第二十四話 国境の前線基地にやってきた宮廷魔導師
帝国側は、大損害を出した影響からかまたまた数日は何も攻撃してこなかった。
しかしながらまだ停戦の申し出などもなく、王国軍は引き続き警戒を続けることになった。
僕とスラちゃんはというと、夕方行う重傷者の治療が日課になった。
手や足の再生も一日三人までできるようになり、何だか魔法使いとしてレベルアップした気もしたのだった。
勿論セレナさんとユリアさんへの訓練も続けており、二人とも着実に実力をつけていた。
とはいえ、当面二人は戦闘が起きても防御に徹することになった。
王国軍も着々と軍備を整えていき、更に王都から援軍がやってきたのだ。
「ヒャッハー! 久々に国境に来たぜ!」
「落ち着きなさい。相変わらず煩いわよ」
何だろう、物凄いキャラの濃い人たちが馬車から降りてきた。
まるで敵キャラの様な声を出しているのは、赤髪を派手なモヒカンにしていて何故か上半身裸でマントを羽織った目つきの悪い男性だった。
もう一人の女性も一見すると緑髪ロングヘアのメガネをかけた知的な女性なのだが、胸を強調したピチピチの際どいドレスにマントを羽織っていた上に鈍器の様な巨大な水晶玉が着いた杖を持っていた。
そして、二人は出迎えたヘルナンデス様、ルーカス様、ゴードン様の前に進み出て膝をついた。
「宮廷魔導師オーフレア、只今到着しました」
「同じく宮廷魔導師ローリー、到着しました」
「うむ、遥々王都より大義である」
ヘルナンデス様が代表して挨拶したけど、キチンとする時はキチンとするんだ。
すると、オーフレア様はセレナさんとユリアさんに話しかけた。
「適当なことを教えていた馬鹿がいたってな。俺もムカついていた奴だから、後方に下げさせたぞ」
「「あ、ありがとうございます……」」
ヤンキー顔で凄いことを言っていたので、セレナさんとユリアさんも微妙な返事をしていた。
すると、そんなオーフレア様にローリー様がジト目で話しかけた。
「オーフレア、こんなところでナンパなんてやめなさいよ」
「バカ言え、俺には可愛い娘がいるんだ! 行き遅れているババアとは違……」
ブオン、ドカン!
「グハッ!? テメー、何しやがる!」
ローリー様は、余計なことを言ったオーフレア様の顔面を鈍器の様な杖でぶん殴っていた。
オーフレア様は涙目で顔面を押さえていたが、ぶん殴られた衝撃で鼻血が出ていた。
取り敢えず、僕たちもローリー様への禁句は直ぐに分かった。
「おーいてて、相変わらず遠慮なしかよ……」
「貴方が、余計なことをいつも言うからでしょうが」
二人のやり取りは年中なのか、ヘルナンデス様もルーカス様も特に気にしていなかった。
すると、その二人が僕に話しかけてきたのです。
「ハハハ、ボウズがケンだな。俺たちが来る前に、帝国側に一泡吹かせたとは中々やるな!」
「そうね。負傷兵への治療もそうだし、あれだけの大穴を空ける魔法は中々ないわ」
二人は、上機嫌で帝国陣地後方の山にポッカリと空いた大穴を見ていた。
いや、あの、僕とスラちゃんとしては大失敗したって思っているんですけど……
「失敗だろうが何だろうが、ケンの手柄なのはちげーねー。帝国は、それだけ言われることをやったからな」
オーフレア様は、僕の肩をちょっと強めに叩いた。
何にせよ、先日の戦闘で大いに役に立ったのは間違いなかった。
そして、オーフレア様はこんなことも言ってきた。
「出発する前にケンの親父を見たが、ありゃ色々な意味で駄目だ。能力もそうだし、何よりも考え方がおかしい」
「ちょっと、本当のこととはいえ小さな子に言う話ではないでしょうが」
「良いんだよ。こういうのは、ハッキリと言った方が良い。意外と、子どもってのは色々なことを分かっている」
どうやら、父親が僕が前線で死ぬようにと言っているのを、オーフレア様だけでなくローリー様も知っているようだ。
この分だと、兄も碌なことを言っていないはずだ。
僕は、思わず溜息をついてしまった。
「あの、大丈夫です。僕は、合法的な処分方法を見つけたとか国のために死ねと直接本人から言われましたので……」
「だろうな。あの馬鹿は、そこら中で得意げに言いふらしていたぞ。軍はマトモな連中が殆どだから、ケンに同情的な意見が大半だ。また馬鹿な事を言っていると、スルーしていたな」
面倒くさいことをするのは、父親を含む贅沢派だけでしょう。
何にせよ、父親の思惑通りには行かないはずだ。
「後は、当分の帝国の出方次第だな。武器を失ったダメージもあるだろうが、一気に兵を失ったダメージの方がデカいはずだ」
「そうね、王国には領土的野心はないし防御に徹していればいいわ」
オーフレア様とローリー様の意見に、他の人たちも頷いた。
いずれにせよ、このまま戦闘が落ち着いてくれればいいと願ったのだった。
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