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毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第十七話 国境のガルフォース辺境伯領に到着

 僕たちのいる部隊が、グロリアス子爵領を出発して数日が経った。

 いよいよ目的地である、国境の領地ガルフォース辺境伯領が見えてきた。

 山がちな領地で、帝国とは平原に面したところで国境を接するという。

 街道からだと戦闘が行われているか分からず、道を行き交う馬車や人は普段と変わらない様子に見えた。


「領主のガルフォース辺境伯は、教会付属の治療施設にいるという。軍勢はガルフォース辺境伯領の軍事基地に向かわせ、前線基地に行く準備をさせる」


 通信用魔導具を操作しながら、ヘルナンデス様は状況を教えてくれた。

 領主自ら治療施設に行くとなると、それだけ状況が厳しいのだと実感した。


「ガルフォース辺境伯領に着いて直ぐに多くの負傷兵への治療となる。ケン君とスラちゃんには負担をかけるが、頑張ってくれ」

「はい!」


 僕は、スラちゃんと共にふんすって気合を入れた。

 しかし、この時はそこまで大変ではないと楽観視していたところがありました。

 ところが、僕たちを乗せた馬車がガルフォース辺境伯領の教会前に到着し馬車から降りた時でした。


「おい、早くポーションを持ってこい!」

「ヤバイぞ、出血が止まらない」

「おい、包帯が足りないぞ」


 なんと、治療施設どころか教会の中にも次々と負傷兵が運び込まれていたのです。

 しかも、シスターさんだけでは足りずに比較的軽症の負傷兵が重傷者の治療をしていた。

 生臭い血の臭いも漂っていて、衛生的にも良くなさそうだ。

 僕とスラちゃんは、余りにも凄惨な状況に思わず顔をしかめてしまった。

 とはいえ、僕とスラちゃんができることは怪我人の治療だ。

 僕とスラちゃんは、魔力を溜め始めた。


 シュイン、シュイン、シュイン。


「な、なんだここ魔法陣は?」

「いったい、何が起ころうとしているのだ?」


 教会の中にいた人たちは、教会内に現れたたくさんの魔法陣を一瞬手を止めて驚愕の表情で見ていた。

 十分に魔力が溜まったところで、僕とスラちゃんは一気に魔力を解放した。


 シュイン、シュイン、ぴかー!


「こ、この光は!?」

「怪我が治っていくぞ?」

「もしかして、回復魔法なのか?」


 辺境伯領にある教会なだけにとても広かったが、十分に魔力を溜めたので治療効果はバッチリだ。

 これで軽症と中等症の怪我と病気なら治ったはずだし、重傷者もかなりのところまで治療できたはずだ。

 そして、今回は回復魔法と聖魔法以外にもう一つ魔法を混ぜていた。


「おい、包帯だけでなく服までピカピカになっているぞ!?」

「教会内も光り輝いている。いったい何がどうなっているんだ?」


 実は、今回生活魔法も一緒に混ぜて広範囲回復魔法として放った。

 包帯が足りないなどの声を聞いて、それならばと付け加えた。

 なので、青色と黄色の魔法の光に加えて白色の魔法の光も放たれていた。

 副効果で教会も生まれ変わったかのように光り輝いているけど、このくらいは許してもらおう。

 ヘルナンデス様とルーカス様は、光り輝いている教会内を見て思わず苦笑していた。

 すると、教会の奥から一人の大きな男性が上機嫌で僕たちのところに歩み寄ってきた。


「ハハハ、陛下からとっておきの魔法使いを送ると聞いていたが、まさかここまでとはな。いやあ、恐れ入ったぞ」


 豪快に笑っていたのは、茶髪の毛が逆立ってあごひげと合わさってライオンみたいな人だった。

 しかも、ヘルナンデス様よりも更に身長が高かった。

 陛下って名前が出たから、もしかして……


「辺境伯様、はじめまして。ギャイン騎士爵家のケンです。あと、スライムのスラちゃんです」

「うむ、幼いのに中々礼儀正しくて感心だ。ガルフォース辺境伯家のハーデスだ」


 僕はハーデス様とがっちりと握手をしたが、とても大きくてゴツい手だった。

 でも、スラちゃんとも快く握手をしてくれた。


「先ずは、治療を済ませて落ち着いてから話をしよう。ケンよ、シスターと共に治療施設に回ってくれ」


 ハーデス様は、優先度を間違えない賢さもあった。

 僕とスラちゃんは、シスターさんと共に教会脇にある治療施設に向かった。

 すると、またもやかなり凄惨な状況となっていたのだ。


「うぐぐ……」

「ポーションはまだなのかよ!」

「くそ、このままでは……」


 ベッドには苦しそうにうめき声を上げている負傷兵が数多くおり、治療担当は怒号を上げていた。

 僕とスラちゃんは、素早く魔力を溜め始めた。


 シュイン、シュイン、シュイン。


「おい、これはどうなっているんだ?」

「何がどうなっている?」


 またもや複数現れた魔法陣に、さっきまで怒号を上げていた治療担当は思わずその手を止めた。

 そして、僕とスラちゃんは一気に魔力を解放した。


 シュイン、シュイン、ぴかー!


「うおっ、眩しい!」

「何が……はあ? 怪我が治っているぞ!?」


 今回は治療施設全体を範囲指定とした広範囲回復魔法だったため、結構魔力を使ってしまった。

 僕もスラちゃんも、流石に広範囲回復魔法を連発したのでかなり疲れてしまった。

 とはいえその効果は絶大で、生活魔法も混ぜたので包帯や建物もとても綺麗になった。


「な、なんということでしょうか……」

「私は、奇跡を見たのでしょうか……」


 僕たちと一緒についてきたシスターさんは、目の前の光景にぽかーんとしてしまった。

 でも、まだまだやることはたくさんあった。


「シスターさん、僕は治療施設の中に入って治療漏れがないか確認します。教会にはスラちゃんが行くので、お願いしたいです」

「わ、分かりましたわ。私が、そのスライムを預かります」

「それでは、私が治療施設内を案内します」


 何とかシスターさんに再起動してもらい、二手に分かれて治療効果の確認を始めた。

 剣で切られたのか手や足を切断している兵もいたが、流石に今の魔力では治療できなかった。

 少し悔しさも覚えつつ、僕は目の前の治療に専念したのだった。

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