第五十五話 何とか奉仕活動が終了
一方、僕が提案した奉仕活動に訪れた人から意見を集める件は順調に行われていた。
町の人も初めての経験だったので少し戸惑っていたが、軍の兵が話を聞いていたので安心していたのもあった。
中にはかなり重要な情報もあり、王妃様に直接情報がもたらされたものもあった。
直ぐに王城に情報が集められて、分類後に閣僚に渡されることになった。
「ケン君のアイディアは、かなり良い方向に進みそうよ。敢えて駄目出しをしてくれと言ったから、色々な意見が集まったわ」
治療の休憩の合間に、シーリアさんが僕に話しかけてくれた。
駄目ということは、改善する余地がたくさんあるということになる。
シーリアさんはとても優秀だから、直ぐにこの事に気が付いてくれた。
逆に「駄目出しばかりしやがって」という人もいるのも事実で、そういう事を気にする人はプライドが高い人が多いそうだ。
とはいえ、僕は普通に治療をしていればいいのでどんどんと町の人を治療した。
すると、ここで予想外の大きな事件が起きてしまった。
それは、大教会の周囲を警戒していた軍によってもたらされた。
「お、王太后様、王妃様、報告します。大教会近くの商店街で強盗が発生し、犯人は捕まりましたが店主親子が負傷しました。特に子どもの怪我が重く、大教会へ搬送中となります」
「何と酷いことを。店主への治療も、直ぐに行いましょう」
近くのパン屋さんでの事件を受け、王太后様は直ぐに兵に指示を出した。
そして、程なくして担架に乗せられた小さな男の子が運ばれてきた。
僕よりも小さな男の子が全身を切られて血塗れになっており、しかもタオルで止血はされているが左手首から先を失っていたのだ。
あまりの凄惨な状況に、メアリーさん、シンシアお姉様だけでなく多くの人が言葉を失っていた。
シーリアさんも駆けつけてきて、かなり心配そうに男の子を見ていた。
でも、僕はこのくらいの怪我なら国境の前線基地で沢山見てきた。
スラちゃんとシロちゃんも僕の側にやってきて、僕たちは直ぐに魔力を溜め始めた。
シュイン、シュイン、ぴかー!
「こ、これがケン君の全力の回復魔法……」
「物凄い魔法の光だわ!」
メアリーさんとシンシアお姉様は、男の子を中心に放たれている眩しい魔法の光に驚いていた。
とはいえ、今回は腕や足の再生をする程の魔力は必要としなかった。
「ふう、無事に完治できました。どうやら、男の子はお腹も悪かったみたいですね」
「いやいや、そうじゃないでしょうが……」
シーリアさんが苦笑しながら僕にツッコミを入れたが、失った左手の再生も含めて完璧に治療できた。
生活魔法で体も綺麗にしたし、これで一安心だ。
「ケン君の本気の回復魔法は、本当に凄いですわ。しかも、血だらけの男の子を見ても冷静に対応していました」
「私も、思わずビクッとしてしまいました。それほど酷い状況だったのに、ケンは直ぐに動いていたわ」
僕は、メアリーさんとシンシアお姉様から手放しで褒められてしまった。
町の人もとんでもないものを見たという反応だったが、直ぐに若い両親も運ばれてきたので治療を行った。
両親もかなりの出血があったが、自分のことよりも息子のことを心配していた。
「皆さん出血量が多いので、暫く安静にしないといけないです」
「うむ、直ぐに治療施設に運ぶとしよう。しかし、ケン君の治療の腕は見事じゃったぞ」
サイオン枢機卿様は、僕を褒めつつ兵とシスターに指示を出した。
お店も兵の捜索と警護を受けているらしく、これなら安全だとホッと一安心した。
「やはり、ケン君はイリス様の息子なのだと改めて感じましたわ。国境の前線基地はもっと凄惨だったと言っていましたが、きっとイリス様も負傷兵のために一生懸命に動いたはずだと思いますわ」
再び治療を再開したところで、メアリーさんが改めて僕と母親の繋がりを話した。
その後の治療でも、僕の母親を知っている町の人からは親子で素晴らしいと絶賛していた。
うん、ここまで褒められるととてもこそばゆい気持ちだ。
こうして無事に奉仕活動は終わり、大教会の応接室で話をすることになった。
「先ずは、こうして無事に奉仕活動が終わったことに感謝するわ。改めてケン君の力がクローズアップされたけど、多くの人の協力があってこそ成功したといえるわ」
王太后様の言うことは、僕も最もだと思った。
大教会の聖職者はもちろん、軍の兵や多くの貴族夫人や令嬢の活躍がなければ成功はしなかった。
僕たちは、奉仕活動の中の治療を頑張ったに過ぎなかった。
「もちろん、ケン君の回復魔法の力はとても大きいわ。更に、町の人から多くの意見を集めることにも寄与した。今までの奉仕活動を、一段階上のレベルに上げることができたわ。そして、今までは貴族主義勢力が文句を言える環境だったけど、もはやわがままは通用しなくなった。これもとても大きなことよ」
正直なところ、王家からの通達を守らないで豪華な服装で奉仕活動にやってきた貴族夫人や令嬢の考えがよく分からなかった。
あれでも抑えていたというのではなく、王太后様に問題ないと反論するレベルだもんね。
しかも、目的が王家に接近することで、奉仕活動をするのではないんだよね。
「次は、年末の奉仕活動になるわ。またケン君の力を借りることになるけど、その際にはお願いするわ」
王太后様は、僕にニコリとしながらお願いしてきた。
もちろん僕も頑張って治療しようと思うし、今日も多くの人に元気になってもらって良かったと思った。
今日はこれで終わりとなり、僕は大教会から屋敷に戻った。
スラちゃんだけでなく、チビスライムたちもとても活躍していた。
みんな、次回も頑張るぞと気合を入れていたのだった。
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