第五十一話 僕の当面のスケジュール
軍での魔法訓練は週に一回から二回で、その間は毎朝屋敷で魔法の訓練をしていた。
やっぱり、あの魔法兵が魔力制御に失敗して魔力暴発をした光景が脳裏に残っていた。
スラちゃんは、チビスライムだけでなく他のスライムにも魔力制御はとても大切だと教えていた。
そのおかげもあってか、チビスライムたちはとても熱心に魔法の訓練を行っていた。
僕も、スラちゃんたちに負けじと魔法の訓練を行った。
そんな中、僕の屋敷にヘルナンデス様が訪れた。
「毎日訓練を欠かさずこなしているのは、とても感心だ」
「やっぱり、あの魔法兵みたいになりたくないので。それに、今日は試験勉強をして過ごす予定でした」
「ほほう、もう官僚試験の勉強をしているのか」
前にヘルナンデス様から話があったが、少し前に勉強用の本を送ってくれた。
実家の書斎にあった本よりも勉強になることが沢山書いてあり、毎日無理のない範囲で勉強していた。
でも、今日は勉強の話とは別のようだ。
「ケン君に、二つ話をしないとならない。一つは、先日捕まえた魔法兵の件だ。奴は、人事担当を買収していた。その結果、本来の実力ではなることのない魔法兵への指導教官になったのだよ」
ヘルナンデス様の話を聞いて、僕はやっぱり何かあったんだと思ってしまった。
先日の訓練で見せていた実力では、到底魔法兵の指導教官にはなれないはずだと思っていた。
あってはならないことだと、ヘルナンデス様もかなり憤っていた。
関係者の処罰も行われるが、それは軍にお任せだ。
「もう一つの件が本題だ。定期的に問題ないと判断された貴族家へ行き、病人や怪我人の治療をして欲しい。緊急じゃなければ、週に一回のペースだ」
「思ったよりも、治療回数が少ないですね」
「重症となれば、大教会の治療施設に運ばれる。そうすれば、必ずケン君に治療依頼が行くだろう。自宅療養できるレベルのものを治療して欲しいということだ。もちろん、キチンとした依頼料を払うことになる」
王家も絡んでいるが、僕がタダ働きしないようにしてくれている。
教会や軍での治療も、キチンとお金をもらっている。
帝国との戦功の報奨金もあるが、僕としてはキチンとお金を稼いで使用人にお給料を払ってあげたいと思っていた。
「とはいえ、ケン君は勉強を中心に動くように調整する。ケン君を、無理に表舞台に連れ出した私たちにも責任はある」
「その、僕も父親と兄から自由になりたいと思っていたので。だから、ヘルナンデス様やルーカス様を頼っていました」
「子どもが親を頼るのは、本来なら当たり前のことだ。ケン君は、それができなかったのだよ」
ヘルナンデス様やルーカス様、それに王太后様、王妃様には本当に良くしてもらっている。
もちろん、エレンお祖父様やフリージアお祖母様も僕の祖父母として本当に良くしてくれた。
シンシアお姉様も、事あることに屋敷に来て僕を心配してくれた。
ハンナおばさんをはじめとする屋敷の使用人も、本当に良い人ばっかりだった。
前世でも僕は家族に恵まれなかったが、今は本当に僕のことを気にしてくれる人が増えたのだ。
「軍の訓練の前日に、治療をするようにする。治療が終わった後は軽いお茶くらいはあるが、ガッツリと拘束することはしない」
良い貴族しか治療対象としないらしいが、それでもやはり初めて会う人は緊張する。
こういった配慮は、僕としてもとても助かった。
話はこれで終わりらしく、ヘルナンデス様は仕事もあるので早々に屋敷を後にした。
実際に明日治療をするところがあるらしいが、シーリアさんの実家らしいので緊張しないで済みそうだ。
こうして、僕の当面のスケジュールが決まった。
軍の訓練と屋敷への出張治療は毎週一回行い、軍と大教会の治療施設での治療は依頼があった際に行うことにした。
勉強という名で王城から呼ばれることもあったが、王妃様や王太后様が僕を心配してくれているのもあった。
もちろん、エレンお祖父様、フリージアお祖母様、シンシアお姉様が屋敷に来たり、逆に屋敷に遊びに行ったりもした。
その間、ギャイン騎士爵家が僕や屋敷の使用人に接触することはなく、かなり平和な日々が進んで行った。
父親は特別訓練、兄も新兵として再教育を受けていて、僕に構うところではないのが実情だという。
ただ、やはりこのまま無事に済むはずはないだろうと思っているので、屋敷の警備もかなり厳重にしていた。
スラちゃんやチビスライムたちも、定期的に屋敷の中を巡回していた。
こうして、段々と季節は進んで行ったのだった。
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