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毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第十四話 大混雑の中での治療

 翌朝、僕とスラちゃんはわざわざ軍が出してくれた馬車に乗り込み、騎馬隊の護衛を受けながら軍の基地を出発した。

 兵曰く、要人警護の良い訓練になるとも言っていた。

 今日は、その要人が僕なんだけどね。

 ルーカス様とヘルナンデス様は、これから幹部と会議を行うという。

 偉い人は本当に大変だ。

 軍の基地を出発して程なくして、目的地であるダッシュ伯爵領の教会に到着した。

 教会脇の馬車置き場で馬車を止め、護衛と一緒に教会の中に入った。

 伯爵領の教会なので、想像以上に大きくて広くて綺麗だった。

 そして、祭壇の前にいたシスターが僕たちを出迎えてくれた。


「おはようございます、ギャイン騎士爵家のケンです。スライムのスラちゃんと一緒に、頑張って治療します」

「わざわざありがとうね。こちらこそ、宜しくお願いしますわ」


 シスターさんは、僕だけでなく頭の上にいるスラちゃんともにこやかに握手をしてくれた。

 とても良い人ですね。

 さっそく、治療を始めることに。

 祭壇前に二つ椅子を用意してくれて、僕達の前にも二つ椅子が並べられた。

 護衛の兵も、椅子の後ろに立ってくれた。

 何だろうと町の人がやってきたので、さっそく目の前の椅子に座ってもらった。

 一番乗りでやってきたのは、年配の夫婦だった。

 旦那さんが僕の前に座り、奥さんがスラちゃんの前に座った。

 子どもの僕とスライムが治療するとあって、年配の夫婦は少し驚いていた。


「では、軽く魔力を流しますね。うーん、膝だけでなく腰や肩も痛めています。直ぐに治療します」


 シュイン、ぴかー!


「おお、これは凄い。体の痛みが全部無くなったぞ!」


 僕の治療を受けたおじいさんは、自分の膝を触りながらかなり驚いていた。

 スラちゃんが治療したおばあさんも、とんでもなく驚いていた。

 僕とスラちゃんは良かったと思っていたが、何故か護衛の兵はドヤ顔でいたのだった。

 早朝なのに治療に訪れた人がいるので、次の人に交代してもらった。

 こうしてドンドンと町の人を治療していくと、完全に予想外のことが起きてしまった。


「治療を受ける人は、順番に並んで下さい!」

「慌てないで下さい!」


 何と次々と町の人が治療に訪れ、治療しても治療しても全然人の波が途切れなかった。

 シスターさんも護衛も列の整理をしてくれたが、完全にキャパオーバーだった。

 しかも、あまり時間をかけると出発の時間に間に合わない。

 そこで、僕とスラちゃんはある魔法を放つことにした。


「あの、僕とスラちゃんの広範囲回復魔法で、教会の中にいる人を一気に治療しちゃいます」

「えっ?」

「おう、ケンやっちまえ」


 僕の発言にシスターさんは何言っているのって反応で、護衛の兵は列整理が大変なのかちょっと投げやりな反応だった。

 とはいえ、この目の前にいる町の人をどうにかしないといけない。

 僕とスラちゃんは、お互いに魔力を溜め始めた。


 シュイン、シュイン、シュイン。


「な、なんだこれは。凄い数の魔法陣が現れたぞ」

「い、いったい何が起きるんだ?」


 突如現れた複数の魔法陣に、教会の中にいる人はかなり驚いていた。

 そんな人々の呟きを聞きながら、僕とスラちゃんは溜めていた魔力を一気に解放した。


 シュイン、シュイン、ぴかー!


「「「「「わあっ!」」」」」


 教会内が回復魔法の青色の光と聖魔法の黄色の光で満たされ、そして消えていった。

 すると、教会内にいた人々は今度は信じられないという反応を見せた。


「な、えっ? 打ち身が良くなっている!」

「胸の苦しいのが、すっかり良くなったわ」


 自身の体の不調が良くなり、ザワザワと大きなざわめきが起きていた。

 どうやって説明しようかと思ったら、ちょうど良いタイミングでこの人が姿を現した。


「流石はイリス様の息子だ。これだけの人々を、一気に治療してしまうとは」

「「「「「領主様!?」」」」」


 教会内に現れたロバート様は、満足そうな表情をしながら僕たちのところに歩み寄った。


「今日は、軍に同行している凄腕の治癒師が来ている。しかし、これ程の腕とは私もびっくりした。私も、腰痛が良くなったよ。さあ、元気になったものは次の人と交換するように」


 流石地元の領主だけあって、ロバート様が声を掛けると一斉に人々が動き出した。

 僕も兵もシスターさんも、状況が動き出してかなりホッとした。


「ロバート様、人々を混乱させるような状況を作ってしまい申し訳ありません」

「いやいや、私もここまで町の人が来るとは思わなかった。それだけ、ケン君の治療が素晴らしいのもある。時間的にもそろそろ終わりになるし、可能ならあと一回あの素晴らしい回復魔法をしてくれ」


 ロバート様は、僕とスラちゃんの広範囲回復魔法を素晴らしい回復魔法と評価してくれた。

 実際にもうそろそろ移動しないといけない時間なので、ロバート様の提案はとてもありがたかった。

 もう一回教会内にたくさん集まってもらい、僕とスラちゃんで広範囲回復魔法を放って治療は終了した。


「ケン君、スラちゃん、時間がない中数多くの領民を治療してくれて本当に感謝する。ケン君なら、苦難に立たされている国境にいる多くの兵を救うことが出来ると確信した。大変な任務だと思うが、頑張ってくれ」


 ロバート様は、僕とスラちゃんとガッチリと握手をしてくれた。

 僕も、今日の治療はとても良い経験になった。

 こうして、僕たちは教会を後にして軍事基地に戻った。


「ヘルナンデス様、ルーカス様、ただいま戻りました」

「ケン君、お帰り。教会での活躍は聞いている。こちらにも噂が流れていたぞ」

「とんでもない活躍だったと、伯爵からも連絡を受けた。国民への奉仕として、とても良い結果だ」


 出発の準備をしていたヘルナンデス様とルーカス様に声をかけたが、既にロバート様から連絡をもらっていたんだ。

 流石は出来る領主様だ。


「「「「「疲れた……」」」」」

「ハハハ、散々な目にあったらしいな!」


 そして、護衛の兵は疲労困憊って感じだった。

 仲間に揶揄われたが、もうどうでも良かったみたいだ。

 僕も護衛の兵に回復魔法もかけたけど、それ以上に疲れていたらしい。

 何にせよ、とても助かったのは事実だった。


「すー、すー」

「こうしてみると、ケン君も小さな男の子だと改めて実感する」

「余程、張り切って治療したのでしょうね」


 行軍が始まると、僕とスラちゃんはいつの間にか馬車の壁に寄りかかって寝てしまった。

 ヘルナンデス様とルーカス様も、あどけない僕の寝顔に思わずニッコリとしたのだった。

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