第二十一話 魔法訓練で大失敗?
「うーん、うん?」
翌朝、僕とスラちゃんは窓から差し込む朝日の眩しさに目が覚めた。
もぞもぞと寝袋から体を起こし周囲を見回すと、他の女性兵たちはまだぐっすりと寝ていた。
起こしちゃ悪いかなと思い、僕とスラちゃんは静かに寝袋を魔法袋の中にしまった。
そして、寝ている人を避けながら外に出ようとしたのだが、ここで難関が待っていた。
うーん、皆さん寝相が凄すぎる。
寝袋から飛び出ている人もいるので、僕は何とか避けながら一歩一歩前に進んだ。
進んだのだが……
「うーん……」
「あっ!?」
コケッ、ドサッ。
急に寝返りをうった人の足に引っかかり、僕は床に思いっきりダイブしてしまった。
寝返りをうった女性兵は、寝袋から完全に出ちゃっているよ。
そして、僕が床にダイブした音でこの人が目を覚ました。
「うーん、あれ? ケン君、何をしているの?」
ユリアさんが、眠そうに目をこすりながら起きてしまった。
僕は床にダイブしたまま、どうやって説明しようかと悩んでしまったのだった。
シュイン、シュイン。
「えっと、こんな感じで三歳からスラちゃんと毎日魔法の訓練をしています」
「「凄い……」」
身支度を整えて、僕とスラちゃんはセレナさんとユリアさんにいつもの訓練を見せた。
といっても、行ったのは魔力循環と魔力制御だけだ。
それでも、二人は僕の訓練にかなり驚いていた。
更に、宿舎で一緒だった女性兵も凄いと盛り上がっていた。
僕とスラちゃんの訓練を見せた後に、セレナさんとユリアさんと一緒に魔法の訓練を行うことになった。
最初に、僕がセレナさんと、そしてスラちゃんがユリアさんの手の上に乗って魔力循環を行うことに。
シュイン、シュイン、シュイン。
「「うっ、うぅ……」」
セレナさんとユリアさんは、僕とスラちゃんから流れる魔力に悪戦苦闘していた。
全身に魔力が流れる感覚を掴めていないようで、僕たちにされるがままだった。
魔力循環を終えると、二人は汗だくで息も絶え絶えだった。
「こ、これはキツイですね。でも、確かに効果はありそうです」
「ま、先ずは、ケン君とスラちゃんの魔力循環に耐えられるようにならないと……」
スムーズに魔力循環ができるようになるだけでも、魔法使いとしてレベルアップするはずだ。
二人もそのことを理解しているので、僕としてもとてもありがたかった。
続いて魔力制御の訓練なのだが、場所を変えて行うことにした。
因みに、他の女性兵も別の場所で普段の訓練を始めるという。
「万が一魔法が暴走してもいいように、何もない帝国の方を向いて魔力制御をします」
これは、魔力を一定量維持する訓練です。
僕とスラちゃんも国境への行軍の際に攻撃魔法の訓練を始めていて、回復魔法を維持するのではなくバレット系の魔法を維持するようにしていた。
僕はホーリーバレット、スラちゃんがアクアバレットで、まだ他の属性は試していたかった。
セレナさんもアクアバレットを、ユリアさんはアースバレットを維持するように頑張っていた。
「意外と大変なのが、魔法を小さく維持することです。僕もスラちゃんも、魔法の本を見て勉強していました」
「い、今は、魔法を小さくとかを、気にしていられないです……」
「こ、これは、とても、大変です……」
セレナさんとユリアさんは、またまた大汗をかきながらかなり集中していた。
一見するととても地味な訓練だけど、とても大変でとても重要な訓練です。
「うむ、中々大変そうだな。しかし、基礎は大切だぞ」
「基礎を疎かにしてはいけない。やはり、セレナとユリアをケン君につけて良かった」
魔力制御の訓練を続けていると、いつの間にかヘルナンデス様とルーカス様が僕たちの側に来ていた。
セレナさんとユリアさんは、とても偉い二人の存在に気が付きつつも自身の魔力制御に精一杯だった。
こうして、十分間の魔力制御は何とか終了しました。
「こ、これは、とてもキツイです……」
「でも、魔法が上手くなる、そんな実感はあります……」
セレナさんとユリアさんは、何とか息を整えながら額から流れる汗をタオルで拭っていた。
しかし、その表情は疲れながらも達成感があった。
でも、僕はちょっと疑問があった。
「セレナさん、ユリアさん、軍ではどんな訓練をしていたんですか? 僕は、魔法の本を読んで訓練していました」
「その、適性が分かったら何とか魔法を発動させるために気合で……」
「その後は、ひたすら魔法を使えと言われていました……」
う、うーん。
流石に、魔法は根性論では上手くならないと思うよ。
この話を聞いて、ヘルナンデス様とルーカス様も思わず頭を抱えてしまった。
「魔法使いは軍でも少ないとはいえ、流石に訓練とはいえない内容だ」
「直ぐに、訓練内容の見直しをさせよう。根性でどうにかなる問題じゃないぞ」
うん、後は偉い人に任せておこう。
すると、ここでルーカス様が僕とスラちゃんにある質問をしてきた。
「ケン君とスラちゃんの魔法は、いったいどこまで飛ぶのか? 大抵の魔法使いは、百メートルも飛べば良いと言っている」
セレナさんとユリアさんにも話を聞くと、確かにそれくらいだと言っていた。
僕もスラちゃんも、自分の魔法の射程距離がとても気になってしまった。
しかも、訓練を終えて食堂に行こうとする多くの兵も話を聞いていた。
うん、何だか背後から多くの視線を感じているからさっさと終えよう。
僕とスラちゃんは、魔力を溜め始めた。
シュイン、シュイン、シュイン。
帝国の陣地の奥に高そうな山があるから、届かないと思うけどそこを狙ってみよう。
シュイン、シュイン、ドーーーン。
ヒューーーン、ズドーーーーーン!
「「「「「えっ?」」」」」
なんと、狙いをつけた帝国の陣地の奥にある山に僕とスラちゃんのバレット系魔法が直撃し、大音響と共に派手な砂煙を上げていたのだ。
これには、成り行きを見守っていた多くの兵が度肝を抜かれていた。
というか、僕とスラちゃんも手を突き出したままかなり驚いているんですけど……
「取り敢えず、ケン君とスラちゃんの魔法の飛距離は分かった。だが、暴発の危険もあるので許可なく放たないように」
ヘルナンデス様も、苦笑しながら僕とスラちゃんに注意していた。
もちろん、僕とスラちゃんも何回も頷いた。
うん、暫く攻撃魔法は禁止だね。
僕たちは、気持ちを切り替えて食堂に向かったのだった。
そして、何故か三日間帝国からの攻撃はなかった。
その間、前線基地に多数の兵が到着し、王国軍は一気に戦力を増したのだった。
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