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毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第五十四話 少しトラブルを含んだ奉仕活動

 初級官僚試験に合格しても、僕はまだ未成年なのでやることはなかった。

 上級官僚試験の教科書がルーカス様やヘルナンデス様だけでなく、エレンお祖父様からも届き、僕は日々勉強をしていた。

 もちろん治療関係の依頼や魔法の勉強も続けており、シンシアお姉様と一緒に治療をすることも度々あった。

 そんな中、今日は年に数回行われる規模の大きな奉仕活動を大教会で行うことになった。

 王家主催で貴族の参加は任意となっていたが、実際にはかなりの貴族の関係者が参加していた。

 参加していないのは、何かしらの事情があるか貴族主義勢力なのが殆どだった。

 もちろん僕も奉仕活動に参加予定で、今回はスラちゃんだけでなくチビスライムたちも一緒についてくることになった。


「おはようございます。今日は、宜しくお願いします」

「ケン君、今日は宜しくね」


 大教会に到着して馬車から降りると、たまたま王太后様が僕たちの直ぐ近くにいた。

 王妃様も近くにいて、一緒に大教会に入った。

 直ぐに、この人が僕たちを出迎えてくれた。


「王太后様、王妃様、【蒼の治癒師】様。本日は、どうぞ宜しくお願いいたします」

「こちらこそ、宜しくお願いしますわ」


 サイオン枢機卿様と王太后様が、にこやかに挨拶をしていた。

 王妃様と僕にも握手をしてくれ、そして簡単に今日の奉仕活動の内容を教えてくれた。


「本日は、炊き出しと無料治療を行います。炊き出しはスープとパンを配布する予定となっております。無料治療は、回復魔法が使える聖職者に加えて、ケン君にもお願いする予定です」


 僕、スラちゃん、シロちゃんの出番だと、ふんすと気合を入れた。

 因みに、アクアちゃんとリーフちゃんは王太后様と王妃様の護衛をするぞとぴょーんと肩に飛び乗った。

 二匹とも魔法の力が上がっているし、なによりも魔法障壁が使えるのが大きい。

 もちろん、二人の護衛は近衛騎士が行うことになっている。

 あくまでも、二匹は補助的な護衛だ。


「皆さま、おはようございます」

「おはようございます」


 すると、今度はメアリーさんとシーリアさんが僕たちに声をかけてきた。

 二人とも、落ち着いたドレスに加えて過度な装飾はしていなかった。

 もちろん、本日の国民への奉仕活動を意識したものだった。

 あっ、そうだ。

 ついでなので、ちょっと気になったことを聞いてみよう。


「あの、今日は集まった人から何か意見を集めたりするんですか?」

「「「「「え?」」」」」


 あれ?

 僕の質問を聞いたこの場にいる偉い人全員が、僕を見たまま固まってしまった。

 何か、変なことでも言ってしまったのだろうか。

 すると、王妃様とサイオン枢機卿様が僕に返事をしてくれた。


「流石、官僚試験の勉強をしているだけあるわ。その案を採用しましょう」

「教会に対する要望も聞くとしよう。よく考えれば、民から意見を聞くとても良い機会だ」


 話を聞くと、どうも意見を聞くということは今までしてこなかったらしい。

 王妃様とサイオン枢機卿様は、直ぐに周囲にいる人に指示をした。


「あの、余計なことを言ってしまってすみません」

「ケン君が謝ることではないわ。とても良い提案は、ドンドンと言っていいのよ」

「それに、そのくらいなら直ぐに対応できるわよ。手の空いた兵にもやらせましょう」


 ペコリと頭を下げた僕に、メアリーさんとシーリアさんはニコリと笑いかけてくれた。

 他の人が頑張る分、僕たちも治療を頑張らないと。

 治療用のスペースに移動してメアリー様と共に準備をしていると、今度はシンシアお姉様が姿を現した。

 因みに、メアリーさんがスラちゃんと、シンシアお姉様がシロちゃんと共に治療をすることになった。

 僕としても、知らない人にスラちゃんたちを託すのは気が引けた。

 メアリーさん曰く、スラちゃんたちは特殊なスライムだから欲しがる人がいるという。

 僕も、そういう人には十分に気をつけないと。

 治療担当のシスターさんにも話を聞いたが、やることは普段治療施設などで行っている治療と変わりはなかった。

 ただ、人が多いので手早くというアドバイスを受けた。

 炊き出しは準備中だが治療は準備はできたので、早速始めることにした。


 シュイン、ぴかー!


「足だけでなく、背中も痛めていましたよ」

「これは凄い! 体中の痛いのがすっかり良くなった」


 魔力は節約しつつ、全快できるように治療を続けた。

 朝は年配の人が多く、加齢からくる病気や怪我が多かった。

 そんな中、母親のことを知っている年配の人が結構いた。

 そして、僕のことを母親そっくりだと言う人もいた。


「ケン君は真摯な態度で治療をしているのですから、イリス様と似ていると言われるのも至極当然ですわ」

「そうだね。ケンは、お姉様ととても似ていると思うわ。それに、治療の腕も抜群だしね」


 メアリーさんとシンシアお姉様も、町の人の意見に同意していた。

 母親が奉仕活動に熱心だったというのもあり、それだけ僕に母親の姿を重ねる人が多かったのでしょう。

 でも、僕が今やらなければいけないのは、目の前にたくさん並んでいる怪我人や病人だ。

 スラちゃんとシロちゃんもとても頑張っており、順調に治療は進んでいった。

 一方、炊き出しを配る方ではちょっとしたトラブルが起きていた。

 王太后様と王妃様との繋がりを得ようとした、貴族主義勢力の夫人や令嬢が来ていたのだ。

 しかし、奉仕活動として殆どの人が落ち着いた服装や装飾品を身に着けていたのに対して、やってきた貴族主義勢力の夫人と令嬢は豪華なドレスに派手な装飾品を身に着けていたのだ。


「今日は、国民に奉仕するための活動です。王城で行われる夜会ではないのです。私たちは、ある程度服装にも配慮をしないといけません」

「本日は、国民に服装で威圧をかけては決してならないのです。しかも、貴方たちは手伝うこともせずにただ突っ立っているだけです。いったい、何をしにここにきたのですか?」


 王太后様と王妃様の声が聞こえたのでちらりと見たが、珍しいくらいお怒りモードだった。

 しかし、肝心の貴族主義勢力の夫人と令嬢には、二人の言葉は届いていなかったみたいだ。


「貴族なのですから、貴族らしい服装をして当たり前です。それを、何故咎めるのですか?」


 幾ら王太后様や王妃様が懇切丁寧に説明しても、貴族主義勢力の夫人と令嬢はTPOと言うものを全く理解できていなかった。

 そして、貴族主義勢力の夫人と令嬢はぷりぷりと怒りながら帰っていった。

 ちなみに、過度な服装や装飾は控えるようにと参加者へ通達が出ていたはずだ。

 それを堂々と破るのだから、やはり貴族主義の者は面倒だと改めて思ったのだった。

読んでいただき、誠にありがとうございます

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