第二話 ケン
僕はケン、ホークスター王国の王都に住む六歳です。
王国でもそこそこ歴史があり、歴代軍人を輩出している貴族家のギャイン騎士爵家の次男として生まれた。
貴族当主で四十五歳になる父親のルイスはずっと軍で軍人をしており、兄で十六歳になる嫡男のベンスも軍に入って新人研修を受けていた。
こうして聞くと、貴族制度の中で一番下の騎士爵家だがそこそこいい環境だと思える。
しかし、現実はかなり酷いものだった。
頭頂部に茶髪の毛がない父親は金品や酒を好み、軍人と思えないほど醜く太っていた。
勿論、屋敷内で訓練をしている様子を見た事は記憶の限り一度もなかった。
そして、嫡男のベンスは見た目こそ肩まで茶髪を流してそこそこの美形だったが、残念なことにナルシストで自己中心的な性格だった。
こちらも、屋敷で訓練など行ってはいなかった。
次男の僕はと言うと、屋敷の中で存在しない扱いになっていた。
僕が生まれて一年が経った頃、母親であるイリスが病気で亡くなった。
更に僕が母親と同じサファイア色の髪の毛をしているのもあり、父親は何よりも僕が男として生まれたのが気に食わなかった。
「女で生まれてくれば、他の貴族と縁を結べた。お前は、我が家に不要だ」
僕と顔を合わせる度に、父親は僕の存在自体を否定することばかり口にした。
更に、兄も僕のことをストレス発散の道具として暴力を振るっていた。
幸いにして、父親と兄は僕を殺すことはしなかった。
二人は軍人なのに、僕を殺すだけの度胸がなかったのだろう。
領主と嫡男がこんな状況なため、屋敷の使用人も僕にかなり冷たく当たっていた。
わざと体をぶつけたり足払いするのは日常茶飯事で、殆ど僕の世話をすることもなかった。
唯一、ハンナという栗毛をお団子にした恰幅の良いおばちゃん使用人のみ、僕にあれこれ世話をしてくれた。
ハンナおばさんは豪快な性格で喋りも荒っぽいおばちゃん口調だったため、周囲から暴力的に世話をしていると思われていた。
しかし、実際に僕を虐めることはなく、ハンナおばさんがいなければ間違いなく僕は死んでいただろう。
屋敷の家族部屋を与えられず、倉庫みたいな小さな部屋で使用人の服を着て寝ていた。
つまり、父親と兄は僕を家族とは認めていなかったことになる。
そんな僕がハンナおばさん以外に心を開く存在が、スライムのスラちゃんだった。
この屋敷にはかなり小さいが池があり、スライムが数匹生息していた。
そんなスライムの中の一匹と、僕は友達になることができた。
他のスライムとも仲は良かったが、三歳くらいからは屋敷の外に出ることも許されなくなった。
スラちゃんは自由気ままに動いていて、いつの間にか屋敷に出入りしては僕の側にいてくれた。
そして、僕は一日の殆どを屋敷にある殆ど使われていない書斎で過ごしていた。
勿論、沢山ある本を読んで知識をつけるためだった。
家の者は、幼い僕が文字も理解できないのに本を読むなんてと馬鹿にしていた。
しかし、当時三歳の僕はしっかりと本を読んで理解できた。
それは、僕の中にあるある秘密が関係していた。
実は、僕には前世の記憶があった。
はっきりと前世の記憶があると自覚したのはだいたい一歳頃で、時期的には母親が病気で亡くなったタイミングだ。
間違いなく、母親を失ったショックで前世の記憶を思い出したのだろう。
前世の僕は、地球にある日本という国に住んでいた。
前世でも僕は家族に恵まれておらず、両親共に定職に着かずギャンブル依存症だった。
更にネグレクトに近い状態で、満足に食事を与えられず着るものやお風呂にも困っていた。
もちろん学校でもイジメの対象になっており、僕は周囲から孤立していた。
高校にも行くかどうか非常に悩んだが、中学卒業後は夜間高校に通いながら自力でお金を貯めることを選択した。
しかし、なんとか稼いだお金も両親に殴られてギャンブル代として奪われてしまった。
両親は、僕をギャンブル代としか見ていなかった。
そんな生活が暫く続いていたが、ある日僕は突然警察に保護された。
どうやら、両親が良くないことを起こして捕まったという。
やっと両親から解放されると思っていた矢先、僕は世界的に流行していた病気により呆気なく死んでしまったのだった。
そして、この世界のケンとして前世の記憶を得た状態として生きてきた。
そんな僕だが、家族が知らないもう一つの秘密があった。
それは、この世間では数百人に一人しか存在しないという魔法使いだということだった。
きっかけは書斎でスラちゃんと一緒に読んでいた魔法使い向けの本で、試しに魔力循環をするとできてしまった体験からだった。
しかし、僕が魔法使いだなんて誰にも言えるはずがなく、ベッドの中などでスラちゃんと日々隠れながら魔法の訓練をした。
もしかしたらハンナおばさんは僕が魔法使いだと知っていたかも知れないが、何も知らないようにしてくれた。
そして僕は家の者から虐待を受けていたため、毎晩僕の体に回復魔法をかけるという実践訓練をしていた。
骨折に近い状態の怪我もあったが、問題なく回復できた。
スラちゃんも回復魔法を覚え、たまに僕に回復魔法をかけてくれた。
こうして、最新の注意を払いながら日々魔法の訓練をしていた。
そんな生活が続き、僕は何とか六歳になったのだった。
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