第四十一話 母方の祖父母
「失礼します、お客様がお見えになりました」
全ての部屋を案内された所で、使用人が僕たちに声をかけてきた。
お客様っていったい誰なんだろうと思いつつ、応接室に向かった。
「どうやら、到着した様ね」
「その様ですな」
どうやら、王太后様とルーカス様は誰が来たのか知っているみたいだ。
急いで応接室に向かうと、そこには初老の男女が僕たちを待っていた。
しかも、女性は緑髪のセミロングなのだけど男性は僕と同じ髪色をしていた。
更に、若い男女も同席していた。
ちょっとビックリしながらだけど、自己紹介をすることにした。
「えっと、ケン・アスターです。午前中の謁見で男爵を拝命しました」
「エレン・ノーム準男爵だ。そして、妻のフリージアだ。ギャイン騎士爵家に嫁いだイリスの両親にあたる。あと、私の息子夫婦のゴライオンとセリナだ」
あっ、何となくそう思ったんだよね。
この人たちは、僕の母方の祖父母になるんだ。
息子さんは、僕のいとこ……じゃなくて叔父さんになるのかな?
すると、フリージアお祖母様が王太后様に促されながら僕の方に近づいた。
ギュッ。
「ああ、まるで娘が目の前にいるようだわ。娘の命が、こうして繋がっているのね……」
母親が亡くなった時、色々なことがあったのだと聞いていた。
だから、きっと色々な思いが交錯していたのだろう。
王太后様とセリナさんも、僕を抱き締めるフリージアお祖母様を見てハンカチで目尻を押さえていた。
僕も、目を閉じてフリージアお祖母様をギュッと抱き返したのだった。
「言い訳になるかもしれないが、イリスは私たちの先代が残した借金のためにギャイン騎士爵に嫁入りしたものなのよ。なのに、イリスはかなり酷い扱いを受けていた上に、ケンが産まれた後に碌も治療をせずに亡くなったわ。私は、それが許せずにいたのだ。ギャイン騎士爵にも、嫁入りを許可した私自身にも」
実は、ギャイン騎士爵は約束したお金を払うことはなく、約束不履行状態だという。
なお、その後エレンお祖父様は財務関係の官僚になり、徐々に借金を返したという。
「恐らくだけど、ギャイン騎士爵は美人で有名だったイリスさんを手に入れる為に嘘の嫁入り依頼をしたのだと考えられるわ。そして、例の愛人の件も絡んでいたのでしょう」
王太后様も難しい表情でいた。
とはいえ、母親の唯一の子どもである僕が独立したので、これからはギャイン騎士爵に気を使わなくていいという。
そこで、王太后様が面会の仲介をしてくれたのだ。
「僕も、実家では良い思い出が全くありません。これからは、エレンお祖父様とフリージアお祖母様を、本当の家族だと思うようにします」
「ええ、是非そうして頂戴。私も、優秀な孫が出来て本当に嬉しいわ」
フリージアお祖母様は、またちょっと涙を流しながらもニコリと笑ってくれた。
いきなりの貴族当主でかなり不安だったが、これからは時々祖父母が様子を見に来てくれることになった。
本当にありがたいことだ。
因みに、面会希望の貴族は全て王族に許可を取る必要がある。
残念ながら、祖父母では爵位の差で圧力をかけられることがあるという。
「そうそう、ギャイン騎士爵家の者は使用人も含めて面会禁止ね。余程のことがない限り、屋敷にも入れないことにしているわ」
「僕もその方が良いと思います。特に、父親や兄から今まで育てた分のお金を寄越せとか言われそうです」
「ケン君は、本当に父親や兄を良く見ているわ。なので、後で王命で通知を出して釘を刺すわ」
王太后様も、父親や兄は貴族としてありえないと思っていた。
何にせよ、父親と兄を見なくて済むのは大きい。
「ケン、明日は私も一緒に大教会へ行くわ。貴方のお母さんのお墓に、報告しに行かないとね」
フリージアお祖母様の話に、僕はコクリと頷いた。
恐らく、初めて母親と会うことになるんだ。
こうして、祖父母との面会も無事に終わり、一緒に帰ることになった王太后様とルーカス様を玄関で見送った。
なお、僕が自由に屋敷に行っていいのは、現在のところ祖父母の家とヘルナンデス様の所のみとなった。
まだ貴族の知り合いも少ないし、こればっかりは仕方ないかもね。
「ケン様、これから御用商人が来ます。貴族用の服などを準備しなければなりませんからね」
そして、ハンナおばさんがニコリとしながら僕に話しかけてきた。
えっと、もしかして着せ替え人形になったりして……
僕は、思わずガクリとしてしまったのだった。
因みに、スラちゃんは他のスライムと共に屋敷内の確認をすると動き出してしまった。
御用商人が来ると時間が長く取られるだろうと、予想したのでしょう。
こうして、僕の新しい屋敷暮らしが始まったのだった。
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