第四十四話 久々の軍の施設での治療
翌朝、僕とスラちゃんは身支度を整えて朝食を食べて馬車に乗り込んだ。
王都に戻ってきた時はそのまま王城に行ったし、軍の施設に行くのは本当に久々だ。
みんな元気でやっているかなと思いながら、僕たちを乗せた馬車は軍の施設に到着した。
「シーリアさん、久しぶりで……」
ガバッ。
「ケン君、本当に無事で良かったわ!」
治療施設前に馬車が止まり、馬車から降りて出迎えてくれたシーリアさんに近づいた時だった。
シーリアさんが、僕のことを思いっきり抱き締めてきたのだ。
突然のことでビックリしちゃったが、それだけ僕のことを心配してくれたのだと分かった。
そのまま、一緒に治療施設へと向かった。
因みに乗ってきた馬車はそのまま屋敷に戻り、帰りは軍の馬車が送ってくれることになった。
「ケン君、無事だったのね!」
「本当に良かったわよ。こうして顔を見せてくれるだけでもありがたいわ」
「わっぷ!」
治療施設に入ると、今度は調理場のおばちゃんが僕を待っていた。
抱きしめたり頭を撫でたりしてきたが、おばちゃんたちも僕のことをとても心配してくれたんだ。
元気な姿を見れてとても嬉しいと言ってくれて、僕もとても嬉しくなった。
僕の無事を待っていてくれて、本当にありがたい。
調理場のおばちゃんと別れ、今度こそお仕事を始めることにした。
シュイン、ぴかー!
「いやあ、ケン君もスラちゃんも格段に腕を上げているわね」
僕とスラちゃんが次々と負傷兵を治療していくと、シーリアさんはかなり驚いた表情をしていた。
「国境の前線基地にいた時は、たくさんの負傷兵を治療しました。このくらいなら、全然へっちゃらです」
「半年で凄腕の治癒師になったのね。いやはや、かなり凄いわ」
毎日の訓練の成果もあって、治療に必要な魔力消費量も減ってきている。
効率よく治療できれば、それだけ多くの人を治療できる。
こうして、休憩も取りながら午前中だけでかなり多くの負傷兵を治療した。
午後の早い段階で大部屋に入院している負傷兵への治療を終えられそうだけど、無理はしないようにしないと。
ちょうど昼食の時間になったので、シーリアさんとスラちゃんと一緒に調理場に向かった。
「もぐもぐ、やっぱりとっても美味しいです」
「あら、嬉しいことを言ってくれるじゃない」
調理場のおばちゃんは、僕の感想を聞いてとても喜んでくれた。
実際に美味しいのは間違いないし、スラちゃんは既に完食していた。
すると、シーリアさんはこんなことを聞いてきたのだ。
「ケン君は貴族当主にもなったけど、この後はどうやって過ごす予定なの?」
「治療などの依頼を出すと、陛下が言っていました。勉強を頑張って、初級官僚試験に合格するようにとも言われています」
「まあケン君はまだ小さいし、幾ら頭が良くても勉強はしないとね。ケン君の実力なら、初級官僚試験なんて余裕で突破するでしょうね」
色々な人が僕のことを気遣ってくれるが、確かに今は実家の書斎で読んだ本だけの知識なんだよなあ。
魔法もそうだけど、正しい知識を得ないと前世の両親や父親や兄みたいになってしまう。
それだけは、絶対に避けないとならない。
「ケン君は、相手を思いやる心があるから。だから、ギャイン騎士爵みたいにはならないわ」
シーリアさんは、ニコッとしながら僕に話してくれた。
僕を傷つけても罪悪感の全くない、父親、兄、そして屋敷の使用人は、人としてかなり特殊な部類に入るという。
まともな人なら、近づいたり相手をしたくないでしょうね。
「正直なところ、贅沢派といわれる面々が大人しくなってとても良いと感じている人はとても多いわ。でも、軍事法廷にかけられても多分一定期間の謹慎と配置変更で落ち着くはずよ」
確かに、父親や兄が言ったことは士気に影響があったとはいえ実害は出ていない。
でも、少なくとも今年いっぱいは大人しくしているはずだと言っていた。
僕としてはずっと大人しくして欲しいけど、あの父親と兄の性格だと多分無理なんじゃないかなと思ってしまった。
こんな雑談をしつつ、昼食を食べ終えた。
午後も予定通り治療を進め、大部屋だけでなく個室に入院している重傷者の治療も終えることができた。
「ふう、今日は指の再生くらいだったので、魔力もまだ大丈夫です」
「いや、指の再生を簡単とは言わないわよ……」
無事に治療を終えてとても満足な僕とスラちゃんを、シーリアさんは苦笑しながら見ていた。
何にせよ、今日の治療はこれで終了だ。
予定通り軍の馬車で屋敷に送ってくれるのだが、帰りがけにシーリアさんがこんなことを言ってきた。
「そうそう、私も明日の慰労会に参加するわ。また、明日会いましょう」
シーリアさんは軍人だし、王都側の調整をしていたはずだ。
それに、こうして治療でも色々と動いているし、呼ばれても問題ないね。
僕とスラちゃんは、シーリアさんに手を振ってから馬車に乗り込んだ。
明日は軍人も呼ばれるみたいだし、僕も知り合いが多くてある意味ホッとしそうだ。
因みに、屋敷に戻ったら御用商人がちょうど到着し、サイズ直しをした既製品の子ども用貴族服を持ってきてくれた。
僕としては、ずっと着ていた子ども用軍服で十分だと思ったのだった。
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