第二十三話 戦闘開始
それは、朝食を食べ終えた直後のことだった。
カンカンカンカン、カンカンカンカン。
突如として、大きな鐘の音が鳴り響いたのだ。
それと同時に、食堂にいた兵も慌ただしく動き始めた。
この鐘の音って、もしかして……
「第一戦闘配備。繰り返す、第一戦闘配備」
そして、食堂に設置されたスピーカー型魔導具からゴードン様の声が聞こえてきた。
やっぱり、帝国が攻めてきたんだ。
僕とスラちゃんも、急いで食堂から前線基地の前に移動した。
「多くの兵がいるのだから、皆も慌てることはない。先ずは、基地の防衛が優先だ」
ヘルナンデス様も、大声で指示を出していた。
帝国の侵攻を食い止めればよく、現場担当指揮官も兵にあれこれ指示を出していた。
セレナさんとユリアさんも前線に出たが、魔法障壁での基地の防衛が基本となるという。
僕もスラちゃんも、治療を頑張らないと。
「ケン君には酷な場面かもしれないが、これが戦いだというのを良く見ておくんだ」
ルーカス様が、現場指揮に行く際に声をかけてくれた。
そして、遂に交戦が始まった。
シュッ、シュッ!
「「「ぐぎゃー!」」」
王国兵は、先ずは弓矢の一斉掃射で防壁を破壊しようと攻めてきた帝国兵を倒していった。
更に投石や投槍も駆使し、遠方から確実に安全に対応していた。
数は少ないが、ボーガンでの射撃もあった。
どうやら現時点では前線に攻めてきた帝国兵の中に魔法兵はおらず、セレナさんとユリアさんも魔法障壁を展開して防御に徹していた。
しかし、帝国兵からの弓矢での攻撃もあり、王国兵にも怪我人が発生した。
シュイン、ぴかー!
「治療しました。これで大丈夫です」
「助かった。しかし、帝国兵は白兵戦を仕掛けてきているぞ」
次々と運び込まれてくる負傷兵を治療していくが、どの王国兵も同じ感想を漏らしていた。
なんで帝国兵が白兵戦を仕掛けてきたのかは不明だが、僕は治療するしかなかった。
残念ながら当たり所が悪くて亡くなってしまった王国兵もいるが、このレベルの戦闘では総じて死者は少ないという。
こうして、数時間の戦闘はお昼過ぎに終結した。
王国軍が圧勝したが、敗走する帝国兵を深追いすることはなかった。
「これは……」
「ケン君には少々キツイ光景かもしれないが、これが戦闘の現実だ」
撤収作業を指揮するルーカス様と話をしたが、陣地にある防壁の外側では多くの帝国兵が戦死していた。
前線基地の防壁は堅く高く作られており、簡単に乗り越えることは出来ない。
しかし、帝国兵による奇襲を受けた際は、魔法攻撃も加わって後少しで陥落するところだったという。
「たまたまなのか、奇襲を受けた際は帝国兵の指揮官を倒すことが出来た。そのため、指揮系統がバラバラになった帝国兵を何とか撃退したという」
ルーカス様は、苦々しい表情をしていた。
王国兵は、決死の白兵戦を仕掛けて何とか帝国兵を食い止めた。
結果として、数多くの負傷兵を出してしまった。
その後も、帝国兵の攻撃は続いて甚大な被害が出た。
しかし、今日の帝国兵の攻撃はかなり中途半端だった。
帝国兵は、最初から白兵戦しかしてこなかった。
その理由は、意外なものだった。
「ハハハ。ケン君、中々面白いことが判明したよ。捕虜への取り調べから分かったが、帝国陣地後方にあった武器庫が謎の土砂崩れで全壊したらしい。同じタイミングで、山腹で謎の爆発があったそうだ」
えっと、それって僕とスラちゃんが試しに放ったバレット系魔法が帝国陣地後方にあった山を直撃した話じゃないかな……
帝国陣地を直撃していないし、僕もスラちゃんも、もちろん他の人も大丈夫かなって思っていた。
「まあ戦争中だし、こればかりは何もいえない。何にせよ、その謎の土砂崩れとやらに感謝しよう」
ルーカス様は、機嫌よく兵に指示を出していた。
因みに、帝国兵の死体は疫病対策のために身分が分かるものを取ったら直ぐに埋葬するという。
停戦協定の一環で、身分の分かる物は帝国側に渡すことになるらしい。
何はともあれ、僕とスラちゃんが初めて経験した戦闘は王国の圧勝だった。
帝国側は大幅に戦力を減らしたし、この後いったいどういう手を取るのだろうか。
僕は、戦いは終わって休戦して欲しいと思ったのだった。
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