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毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第百十話 新年と父親の獄死

 翌日は、いよいよ新しい年になった。

 僕は十二歳となり、一つ年を重ねた。

 クリスは実家のダイナー男爵家で新年を迎えており、夜会で僕と合流することになっていた。

 新年恒例の謁見があるけど、最初に実家のノーム準男爵家に挨拶をしに行った。


「新年、おめでとうございます。今年も宜しくお願いします」

「うむ、おめでとう。ケン君も、本当に大きくなったのう」


 ノーム準男爵家に到着すると直ぐに応接室に案内され、僕はエレンお祖父様と挨拶を交わした。

 まだまだ背は低いが、着ている服が小さくなると成長を実感できた。


 トトトト。


「うー!」

「あらあら、ルートは本当にケン君が好きね」


 ルートちゃんは僕の側に歩いてきて、抱っこをして欲しいと手を広げた。

 僕に抱っこされて満足げなルートちゃんに、フリージアお祖母様もニコリとしていた。


「ルートは顔見知りが始まっているんだけど、ケン君は本当に好きね。きっと、遊んでくれる優しいお兄ちゃんって思われているのね」


 セリナさんも、ニコニコしながら僕に抱っこされているルートちゃんを見ていた。

 一方で、ルートちゃんを抱っこできなくてシンシアお姉様はちょっと不機嫌そうだ。

 そして、今日はエレンお祖父様と共に早いうちに王城に来て欲しいと言われていた。

 名残惜しいけど、ルートちゃんはセリナさんに預けた。


「ぶー」


 ルートちゃんは、僕から離れると分かりやすい程不機嫌そうな表情になった。

 また今度抱っこしてあげると言いながら、僕はエレンお祖父様と一緒に馬車に乗って王城に向かった。


「陛下、アーサー様、新年おめでとうございます」

「おめでとうございます」

「うむ、おめでとう。二人とも、席につくように


 応接室に行くと、陛下とアーサー様が僕たちを待っていた。

 どうやら、込み入った話のようだ。

 僕とエレンお祖父様が席に着き、僕がスラちゃんたちを抱くと陛下があることを話し始めた。


「二人を呼んだのは、強制労働刑になっているギャイン騎士爵の件だ。ギャイン騎士爵は昨年末に獄死した」

「「えっ!?」」


 陛下の話は、とても衝撃的なものだった。

 強制労働刑になったのも去年の夏前だし、まだ数ヶ月しか経っていない。

 しかも、厳しいとはいえ最上級の強制労働先ではなかったはず。

 ここから先は、アーサー様が説明をしてくれた。


「ギャイン騎士爵を含む強制労働刑を言い渡された贅沢派は、何と強制労働を拒否した。農作業をメインとした、かなり重い労働ではないのにも関わらずだ。もちろんそんなことは許されるはずもなく、より重い強制労働刑の執行先となる鉱山に送られた。だが、奴らは既に贅沢によって体に病気を持っていた。その上、生意気な態度が起因で強制労働先にいた他の受刑者からも相当なかわいがりを受けた。そして、新年を待たずに全員病気で亡くなった」


 衝撃的な内容に、僕もエレンお祖父様もスラちゃんたちも思わず固まってしまった。

 そういえば、父親は軍人なのに軍服がはち切れそうな程横に体が大きかったっけ。

 心臓などに病気を持っていたのは、ほぼ間違いないだろう。

 そして罪人なので葬式も行われず、王都の教会にある墓には遺髪のみ送られたという。

 あまりにも呆気ない父親の最期に、僕もエレンお祖父様も言葉が出なかった。


「これが一つ目だ。そして、もう一つ悪いニュースがある。ギャイン騎士爵家には、当主の犯した戦場からの脱走行為により罰金が科せられている。しかし、あの兄は未だに罰金を支払っていない。本人に直接通告したのにも関わらずだ。分割納付も認めたが、昨年末までに手続きは行われていない」


 再び陛下が話した内容に、これまた僕とエレンお祖父様は言葉が出なかった。

 特別訓練で地方に行っていたにしても、本人にも担当者が直接話をしている。

 それなら、兄は何かしらの対応をしないといけないだろう。

 それとも、本人は何もしなくても大丈夫なのかと思っているのだろうか。


「実は、本人を王都に呼び出している。明日王城に呼んで、私から直接説明する。もし応じない場合は、ギャイン騎士爵家がどうなるかも含めて話す。本人が理解するかは別としてだが」

「その、兄が迷惑をかけて申し訳ありません」

「ケン君が謝る必要はないが、もうギャイン騎士爵家の運命は決まったと思うだろう」


 王太子殿下のアーサー様自ら話をしても、もしかしたら本人は事の重大さを理解できないかもしれない。

 何にせよ、明日の説明を受けて兄がどう動くかだ。

 話はこれで終わりなのだが、僕は陛下、アーサー様、エレンお祖父様と別れて別の応接室に向かうことになった。


「「「あー!」」」

「ふふ、アリアもブライトもケン君のことが好きなのね」

「ジョセフも、ケン君に抱っこされて安心しているわ。ケン君は優しいから、赤ちゃんに好かれる体質なのね」


 今度は王家の女性陣とシーリアさんが待っていたのだが、僕はいきなり赤ちゃんまみれになってしまった。

 両膝にアリアちゃんとブライトちゃんを乗せ、足の間にジョセフちゃんが入って僕に寄りかかっていた。

 母親でもあるメアリーさんとシーリアさんだけでなく、王太后様と王妃様も微笑ましい光景にニンマリとしていた。

 抱きつかれている赤ちゃんの体温が高くて、僕はちょっと汗をかいているけど。

 朝もルートちゃんに抱きつかれていたが、何故か赤ちゃんに好かれるんだよなあ。


「ふふ、仲が良いのはとても良いことよ。赤ん坊と言えども、嫌な相手には泣いて嫌がるわよ」

「少なくとも、三人はケン君が大好きなのよ。今年はきっと三人も活発に動き出すだろうし、一緒に遊んでとせがんでくるはずよ」


 王太后様の話よりも、王妃様の話の方が気になってしまった。

 現に、ルートちゃんから遊んでとせがまれているんだよなあ。

 とはいえ、僕も赤ちゃんと遊ぶのはとても癒された。

 因みに、夜会の時にあったクリスとシンシアお姉様にアリアちゃんたちとのことを話すと、僕ばかりズルいと言われてしまった。

 こればかりは、僕からはなんとも言えなかった。

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