデス様は僕の気持ちが整う前に応接室に入ったのだ。
ガチャ。
「兄上、お待たせしました」
「おお、ヘルナンデス。よくぞ、よくぞここまで元気になったものだ……」
応接室に入ると、二人の男性と一人の女性がかなりビックリした表情でソファーから立ち上がった。
ヘルナンデス様に歩み寄った中年男性は金髪角刈りの長身で、ヘルナンデス様に負けず劣らずの筋肉質な体だった。
二人の会話を聞く限り、兄弟というのは間違いなさそうだ。
もう一人の青年は、サラサラの金髪長身でまさに王子様という物凄い美男子だった。
中年女性は、品の良いドレスを着た緑髪ショートヘアで、とてもスタイルが良かった。
うん、何となく偉い人がいるのは分かるけど、ここは兄弟の再会の喜びを邪魔しては駄目だ。
「父上、ここにいるのが報告をしたケンになります」
わぁ!?
折角兄弟の再会で終わればいいなと思っていたのに、ルーカス殿下が僕のことを紹介してしまった。
他の人たちも、僕に興味津々だ。
「立ったままではあれだから、ケンも座るとよい。これからのことを話さないとならない」
そして、ヘルナンデス様に言われ、僕もソファーに向かった。
部下と護衛の兵はソファーの後ろに立っていたから、僕もそっちの方がいいなんてと思ってしまったのだった。
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