第五十三話 初級官僚試験合格発表
一週間後、初級官僚試験の合格発表日となった。
王城で発表されるので、僕は朝から身支度を整えていた。
スラちゃんも、一緒についていくと僕の頭の上にぴょんと乗っていた。
「ケン様は優秀ですし、勉強も沢山していたのできっと合格していますよ」
着替えを手伝ってくれたハンナおばさんだけでなく、他の使用人もかなり楽観視していた。
因みに、初級官僚試験に合格すればある程度給与は保証される。
結果として、使用人も安心して仕事ができるらしい。
僕の場合は既に国からの高額な報奨金が入っているため、成人するまで使用人の給与を払うのに困らないという。
でも、前世でお金で酷い目にあったため、僕は可能な限り治療などをしてお金を貯めようと思っていた。
さて、準備も整ったし馬車に乗って王城に向かわないと。
ザワザワザワ。
王城の正門付近に用意された結果発表のボードの前には、既にたくさんの受験生が集まっていた。
因みに、ボードはシートで覆われていて、合格者の番号は見えなかった。
予定では、あと十分後に合格者が発表されるという。
「ふふふ、遂に俺も官僚の仲間入りか」
すると、試験日に謎の悪態をついていた豪華な貴族服を着たものが、妙な自信を出しながら現れた。
関わってはいけないなと思い、僕はその貴族の男性から少しずつ離れた。
そして、いよいよ合格発表の時間になった。
「これから試験結果を発表する。合格者のみ掲示してある。試験結果に対する異議は認めない」
僕の部屋の試験監督が現れ、ごく普通の説明をした。
国の官僚試験なのだから、合否に不正があってはならない。
昔は貴族のコネで無理矢理押し込んだりもしたらしいが、今はかなり厳格に試験が行われている。
「それでは、発表する」
バッ。
合格者の掲示を隠していたシートが外された瞬間、様々な反応が一気に起きた。
合格した喜びを爆発させているものや、不合格で呆然としているものもいた。
「あっ、あった!」
そして、僕は自分の受験番号を直ぐに見つけることができた。
スラちゃんも、僕の頭の上でおめでとうとふりふりしていた。
思わずホッとしていると、さっきまで偉そうな態度を取っていた貴族が大声を上げた。
「おい、なんで俺の受験番号がないんだ! こんなのありえないぞ!」
自分が不合格と分かり、思いっきり不満をぶちまけていた。
そして、怒りの表情で試験監督を指さした。
「おい、これはどういうことだ! なんで俺の受験番号がないんだよ!」
「不合格だからに決まっている。単に、筆記試験も面接も合格ラインに届いていなかったからだ」
「なっ!?」
試験監督のド正論に、豪華な貴族服を着た貴族は思わずたじろいてしまった。
試験中は試験監督に注意されて縮こまっていたはずなのに、今はかなり元気だ。
そして、豪華な貴族服を着た貴族の周囲にいた受験生は、一斉に周りから離れていった。
すると、この人が姿を現したのです。
ザッ、ザッ。
「ふう。毎年のこととはいえ、試験結果にこうも異議を唱えるものがいるとはな」
「あっ、ルーカス様」
「「「「「ルーカス殿下!?」」」」」
部下を引き連れたルーカス様の登場に、受験生はかなり驚いていた。
ルーカス様は、そのまま不合格になった豪華な貴族服を着た貴族に歩み寄った。
「筆記試験は、複数人で採点を確認している。もちろん、面接結果もだ。その上で、閣僚会議を経て合格者が決まる」
「ぐっ……」
合否結果は、不正がないように厳格に決められている。
とはいえ、この辺りは公表されているので何も問題は無い。
確か、申込用紙にも書いてあったはずだ。
「たとえ不合格だろうと、来年頑張れば良いだけだ。不合格者への再受験を妨げることはない。何か悪さをしなければな」
「ぐっ、くそ!」
豪華な貴族服を着た貴族は、捨て台詞を吐いて王城から離れていった。
流石に、かなり酷い受験生だ。
その間に合格の手続きを済ませると、ルーカス様が僕に話しかけてきた。
「ケン君、お祖母様が呼んでいる。このまま向かってくれ」
受験生が騒ぎを起こしたのもあり、ルーカス様は軍の兵を呼び寄せてこのまま対応にあたるという。
ルーカス様はある程度この事態を想定していたらしく、既に準備を進めていたという。
僕とスラちゃんは、ルーカス様に改めて話をしてから王城に入っていった。
「ケン君、初級官僚試験合格おめでとう。よく頑張ったわ」
「真面目に勉強をしていたようだし、順当に合格したみたいだな」
応接室に案内されると、王太后様だけでなくヘルナンデス様も僕とスラちゃんを出迎えてくれた。
二人とも、どうやら僕の試験合格を知っていたようだ。
「その、ありがとうございます」
「うむ。今日は喜び、また明日から頑張らないといけない。何せ、本番は来年だからな」
「うん?」
僕は、ヘルナンデス様がニコリとしながら言ったことが直ぐに理解できなかった。
来年が本番って、何かあったっけ。
僕の横にいるスラちゃんも、何の事なのか分からなかった。
「来年、ケン君は上級官僚試験を受けてもらう。申込は、こちらでやっておくぞ」
あの、もう来年の試験の話ですか……
流石に、僕はガクリとしてしまった。
ヘルナンデス様曰く、僕なら余裕で初級官僚試験を突破できると思っていたらしい。
「あと、分かっているかもしれないが、騒いでいたのは貴族主義派のものだ。はっきり言って、勉強したのかというレベルだ。参考書を机の上に出していたのを聞くに、恐らく参考書ありで試験を受けられると思ったのだろう」
ヘルナンデス様からの追加情報は、何となく想像できていた。
というのも、筆記試験中にあの豪華な貴族服を着た貴族がブツブツと聞いてないぞと不満を言っていたからだ。
もしかしたら、貴族なのだからこの位融通しろということを言ってくるのかもしれない。
その対策として、ルーカス様が正門にいたのだろう。
「まあまあ、折角ケン君が試験に合格したのだからお祝いしてあげないとね」
ここで、王太后様が助け舟を出してくれた。
そして、お祝いとして昼食に招待してくれたのだった。
更に、屋敷に戻っても夕食時にお祝いをしてくれた。
今日一日は、色々な人からお祝いされていたのだった。
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