第五十二話 初級官僚試験当日
段々と暑い季節が迫ってきたある日、僕は早朝から王城に行っていた。
そして、僕の手には一枚の書類が握られていた。
「すみません、お願いします」
「はい、受付完了しました。第二試験室です」
僕は、受付の列に並んで手続きを済ませた。
実は、今日は初級官僚試験の試験日だった。
前から受けるように色々な人から言われていたが、申込開始よりも先に王家によって既に申込手続きをしてあるとは思わなかった。
もちろん毎日一生懸命勉強したし、この世界に関することが多かったのでとても役に立った。
初級官僚試験は筆記試験がメインで、後は簡単な面接を受けることになっている。
ただし、受験者が多いので面接は集団面接形式だ。
ガチャ。
「えーっと、席はここだね」
受付が早かった分、試験会場の部屋にはまだ誰もいなかった。
僕は、魔法袋から教科書を取り出して本番前最後の復習をした。
そのうちに受験者も集まりだし、席が埋まっていった。
受験者は一般市民から貴族までバラバラで、年齢も僕より少し年上から中年まで男女関係なかった。
全員が集中していて、部屋の中はしーんと静まり返っていた。
因みに、スラちゃんたちは屋敷でお留守番だ。
そんな中、変な受験者が部屋の中に入ってきたのだ。
「おーおー、揃いも揃ってバカ面晒していやがってな」
豪華な貴族服を着た青年が、部屋に入ってくるなり馬鹿なことを言ってきたのだ。
とはいえ、全員が自分のことに集中しており、一瞬視線を向けただけで直ぐに自分の教科書に視線を落とした。
そして、部屋にいるのは受験者だけではなかった。
「おい、そこ! 余計なことを話さないで、さっさと席に着くように。あまりにも騒ぐと、別室受験対応になる」
「は、はい……」
カンニングなどの不正防止のために、複数の兵が部屋の中にいた。
挑発するような言動を言った受験者は、その勢いはどこに行ったのかといったような反応で席に着いた。
僕たちを威嚇して落とそうとしたのか、はたまたただの自信過剰なものなのか。
取り敢えず、気にする必要はなさそうだ。
「これから試験を開始します。必要なもの以外は、全てしまうように」
試験監督が入室し、僕たちは一斉に荷物をカバンなどにしまった。
僕は魔法袋を持っているが、念のために全部バッグにしまった。
姿勢を正して待っていると、指示に従わない受験者がいたのです。
「そこの君、机の上に置いてある参考書をしまうように」
「えっ? 試験中は参考書を置いていいと聞いていて……」
「はあ? そんな訳あるか! 試験終了まで、参考書は没収とする」
受験時の注意にもバッチリと書いてあったのに、なんで参考書を読みながら受験できると思ったのだろうか。
これには、僕たちも思わず唖然としてしまった。
更に問題を起こした受験者が一番後ろの席というのもあり、兵がガッチリと両脇を固めて監視をしていた。
「それでは、改めて試験時の注意をする……」
ちょっとしたトラブルはあったが、こうして初級官僚試験はなんとか試験は始まったのだった。
僕も真剣に問題に向き合い、頑張って回答を書き込んでいった。
「それでは、試験を終了する。忘れ物をしないように退出するように」
試験後の集団面接も無事に終わり、僕はホッとしながら面接会場となった部屋を出た。
試験は面接も含めて全て午前中で終わり、後は結果発表を待つだけだ。
僕は試験後に王太后様のところに来るようにと言われていたので、そのまま王族のエリアがある上の階に向かった。
直ぐに応接室に案内され、部屋の中には王太后様だけでなくメアリーさんとシーリアさんも同席していた。
「ケン君、試験お疲れ様ね。手応えはどうだったかしら?」
「試験時間の半分で問題を解き終えたので、ずっと見直しをしていました。面接は、なんとか頑張りました」
「それは良かったわ。ケン君なら、きっと合格しているはずよ」
王太后様も、ニコリとしながら僕を褒めてくれた。
もちろん、メアリーさんとシーリアさんも僕を手放しで褒めていた。
あっ、そうだ。
あのことを伝えないと。
「試験前に、喧嘩腰で試験室に入ってきた貴族っぽい人がいました。全員集中していたし、直ぐに試験監督に注意されていました。更に、参考書を机の上に出したまま試験を受けようとして、追加で怒られていました」
「はあ、馬鹿なのがいたのね。毎年一人は勘違いした貴族の受験者がいるのよ」
王太后様曰く、貴族は特別だと思って受験するものがいるらしい。
もちろん自分の実力が試験結果に関わるので、カンニングなどはもってのほかだ。
「何にせよ、今日はお疲れ様ね。折角だから、私たちと一緒に昼食を食べましょう」
「そうですわ。私も、ケン君と一緒に食べたいですわ」
「私も久々に一緒に食べるわね。じゃあ、行きましょう」
王太后様だけでなくメアリーさんとシーリアさんにも誘われたので、僕も一緒に昼食を食べることにした。
とても美味しかった昼食なのだが、屋敷に帰るとスラちゃんたちが僕と一緒に昼食を食べられなくて拗ねていたのだった。
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