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毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第二十七話 迎撃開始

 翌朝、僕たちは早朝から帝国軍との戦闘に備えて準備をしていた。

 食事もサンドイッチなどで、その場で直ぐに食べられるものだった。

 食堂のおばちゃん曰く、食べないと力が出ないからと夜中から準備してくれた。

 僕とスラちゃんもヘルナンデス様とルーカス様の側にいて、戦闘開始後は直ぐに治療体制を取ることになっていた。


「おっ、きたきた。奴らが出てきたぞ」


 そんな中、双眼鏡で帝国軍陣地の様子を眺めていたオーフレア様が、思わず口元をニヤリとした。

 既にスラちゃんの偵察で帝国軍の規模は分かっているが、追加兵が来ていることも考慮して王国軍も多めに兵を準備している。

 単純な兵の人数だった、王国軍は帝国軍に負けることはなかった。


「帝国軍は、きっと勝負を仕掛けてくるだろう。まさに、今回の戦いの正念場を迎える。勇猛果敢な諸君の手で、王国軍に勝利をもたらすのだ!」

「「「「「うおー!」」」」」


 ゴードン様の激に、兵も気合満々の返事をした。

 王国軍は、帝国軍から察知されないように準備を整えた。

 その間も、帝国軍は王国軍から丸見えの状態で兵の整列を続けていた。


「ヘルナンデス様、何であんなに堂々と兵の整列をして王国軍が分からないと思っているのでしょうか?」

「あれだけ堂々としていれば、王国軍が分からないわけないだろう。奇襲を受けた際は、もっと上手に隠していたらしい」


 帝国軍の整列風景に、ヘルナンデス様も思わず苦言を呈していた。

 陽動作戦だとしても、スラちゃんがいれば全て見つけてしまう。


 ちょいちょい。


 ここで、スラちゃんが僕にあることを教えてくれた。

 あっ、これって……


「ゴードン様、奇襲……」

「司令官、奇襲部隊を捕縛しました!」


 僕がゴードン様に教える前に、別の兵がゴードン様に報告した。

 つまり、帝国軍はバレバレの陽動作戦を仕掛けたんだ。


「あらゆることを想定して対策をしている。この程度の陽動作戦など、作戦のうちに入らん」


 おお、ゴードン様がとってもカッコいいセリフを言っているよ。

 僕もスラちゃんも、思わず拍手してしまった。

 その間に、遂に帝国軍は綺麗に整列し終えていた。


「あれ? 帝国軍陣地から少し離れたところに整列しているんですね」

「全く、謁見式みたいに馬鹿正直に並んでいるな。そうか、この作戦が使えるな」


 僕と一緒に双眼鏡で帝国軍の様子を眺めていたオーフレア様が、何か閃いたようだ。

 直ぐにゴードン様、ヘルナンデス様、ルーカス様、ローリー様と話し合っていた。


「うむ。では、オーフレアの作戦を採用する」

「はっ」


 ヘルナンデス様の許可も出て、どうやらこの後行う作戦が決まったようだ。

 すると、オーフレア様は僕とスラちゃんにとんでもないことを指示してきた。


「ケン、帝国軍と陣地の間のスペースに思いっきりホーリーバレットを撃ち込んでやれ。スラちゃんは、帝国軍の前にアクアバレットをやってやれ。ハハハ、只の魔法の訓練だ」

「えー!?」


 僕とスラちゃんがとんでもなくビックリすると、今度はルーカス様が話を続けてきた。


「王国軍は、先ほど帝国軍による奇襲を受けた。全員捕まえているが、攻撃を受けたのは間違いない。なら、王国軍が帝国軍を攻撃する大義名分も発生したということた」

「でもでも、僕とスラちゃんは王国軍所属じゃないですよ?」

「ケン君とスラちゃんは、私の指揮下にある。それに、スラちゃんも奇襲を察知したのだから反撃する名分がある」


 ルーカス様の理路整然とした説明に、僕もスラちゃんも何も言えなくなってしまった。


「ケン、やっちまえ!」

「ここで、帝国軍に一泡吹かせるぞ!」


 更に、話を聞いていた兵も物凄く盛り上がっていた。

 そして、ゴードン様の話で全ての作戦が決まった。


「では、これよりケンとスラちゃんが帝国軍に魔法を撃ち込む。非戦闘員だから、あくまでも地面めがけて訓練の魔法を放つだけだ。それを合図に、隊長の指示に従って一気に動く」

「「「「「うおーーー!」」」」」


 兵のやる気も更に上がり、直ぐ様部隊の隊長と打ち合わせを始めた。

 その間、僕とスラちゃんは魔力を溜め始めた。


 シュイン、シュイン、シュイン。


「ゴードン様、僕とスラちゃんの魔法準備はできました。いつでも放てます」

「もう少し待ってくれ、あと少しで打ち合わせが終わる」


 僕とスラちゃんは、バレット系魔法を放つ準備をしながらゴードン様の指示を待った。

 そして、程なくして全部隊の打ち合わせと配置が完了した。


「よし、ケン、スラちゃん。魔法の訓練を始めるように」

「はい!」


 そう、僕とスラちゃんがやっているのは魔法の訓練だ。

 狙いも指定できた。

 ゴードン様の指示を聞きながら、僕とスラちゃんは気持ちを切り替えた。


「いきます!」


 シュイン、シュイン、ドーン!


 僕とスラちゃんは、空高くバレット系魔法を打ち上げた。

 兵は、僕たちの放った魔法を見ようと上空を見上げていた。

 そして、今度は空高くから勢いよく帝国軍を挟むように魔法が落下してきた。


 シューーーン、ズドーーーーーン!


「着弾、確認。帝国軍の前後に、クレーター発生。帝国兵は爆風で吹き飛び、陣地も損害発生」

「「「「「うおー、すげー!」」」」」


 監視兵の報告を聞き、兵はもの凄く盛り上がっていた。

 あれ?

 もしかして、やり過ぎちゃったかな……

 僕も恐る恐る双眼鏡で帝国軍を見たが、全員生きているとはいえとんでもない損害だった。

 帝国兵の半数以上が動けなくなり、まさに現場は阿鼻叫喚だった。

 監視兵の報告を聞き、僕とスラちゃんだけでなく多くの兵も固まってしまった。

 しかし、この人は至極冷静だった。


「全軍、隊長の指示に従い戦闘開始!」

「「「「「うおー!」」」」」


 ゴードン様の指示で、一気に兵が動き出した。

 動けない帝国軍は次々と捕縛され、前線基地に運ばれた。


 シュイン、ぴかー!


「はい、大丈夫です!」

「よし、次だ」


 王国兵の負傷兵は殆どおらず、捕縛した帝国兵への治療で大忙しだった。

 とはいえ、僕とスラちゃんの魔法で吹っ飛んで怪我をしていたので、逆に申し訳なく思ってしまった。

 捕虜となった帝国兵は、一定数集まったら麓の軍事基地に運ばれていった。

 護送用馬車も事前に用意していたので、とてもスムーズに動いていた。


「ケン君のおかげで、ほぼ何も抵抗なく帝国軍を取り押さえることができる。軍人にとって、治療可能な怪我など大したことはない」


 ヘルナンデス様は、かなり上機嫌で戦闘の様子を見ていた。

 あの、僕とスラちゃんの魔法の爆風で吹き飛んだ帝国兵には、骨折している人もいるんですけど……

 こうして、王国軍が圧倒的有利の中で戦闘は進んでいった。

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