第五十話 魔法訓練を怠った者の末路
そして、ローリー様が改めて僕たちに向き直った。
今日訓練する魔法兵は、全部で二十人。
ベテラン魔法兵などは、別の任務で動いているという。
「隣は気にせずに、訓練を始めましょう。先ずは、基本の魔力循環と魔力制御から始めます。皆さんがどのように行っているかチェックをしますので、明日からは修正した内容で行うようにして下さい」
「「「「「はい」」」」」
魔力循環と制御は、国境の前線基地でもオーフレア様とローリー様から指導を受けていた。
それに、毎日頑張って魔力循環と魔制御の訓練をしている。
「ケン君は、相変わらず綺麗な魔力循環をするわ。スラちゃんたちも、問題なさそうね」
ローリー様は、僕たちの魔力循環に合格してくれた。
チビスライムたちも、合格を貰ってぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねていた。
他の人を見ても、特に問題のある人はいないようだ。
「おい、なんだその魔力循環は。腹を起点に、全身に魔力を流さないと駄目だろうが!」
「は、はい……」
一方、オーフレア様と一緒に訓練をしている魔法兵は、魔力循環の基礎から指摘されていた。
そして、魔力制御に関しても基礎からやり直しするレベルだった。
間違いなく、セレナさんとユリアさんの方が魔力制御も魔力循環も上手だと思う。
さて、僕たちは別の訓練を行うことになった。
「じゃあ、次は的に向けてバレット系の魔法を放ちます。でも、的を壊さないように魔力を弱く制御して放ちます。大火力魔法と比較し、敢えて弱くするのはかなり難しいですよ」
ローリー様から順番に的に向けて魔法を放つように指示があったが、誰からやるのだろうか。
すると、ローリー様が僕にニコリとしたのだ。
「折角だから、ケン君とスラちゃんたちにやってもらいましょう」
有無を言わせない笑顔に、僕たちは頷くことしかできなかった。
えっと、出来るだけ魔力を弱くして、でも的に届くように放たないと。
今いる場所から的まで、だいたい十メートルくらいは距離があるぞ。
シュイン、バシン、バシン。
コンコン、コンコン。
僕だけでなく、スラちゃんたちも最小限の魔力で魔法を放った。
スラちゃんは流石の制御力だが、残念ながらチビスライムたちが放ったバレット系魔法は弱過ぎて的に届かなかったりした。
「はい、いいですよ。チビスライムたちの魔法が、とても良い例になりました。皆さんの実力であれば、しっかりと魔力制御ができます。後は、勇気を持って的に当てることです」
つまり、的を壊さないように慎重になり過ぎないことも重要らしい。
チビスライムたちはしょぼーんとしちゃったが、ローリー様の言うことももっともだった。
チビスライムたちは、これから訓練を頑張ればきっと魔力制御も上手になるはずだ。
セレナさんたちも、最初は的を外したりしたが段々と要領を覚えていった。
僕に突っかかったモヒカン頭の魔法兵も、中々上手に的にバレット系魔法を当てていた。
二巡目に入ると、チビスライムたちも上手に的に当てられるようになった。
後は、もっと弱く当てられるように頑張らないとね。
ヒューン、ポチャ。
「おいおい、流石に的の半分も飛ばないのは話にならないぞ。ふざけているにも程があるな」
「ぐっ、くそ……」
そして、オーフレア様の指導を受けている魔法兵は、散々な結果だった。
どうして指導教官をしていたのかというレベルで、流石にオーフレア様も困惑していた。
すると、今度はこの人が姿を現したのです。
「うむ、大半は順調に訓練を積んでいるな」
「「「「「ニース将軍様!」」」」」
ヘルナンデス様が部下を引き連れて訓練場に姿を現し、魔法兵は一斉に敬礼をしていた。
僕たちも敬礼の真似をしていたが、どうやらヘルナンデス様の目的は僕たちではなかったみたいだ。
「拘束命令書に従い、その魔法兵を捕縛しろ!」
「「「「「はっ」」」」」
なんと、ヘルナンデス様が拘束令状を出し、オーフレア様の訓練を受けていた魔法兵の捕縛を部下に命じたのです。
しかも、魔法使い専用の拘束魔導具まで使っていた。
万が一魔法を放たないようにするものだが、この拘束魔導具を使うのは余程のことらしい。
「がっ、く、くそー!」
一方、魔法兵は拘束から逃れようと大暴れしていた。
そして、あまり良くない事が起きてしまったのだ。
シュイーーーン、ズドーーーン!
「ギャーーー!」
ガクッ。
なんと魔法兵が無理矢理魔法を放とうとして、身体が光り輝いたかと思ったら魔力が暴発してしまったのだ。
ヘルナンデス様の部下は軽く吹き飛ばされて尻もちをつく程度だったが、魔法兵の体からはプスプスと煙が上がって白目をむいていたのだ。
突然のことに、僕たちは呆然としてしまった。
しかし、ヘルナンデス様は動じずに直ぐに指示を出した。
「ケン君、最低限の治療を。全快させなくてよい」
「はっ、はい!」
僕は、直ぐに魔法兵に簡単に治療をした。
そして、改めてヘルナンデス様の部下が気絶している魔法兵を拘束し担架に乗せて運んでいった。
「今は、罪に問われるような不正があったとだけ言っておこう。皆は訓練に精進し、あの様な無様な姿を晒さないように」
「「「「「は、はい!」」」」」
僕たちにそう訓示をすると、ヘルナンデス様は部下とともに事務棟に戻っていった。
どうやらオーフレア様とローリー様は事情を知っていたみたいだが、もちろんこの場では話すことはなかった。
「魔力制御を怠ると、あの様な魔力暴発が起こる。自分の中にある魔力を確実に扱うためには、コツコツと日々の訓練を重ねていかなければならないぞ」
「「「「「はい」」」」」
オーフレア様の説明に、僕たちは頷きながら返事をした。
それほど、目の前で魔力制御に失敗した魔法兵の姿は衝撃的だった。
その後の訓練は、より一層熱を帯びたのだった。
こうして、午前中だけだったがかなり集中して訓練をすることができた。
セレナさんたちも、捕まった魔法兵みたいになってはいけないと思っていた。
もちろん、僕たちももっと訓練を頑張ろうと思ったのだった。
僕たちは午前中に屋敷に戻ることになり、セレナさんたちに挨拶をして軍の馬車で屋敷に送ってもらった。
そして、屋敷の一角にスラちゃんが土魔法で的を作り、みんなで魔法の練習をするようになったのだった。
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