第三十五話 停戦協定発行
そして、遂に全ての捕虜交換と陣地引き渡しが終わった。
レーベンス大将が捕虜で亡くなったものの装備などをかき集めてくれ、ヘルナンデス様もかなり感謝していた。
もちろん、王国軍も全ての帝国兵戦死者の装備を返却した。
因みに、今回停戦交渉の時にいた帝国軍幹部で捕まったものの中に、ヘルナンデス様暗殺未遂事件の首謀者が含まれていたという。
それもあって、最初の停戦協議の時にヘルナンデス様を見てかなり驚いたらしい。
「間もなく、帝国との停戦協定が発効される。しかし、当面は国境警備を強化することになった。もちろん、諸君らの負担軽減のために、定期的な交代を実施する」
この日の正午に停戦協定が発効されるのを前に、ゴードン様が兵に訓示を行っていた。
戦闘で戦った兵の多くは既に王都に帰っており、残るは捕虜になった面々や僕たちみたいなものだった。
セレナさんとユリアさんは魔法使いなので、万が一に備えて前線基地に残っていた。
「残存部隊の撤収は、明後日を予定している。各々、準備を進めるように」
「「「「「はっ」」」」」
停戦協定が発効された直後は厳重警戒をし、それから僕たちは王都に帰ることになる。
僕は荷物を魔法袋に入れればいいのだが、その他の人は荷造りが必要だ。
部隊としては人数が少ないので、そこまで荷造りに時間は掛からないという。
因みに、僕とスラちゃんが作った土魔法の宿舎は、念のためにそのままにしておくという。
きちんとした兵舎は、時期を見て建てるそうだ。
それでも、整地してあるので工事がとても楽になるらしい。
確かに、前線基地周辺にあった岩ってとっても固いんだよね。
そして、捕虜になっていた人の治療も明日朝で全員終えることができる。
僕とスラちゃんにとって、一番ホッとしていることだった。
捕虜は虐待を受けた影響も大きかったが、怪我が治って体調も良くなると表情も明るくなった。
後は、軍が色々なケアをすることになっていた。
この後の話をすることになり、僕とスラちゃんはゴードン様と共に司令官室に向かった。
「しかし、この規模の衝突が半年で終わるとは思っていなかった。普通なら一年はかかるし、もっと人員を投入するだろう」
無事に停戦協定発効を見届けた後、ヘルナンデス様はお茶を飲みながらしみじみと語っていた。
そして、その要因はまさに僕にあるという。
「偶然とはいえ、ケン君が帝国軍の武器庫を破壊したのが大きかった。もちろん多くの負傷兵を治療したのもあったが、帝国軍が弱体化したのは間違いなく武器庫破壊だ」
「うっ、試しにバレット系魔法を撃った時ですよね……」
「ハハハ、そうだな。最後の攻撃時もケン君の魔法が大きな役割を果たした。過程はどうであれ、帝国軍を追い詰めたのは間違いない」
ヘルナンデス様だけでなく、他の人たちも景気よく笑っていた。
うう、特にバレット系魔法を帝国軍陣地の後ろにあった山に当てたのは、僕とスラちゃんにとっては忘れたい黒歴史だった。
「ハハハ、いいじゃねーか。悪いことをして怒られたんじゃねーぞ」
「そうね。それに、治療の方も本当に頑張っていたと思うわ」
宮廷魔導師のオーフレア様とローリー様も、ニコリとしながら話していた。
因みに、二人曰く僕とスラちゃんがいたから魔法使いとしてやることはなかったらしい。
そして、ここからルーカス様が話してくれたことが本題だった。
「撤収は、部隊を二手に分けて行う。主に、私たちの部隊とオーフレアたちが率いる部隊だ。ケン君は、私たちの部隊と行動を共にする」
あれ?
何で部隊を二つに分けるんだろうか。
すると、オーフレア様とローリー様が、僕に向けてご愁傷様という表情をしたのだ。
「オーフレアとローリーは、主に捕虜となったものなどを率いる。そして、私たちは道中協力した貴族に礼を言いながら王都に戻る」
「えーっと、ダッシュ伯爵家やグロリアス子爵家に挨拶をするということですか?」
「後は、ガルフォース辺境伯家もだ。知っているかもしれないが、今回国境に来ている貴族の子弟は少ない。それは、手柄を巡っての争いを避けるためだ。ケン君は、完全に別枠だ」
ルーカス様曰く、行きの時と同じく普通に対応すれば良いと言ってくれた。
ロバート様とマヤ様はとてもいい人だったし、ちょっとしか話せなかったけどハーデス様も感じの良い人だった。
因みに、王都に残っている軍事貴族は情報収集や物資の補給対応などで忙しかったらしく、普通にやることはたくさんあったという。
暇だったのは、父親を含む贅沢派だったということだ。
あれ?
だいぶ今更ながらだけど、ここである疑問がわいた。
「あの、ルーカス様、セレナさんとユリアさんは新兵ですけど、確か兄も新兵だったはずです。何で兄は、国境に行かなかったのですか?」
「ケン君の兄は元々最低ラインで入隊し、普通に派遣するレベルに達していなかったからだ」
ルーカス様は、僕に遠慮なく話しても問題ないと思ったようだ。
僕も全く問題ないし、話を聞いて非常に納得してしまった。
実際に、苦笑するしかなかった。
「それよりも、母上とお祖母様が早くケン君に会いたいと言っている。王城に着いたら、大歓迎されるだろう」
ルーカス様は、苦笑しながら教えてくれた。
この話も、直ぐに状況が思い浮かんでしまった。
またもや、僕は苦笑してしまった。
「そして、タイミングが良いので全貴族が集まる新年の謁見時に到着するようにする。謁見時は、私と叔父上が報告する」
正直、面倒くさいことは偉い人にお任せだ。
幾ら前世の知識があるとはいえ、社会経験は意外と少ない。
相手への立ち回りなどは、ほぼ六歳と同じだった。
「まあ、こんな感じだ。ケン君への処遇は、少し落ち着いた頃になるだろう」
他の兵も、新年が少し過ぎた辺りで処遇が決まるという。
この時点では、僕は父親や兄から自由になれれば何でもいいやと軽く考えていたのだった。
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