第三十九話 応接室でお喋り
暫く強制退場させられた貴族の怒号が謁見の間に響いていたが、程なくして静かになった。
陛下は、一呼吸おいて改めて話し始めた。
「さて、これからの話をしよう。三日後の夕方より、関係者を集めた慰労会を開催する。この国を守った勇敢な者を招待する。また、帝国と停戦合意しただけで和平を結んだ訳ではない。戦時体制はこれで終了だが、今後も引き続き国境警備の強化を図る。ここにいる面々も、頭に入れておくように」
「「「「「畏まりました」」」」」
これで謁見は終了になるそうで、陛下は玉座から立ち上がり王族と共に袖口へ退場した。
謁見の間の扉も開き、貴族が退場すると共に一気に緊張した空気が緩んだ。
「き、緊張して疲れました……」
「そうか? その様には見えなかったぞ」
ヘルナンデス様は、ニヤリとしながら僕に話しかけてきた。
絶対に分かっていて、その返事をしていますね。
「さて、ケン君も言いたいことがあるだろうし応接室に移動しよう。王家のものが揃っているぞ」
ルーカス様にも気にされながら、僕とスラちゃんはヘルナンデス様の後をついていった。
周りにいる貴族が僕を凄い視線で見てくるが、特に気にしないようにしよう。
こうして、謁見の間から近くにある応接室に移動した。
コンコン、ガチャ。
「「失礼します」」
「失礼、します……」
ヘルナンデス様とルーカス様の後をついて応接室に入ると、そこには満面の笑みの王家の方々が待っていた。
特に、王太后様はとても良い表情で僕を見ていた。
「三人とも、疲れているだろう。先ずは、座ってゆっくりと休むように」
「「「はい」」」
陛下に言われて、僕たちは席に座ろうとした。
でも、座る前にあのことを話さないと。
僕は、立ったまま陛下に頭を下げた。
「陛下、父と兄がご迷惑をおかけしました。本当にごめんなさい」
「ケンよ、そなたが謝る必要はない。報いを受けるものが謝らないといけないのだ。それよりも、ケンも座るといい」
陛下は、お菓子をむしゃむしゃと食べながら僕に座るように促した。
座らないと話が進まないので、僕も座ってお茶を飲んだ。
やっぱり、パレードみたいなものもあって流石に疲れていたみたいだ。
少し落ち着いたところで、陛下にある質問をした。
「あの、僕が男爵になっても良いんですか?」
「何も問題はない。母上とヘルナンデスを治療した時点で、最低でも騎士爵は確定していた。それに、あれだけの功績を挙げたのだからな。交代で王都に戻った兵からも、ケンは良くやっていたと褒めていた」
陛下は、またまたお菓子をむしゃむしゃと食べながら答えてくれた。
国境で一緒だったみんなが、僕のことを褒めてくれたんだ。
後で、お礼を言わないと駄目だ。
「それに、ケンの母親の件も使って大活躍だと噂を流したのだ。それなりに配慮する。噂といっても、実際には過小評価した内容だ」
僕は、まだ多くの人を治療したという噂しか聞いていなかった。
他にどんな噂が流れているのか、かなり気になってしまった。
「ケンはまだ未成年だ、戦地に向かわせた余の罪も大きい。当面は、勉強して治療などの依頼を受けることになる。あと、ケンは体もかなり小さい。初めて会った頃よりも大きくはなったが、それでもまだまだだ」
三歳から六歳まではあまり良い食事をしていなかったので、その影響がかなり出ているという。
そう考えると、前線基地での食事はとても美味しかったなぁ。
すると、ヘルナンデス様がとんでもないことを言ってきた。
「ケン君はとても頭がいいが、もう少し頑張ってもらおう。後で、初級官僚試験の教科書を屋敷に送る。夏前に試験があるが、ケン君なら半年もあれば勉強は十分だな」
いやいやいや、ヘルナンデス様何を言っているんですか。
僕に、初級官僚試験は難しいと思いますよ。
他の人も、僕なら余裕だとうんうんと頷かないで下さい。
そして、今度は下賜される屋敷の話になった。
「ちょうど、誰も使っていない伯爵家の屋敷があるのよ。ケン君は出世間違いなしだし、そのくらいはあってもいいと思っているわ」
「因みに、家具や使用人などは全て揃えているわ。これは、お義母様を助けてくれたお礼もあるわ」
王太后様、王妃様、僕は実家くらいの小さな屋敷で十分です。
伯爵家レベルの屋敷って、どれくらい大きいのでしょうか……
そういえば、国境への行き帰りで立ち寄ったダッシュ伯爵家の屋敷はとても大きかった。
……うん、これ以上気にしては駄目だ。
「あと、御用商人は王家と同じところにしてあるわ。信用できるところにしておかないといけないのよ」
「ケン君はまだ幼いからと、お金目当ての商会が近づいてくる可能性があるわ」
王太后様と王妃様の懸念は、僕もよく分かっていた。
前世の親はとにかくお金使いが酷かったし、お金を見せびらかしては絶対にいけない。
更に、父親みたいな貴族が近づいてくる可能性も否定できなかった。
「ギャイン騎士爵家にケン君の荷物はないから、昼食後に私も一緒に屋敷に行くわよ」
王太后様、とてもキラキラした目で僕を見ていますね。
それだけ、楽しみにしていたみたいだ。
「あと、ケン君の予定を伝えておくわ。明日は、私とリリアーナと共に教会に行くわ。神に戦争終了の報告をするのよ。その際に、きっとイリスさんの話も聞くことができるわ」
僕は母親の記憶が全く無いので、こういうことはとても助かった。
よく考えると、父親から母親の話は全く出なかったよなあ。
続いて、ルーカス様が更に予定を話してくれた。
「明後日は、軍での治療だ。私たちが王都に行っている間に、また訓練で怪我をしたものがいる。本当に情けないことだ」
ルーカス様は、情けないと思わず溜息をついていた。
でも、軍の訓練はとても激しいものだし、仕方ないと思う。
父親や兄が、軍の訓練に耐えられるはずはないと思っているが。
「夜会の日は、朝から王城に来るように。よく勉強もできるだろう」
陛下、ニヤリとしながら言わないで下さい。
絶対に、誰かの手伝いが待っているはずです。
こうして、僕の夜会までの日程が決まった。
やることは沢山あるが、やっぱり実家にいた時と比べるとずっと自由な生活が待っていた。
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