第二十五話 偵察スラちゃん
しかし、その後も帝国との戦闘は散発的に続いた。
大人数をかけての攻撃はなく、弓矢や魔法による遠距離攻撃を絡めてくることもあった。
帝国側で武器の補給があったのかなと思ったが、全てセレナさんとユリアさんの魔法障壁により防がれた。
代わりに、王国軍の弓矢による一斉射撃やオーフレア様とローリー様の魔法攻撃で全て撃退した。
意外とオーフレア様は精密な魔法を繰り出し、ローリー様の魔法の方が一発が重かった。
「こう見えて、オーフレアは頭が良いのよ。魔法も理論的なのよ」
「ローリーは、眼鏡が嘘みたいに大雑把だよな。だから、まだ未婚……」
ブオン、バキン!
「お前、冗談なのだから真に受けるなよ……」
「冗談って言っても、言っていいことと悪いことがあるでしょうが!」
なんというか、もはや恒例となったオーフレア様とローリー様の掛け合いだったが、間違いなくこの二人の宮廷魔導師が来てくれてとても助かっていた。
何よりも、凄腕の魔法使いがいるので兵の士気も高かった。
僕とスラちゃんも負けじと治療を頑張り、遂に全ての重傷者の治療を終えた。
なので、ガルフォース辺境伯領の治療施設に送られた重傷者を、逆に前線基地に送ってもらっていた程だった。
こうして、日々が進んでいった。
「しかし、いつまで帝国は攻撃を続けるのか。これでは、ただの消耗戦だ」
夕方、主だった面々が司令官室に集まるとルーカス様が愚痴にも似た呟きをしていた。
季節は秋になり、今年もあと二か月を切っていた。
帝国との戦闘開始が夏になる前だったから、既に半年近く戦いが続いていた。
初期の戦闘では王国軍は大損害を負ったが、その後の損害はほぼ軽微なものだった。
一方、帝国は初期の戦闘での損害も大きいし、以降の戦闘での損害もとても大きかった。
正直、戦闘を続ける意味はあるのかと思ってしまった。
「だが、帝国側の動向はよく分からない。どうやら、今回の戦闘は軍の一部しか動いていないようだ」
ヘルナンデス様は、書類を手にしながら話をした。
今回の戦闘は、帝国軍全体の意思として行われている訳ではないらしい。
これは帝国に放たれている斥候からの情報で、もちろん軍事機密だ。
うーん、じゃあ帝国軍はいつまで戦闘の意思があるのだろうか。
すると、ここで新たな偵察に立候補したものがいた。
すっ。
「あの、スラちゃんがスライムの特性を生かして帝国軍の陣地に潜入すると言っています」
「危険だが仕方ない。ここは、スラちゃんの力を借りるとしよう」
ヘルナンデス様も、やむなしといった表情だった。
対して、スラちゃんは触手をフリフリとしてやる気満々で、颯爽と司令官室から消えていった。
話し合い自体はまだまだ続いており、みんなであーでもないこーでもないと話を続けていた。
コンコン、ガチャ。
すると、僅か一時間ほどで偵察に行っていたスラちゃんが司令官室に戻ってきたのだ。
しかも、ドアをノックするというスライムにしては高等技術を発揮していた。
スラちゃんは、みんなにも分かるように触手で器用にペンを持ってスラスラと紙に書き始めた。
そして、書き終えた紙をルーカス様に手渡した。
「これは凄いな、かなり色々なことがかいてあるぞ。『帝国軍の過激派が、手柄を得るために半ば暴発的に戦闘を仕掛けた。最初は戦闘が上手くいっていたので帝国軍の上層部も様子見していたが、たいした対策もせずに連戦連敗したので撤収命令を出したという』。何とも、迷惑なことをしたものだ」
スラちゃんの情報収集能力も凄いが、それ以上に戦闘が始まった理由がどうしようもなく皆が呆れていた。
因みに、ちょうど帝国側もちょうど対策会議を行なっており、直ぐに情報を集めることができたという。
そして、ここからがとても大事だった。
「『国境にいる帝国軍は、撤収命令への悪あがきとして明後日総攻撃をかける』そうだ。なら、逆に撃退してやろうじゃないか」
ルーカス様だけでなく、他の人たちもかなりやる気になっていた。
もちろん、僕もスラちゃんもとってもやる気になった。
とはいえ、帝国側のこの情報が正しいのか確認する必要もあった。
何にせよ、明日以降がとても大切だということがよく分かった。
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