第四十話 下賜された屋敷とハンナおばさんとの再会
久々に王家の食堂で昼食を食べ、準備が整ったところで王太后様と共に馬車に乗って下賜される屋敷に向かうことになった。
しかも、午後はやることはないとルーカス様までついてきてくれた。
かなり心強いと思いながら、馬車の窓から見える景色を眺めていた。
すると、王城を出てから程なくして大きな屋敷の前に馬車が止まった。
「えっ、この屋敷ですか? とっても綺麗なお庭に、大きな屋敷が建っていますよ?」
「ええ、この屋敷で問題ないわ。さあ、屋敷の中に入るわよ」
想像以上に凄い屋敷が目の前にどーんと建っていて、僕もスラちゃんもかなりビックリしてしまった。
庭は緑豊かで装飾も最低限に抑えられており、しかも中々の大きさの池まであった。
屋敷は実家の何倍も大きく、しかも三階建てだ。
前世の価値にしたら、とんでもない金額だということもよく分かる。
そして、僕たちを乗せた馬車は玄関前に到着した。
馬車から降りると、そこにはまさかの人が僕を出迎えてくれた。
「は、ハンナおばさん!?」
「ああ、本当に、本当に坊やなのね!」
ガバッ。
なんと、ギャイン騎士爵家にいるはずのハンナおばさんが、涙ながらに僕のことを抱き締めていた。
王太后様も、僕を抱き締めているハンナおばさんを涙ながらにみていた。
僕はというと、完全に予想外のことでちょっと理解が追いついていなかった。
とはいえ、ハンナおばさんが僕のことをとても心配してくれていたのは間違いなかった。
自然と、僕もハンナおばさんを抱き返していた。
「ハンナおばさん、どうしてこの屋敷に?」
「坊やが屋敷から追い出されてから、暫くして屋敷を辞めたのよ。以前から騎士爵様のやり方はおかしいと思っていたけど、異常だと改めて思ったのよ。そうしたら、坊やは貴族になるとこの屋敷に勤めるように知り合いから声がかかったのよ」
ハンナおばさん曰く、ギャイン騎士爵家の屋敷に勤めている使用人はハンナおばさん以外辞めていないという。
使用人は、僕が追い出されて当然だと思っていたらしい。
ところが、僕が活躍したという噂が広がって風向きが変わってきた。
現在は、ぽつりぽつりと使用人が辞めているという。
「因みに、ケン君の噂が一気に広まったのはここ一ヶ月程よ。でも、ギャイン騎士爵は噂の人物がケン君だと気が付かなかったわ」
王太后様曰く、本当に噂は自然発生的だったという。
恐らく、屋敷を辞めた使用人は噂の人物は僕だと気がついたみたいだ。
とはいえ、ギャイン騎士爵家で働いていたので、同じ贅沢派の貴族以外に使用人として勤めることはできなかった。
僕をイジメていたという噂も広まっているので、使用人以外の職に就いたものもいるという。
今ギャイン騎士爵家に残っている使用人は、父親、兄とズブズブの関係なのだろう。
「もう、他人の家のことは気にしない方が良いわよ。さあ、屋敷の使用人が集まっているから挨拶をしましょう」
王太后様に強引に切り替えられたが、確かにもう実家を気にする必要はない。
そして、玄関が開くと大勢の使用人が僕たちを出迎えてくれた。
「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」」
す、凄い。
これが本当の使用人の所作なんだ。
僕をイジメていた、実家の使用人とは全く違うね。
えっと、みんなに挨拶をしないと。
「あの、男爵になりました、ケン・アスターです。そのその、宜しくお願いします」
「「「「「ご主人様、宜しくお願いいたします」」」」」
僕がペコリと頭を下げながら挨拶をすると、また使用人が挨拶をしてくれた。
礼儀作法も完璧で、物凄くレベルが高いと感じたのだった。
「ふふ、とても初々しくて良いわね。これから、徐々に屋敷の主人として勉強していきましょう」
「私ももう少ししたら新しい貴族家を立てるが、その際の参考にしてもらおう」
王太后様もルーカス様も、かなりドキドキしている僕のことをニコリと見つめていた。
一旦応接室に移動し、休憩を取ることにした。
うん、色々ありすぎて頭の中が混乱しているよ。
でも、甘いお菓子がとても美味しい……
「少し休んだら、屋敷を案内してもらいましょう」
王太后様の提案もあり、お茶を飲んで早速屋敷見学となった。
最初に、何故か庭の池を見て欲しいということで早速移動することに。
すると、とてもビックリする光景が広がっていた。
「あっ、スライムです! それに、もしかして実家の池にいたお魚ですか?」
「ふふ、そうよ。ケン君の屋敷ができる時に、スライムが水魔法を使って屋敷の水ごと運んで来たのよ」
実は、今日の午前中行われた謁見の最中に実家に軍が行って念のために荷物確認をしていたという。
その際に、話を聞いていたスライムが軍と一緒にこの屋敷についてきたらしい。
しかも、スライムはずっとお魚の世話もしてくれた。
本当に、感謝しかない。
スラちゃんも、池にいるスラちゃんにありがとうってお礼をしていた。
そして、なんと実家にいた鳥やリスなども新しい屋敷にやってきたという。
家のものに石を投げつけられたりしていたらしく、現在実家には害虫などしかいない。
実家の使用人は、動物がいなくなっても全然気にしないですね。
改めて、屋敷の中に移動することになった。
「あの、この豪華な調度品はどうしたんですか?」
「これはね、王城の倉庫にあって全く使われていないものを持ってきたのよ。折角だから使ってあげないとね。ルーカスの分はキチンとあるから、気にしなくていいわ」
王太后様の言い方だと、屋敷内にある調度品は王城にあったものですよね。
流石に最低限のものしかなかったが、それでも凄く価値のある物だと分かった。
玄関ホールもとても広いし、清掃も行き届いていた。
客室や食堂も案内されたが、これまたとても良い作りだった。
ガチャ。
「ここが、ご主人様の部屋になります」
住居スペースもとても良い作りで、僕の部屋には魔導具式のお風呂やトイレに応接室まであった。
ベッドもとても広いし、何人も一緒に寝られそうだ。
「今はケン君一人の屋敷だけど、きっと直ぐに賑やかになるはずよ」
「ケン君の知り合いが遊びにくるだろう。だが、お茶会などは王家を通すように」
王太后様よりも、ルーカス様の指摘がとても気になった。
僕に擦り寄ってくる貴族などはいるので、とにかく気をつけないと。
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