第二十話 前線基地にたまたまいた新人魔法兵
その間に、僕たちは食堂のテーブルの一角に座った。
そして、ゴードン様がある人を呼び寄せた。
「えーっと、いたいた。セレナ、ユリア、こっちに来るように」
「「あっ、はい!」」
ゴードン様に呼ばれ、二人の女性兵がこちらにやってきた。
セレナと呼ばれた女性は水色の髪をボブカットにし、ユリアと呼ばれた女性は緑髪をポニーテールにしていた。
「セレナ、ユリア、二人に紹介する者がいる。先ほど、大勢の負傷兵を回復魔法で治療した魔法使いと言えば分かるだろう」
「「えぇ!?」」
ゴードン様に紹介されると、二人はかなり驚いて良いリアクションをした。
どうやら、小さな男の子で尚且つ魔法使いなのがびっくりだったみたいだ。
「はじめまして、僕はギャイン騎士爵家のケンです。スライムのスラちゃんです」
「あっ、はい。セレナといいます。一月入隊の魔法兵です」
「同じく、魔法兵のユリアです」
僕とスラちゃんがペコリと頭を下げながら挨拶をすると、二人もペコリと頭を下げた。
とても感じが良さそうな人たちだ。
しかし、ルーカス様の説明で少し混乱する事態に。
「ケン君は、今は回復魔法や生活魔法しか使えないが全属性を扱える。スラちゃんもだ」
「「なっ!? 全属性の魔法使い……」」
僕とスラちゃんの属性を知り、セレナさんとユリアさんだけでなく近くにいた兵もどよめいていた。
更に、ヘルナンデス様の説明が混乱に拍車をかけた。
「ケン君は、事故で失った私の手を再生した。更に重病だった母上も完治させた。それだけ凄い魔法使いだ。前線基地にいる間は、無理をさせない範囲で治療させるがな」
もはや、兵のざわめきが止まらなかった。
セレナさんとユリアさんは、衝撃のあまり目をまん丸にしながら僕のことを見ていた。
中には、あれだけの治療をするのにまだ子どもだという感想もあった。
「ケン君は貴族家の子どもだが、訳あって私の保護下にいる。戦闘中以外は二人と行動を共にしてもらう」
「「か、畏まりました」」
ルーカス様の指示に、セレナさんとユリアさんはビシッと敬礼していた。
そして、ルーカス様は二人を呼び寄せて僕が何故軍と共に行動しているかを説明していた。
時々二人が僕のことを可哀想だという目で見ていたが、経緯が経緯なだけに仕方ないだろう。
そして、さっそく二人のいたテーブルに移動して夕食を食べることにした。
「ケン君は、そんな辛い過去があったんだね。この前線基地にいる間は、私たちが面倒をみてあげるわ」
「私は弟がいるから、ケン君のお世話は任せてね」
セレナさんとユリアさんは、僕の境遇をかなり哀れんでいた。
気のせいか、周囲にいる他の女性兵も僕のお世話をしたいという視線を向けていた。
うん、何だかちょっと怖いかも……
「ケン君に治療してもらった兵もいるのよ。だから、お礼をしたいと思っているのかもね」
セレナさんが、野菜炒めを食べながら色々と教えてくれた。
近隣の軍事基地からも助っ人が呼ばれていて、たまたま女性兵が多かったという。
怪我の治療と同じくらい喜ばれたのが、生活魔法で体を綺麗にしたことだった。
やっぱり、こういう状況でも綺麗でいたいのでしょう。
夕食後に、生活魔法で綺麗にしてと頼まれることもあった。
このくらいなら残りの魔力でも全然大丈夫なので、お願いされた人全員を一気に生活魔法で綺麗にした。
そして、早めに休むことになり、僕はセレナさんとユリアさんと共に宿舎に向かった。
「あれ? テントもたくさん建っていますよ」
「増員した分の宿舎が間に合っていないのよ。何とかしないとって、司令官は言っていたわ」
ユリアさんも心苦しく言っていたが、実は宿舎もぎゅうぎゅうに詰めて寝ているという。
僕が行った女性用宿舎も、三段ベッドだけでなく床に寝袋を敷いて寝ている女性兵もいた。
うーん、この状況はあまり良くなさそうだ。
僕も、ヘルナンデス様、ルーカス様、ゴードン様と相談しよう。
そして、ある意味一番揉めることが起きてしまった。
それは、いよいよ僕が寝る時だった。
「ケン君は、私と一緒に寝ましょうね」
「いいえ、ケン君は私と一緒に寝るのよ」
「いやいや、ケン君は私よね」
何と、セレナさんとユリアさん以外の女性兵が、僕と一緒に寝ると言い出してしまったのです。
これには、僕とスラちゃんだけでなく、セレナさんとユリアさんも呆れちゃいました。
「あの、ゴードン様からはセレナさんとユリアさんにお世話を頼まれていました。それに、僕は一人で寝れます!」
「「「「「ええー!?」」」」」
女性兵がブーイングをあげる中、僕は部屋の隅っこに魔法袋から取り出した寝袋を敷いた。
何というか、一緒に寝ようという女性兵の視線がかなり怖かった。
そして、スラちゃんと共に寝袋に潜り込むと、日中の治療の疲れもあってか直ぐに眠くなった。
明日も、寝る時はトラブルにならないように気をつけないとね。
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