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毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第三十八話 謁見

「ルーカス殿下、ニース侯爵、ギャイン騎士爵家ケンの入場になります」


 ギギギギ……


 わあ!

 豪華な扉を眺めていたら、突然係の人に呼ばれてしまった。

 すると、目の前の扉が重厚な音を立てながらゆっくりと開いた。

 扉が完全に開くと、目の前に敷かれた絨毯が目についた。

 その絨毯の両脇には多くの貴族が集まっており、僕たちを見ると大きな拍手を送ってきた。

 その中を、ヘルナンデス様、ルーカス様に続いて歩いていった。

 絨毯の切れ目の先は一段高くなっており、玉座も置かれていた。

 玉座には豪華な威厳のある服を着た陛下が座っており、王太子様、王妃様、王太后様も玉座の横に並んでいた。

 そして、ヘルナンデス様とルーカス様が膝をついたのに続き、僕も膝をついた。

 スラちゃんも、僕の横にちょこんといた。

 その瞬間拍手がピタリと止み、周囲にいる貴族も臣下の礼を取った。


「一同、面を上げよ」


 陛下の威厳のある声で、僕たちは一斉に顔を上げた。

 そして、陛下が軽く頷くとヘルナンデス様が話し始めた。


「帝国と停戦協定を結び、只今王都に到着いたしました」

「無事の帰還、大義である。常に報告は受けていたが、こうして実際に顔を見ると安心するものがある」


 ヘルナンデス様の報告を聞き、陛下も満足そうに頷いた。

 そして、今度はルーカス様に声をかけた。


「ルーカスも、無事に帰ってきて何よりだ。かなり激しい戦闘があったそうだが、こうして無事な姿を見せて何よりだ」

「この上ない言葉に、恐悦至極でございます」


 陛下も、ルーカス様が元気に帰ってきてとても嬉しいんだ。

 表情はとても威厳のあるものだが、声は優しかった。


「そして、ケンよ。大活躍だったと聞いておる。その回復魔法で瀕死の重傷だった我が弟を完璧に治療し、多くの負傷兵を救った。更に、土魔法で前線基地の住環境を整え、兵の士気も高めた。王国軍が帝国軍を撃破した戦いにおいては、極めて重要な戦果を上げた。その活躍は、決して誇張されたものではない」

「「「「「おおー」」」」」


 あ、あのあの、陛下がドヤ顔で凄いことを言っているのは気のせいではないでしょうか。

 僕の前にいるヘルナンデス様とルーカス様も、何だかドヤ顔している雰囲気があった。

 周りにいる貴族から、感嘆の声が上がっていた。


「今回の戦争では、帝国軍の奇襲を防ぎきった司令官ゴードンと勇敢な王国軍兵士の活躍もとても大きい功績だと言えよう。しかし、一番の功績者は間違いなくケンだ。ケンの回復魔法がなければ、前線は崩壊していた可能性も否定できない。戦闘を圧倒的有利に進めたのも、ケンの功績と言えよう」


 うう、間違いなく僕とスラちゃんのバレット系魔法の影響で帝国軍の武器庫が破壊されたことを言っているんだ。

 陛下も詳しくは言えないので誤魔化していたが、僕とスラちゃんとしては魔法の訓練が大失敗したと思っていた。

 そして、陛下は僕のことをニヤリと何か企んでいる表情で見た。

 あっ、嫌な予感がする。


「功績を挙げたものに対して、褒美をやらない訳にはいかない。それが、僅か今年七歳になる幼い子でもだ。もちろん、他に功績を挙げたものにも、相応の褒美を与える」


 陛下は、真面目な表情で僕の目を見ていた。

 僕も、陛下から目を離せなかった。

 そして、予想外の褒美をもらうことになった。


「ギャイン騎士爵家ケンを法衣男爵とし、新たにアスター姓を与え分離独立とする。また、相応の屋敷を与える事とする」

「あっ、ありがとうございます……」

「うむ、ケンが賢い子で良かった。これからも、その類まれなる魔法で積極的に国民に奉仕する様に」


 陛下は、僕が頭を下げると満足そうにした。

 いやいや、実家から自由になりたいなと言ったけど、まさか分離独立して新たな貴族家を立ち上げるなんて思わなかった。

 ただ、ヘルナンデス様とルーカス様はこのくらいは当然だという表情を見せていた。

 そして、ここで更に予想外の事が起きた。


「ギャイン騎士爵は前に」

「へあ!?」


 なんと、父親までもが係の人から名前を呼ばれたのだ。

 僕も予想外だったが、父親も予想外だったらしく変な声が謁見の間の後方から聞こえてきた。

 そして、父親は重い体を何とか動かしながら、謁見の間の前の方にやってきた。

 父親は一瞬僕を睨みつけてから、絨毯の切れ端に膝をついた。


「陛下、お呼び……」

「ギャイン騎士爵、貴様に絨毯は贅沢だ。床の上に移動するように」

「へっ?」


 陛下の表情はかなり険しくなり、父親をギロリと睨みつけていた。

 父親はいきなり陛下に一喝され、何が何だか分からずにぽかーんとした表情をしていた。


「何をしている。さっさと床に移動しろ」

「はっ、はい!」


 陛下の機嫌が悪くなったタイミングで、父親は飛び上がるかの如く床の上に移動した。

 父親は何故このような扱いを受けなければという表情だったが、僕は直ぐにこの後の展開が予想できた。


「ギャイン騎士爵、貴様は実の子に何をした。どんな手紙を持たせ、何を言って軍に行かせた」

「あっ!? その……」


 父親は、ようやくこの場に呼ばれた理由を理解したみたいだ。

 そして、何故か僕に顔を向けて睨みつけた。

 ところが、この行動が陛下の怒りに更に火を注ぐことになった。


「ギャイン騎士爵! 余と話をしている最中によそ見をするとは、いったいどういう事だ! ふざけているのか!」

「すすすす、すみません!」


 陛下の激怒に、父親は慌てて土下座みたいなポーズで陛下に謝罪した。

 周囲の貴族は、父親の失態に思わず溜息をついていた。

 かくいう僕も、あまりにも情けない父親の態度に頭を抱えそうだった。


「帝国との戦いに備え、挙国一致の対応を取らなければならなかった。その中で、軍人貴族たる貴様はいったい何をしたのだ! 我が子に向けた心ない言葉だけでなく、周囲にも馬鹿なことを言った。貴様の長男も、本当に碌なことを言わなかった。貴様と長男の行動と発言は、明らかに王国軍の軍規違反だ! いや、人として失格だ!」

「すすすす、すみません……」


 父親は、顔面蒼白で汗を大量にかきながら陛下に謝罪していた。

 謁見の間は、陛下の怒号と父親の弱々しい声以外シーンと静まり返っていた。

 しかし、陛下の怒号はまだ響くことになる。

 そして、ここからの情報は僕も知らなかったことだった。


「そして、貴様の長男は貴様とイリスの子となっているが、実際には貴様と愛人関係にあった使用人との子だと判明した。この事は、軍所属の魔法使いにより鑑定済みだ」

「あっ……」


 まさか、あの兄が母親の子ではなかったなんて……

 ヤバいという表情の父親を、僕とスラちゃんは思わず見てしまった。


「本来なら、生まれた子をイリスの養子として届けなければならない。しかし、貴様はこのことが発覚するのを恐れ、虚偽の申請をした。更に、イリスとの本当の子どもであるケンが生まれると、隠蔽の発覚を恐れて監禁した。あろうことか、国に殺させようと馬鹿なこともした。こんな幼い子が剣を持って最前線に行くという、極めて愚かな幻想を抱いてな」

「うぐ……」


 陛下に全てがバレて、父親は顔面蒼白を通り越して真っ白になっていた。

 一方、僕も突然の情報に頭が混乱していた。

 スラちゃんも、この情報は流石に知らなかったという。


「そして、この愚か者と共に軍ではしゃいでいた馬鹿者がいる。そのものにも、厳罰を与えなければならない」


 陛下は、恐らく父親といつもいた贅沢派のことを言っているのだろう。

 誰の目を見ても、父親たちの行動は目に余るものだった。


「ギャイン騎士爵に通達する。貴族の出生に関する法律違反に伴い、二十年間国や王家に関わる行事の一切に参加することを禁じる。軍規違反に関しては、別途軍事法廷を開催する。この愚か者を屋敷に連れていき、沙汰が出るまで監視するように」

「へっ?」

「「「「「はっ」」」」」


 父親は、未だに状況が理解できない間に近衛騎士に両脇を抱えられて強制的に謁見の間から退場させられた。

 他にも退場させられているものがいるが、恐らく贅沢派の貴族だろう。

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