第百九話 年末の奉仕活動と赤ちゃんとのふれあい
いよいよ年末となり、僕は大教会で行われている年末恒例の奉仕活動に参加していた。
クリスとスラちゃんたちも一緒で、クリスはシロちゃんを抱いて町の人への治療をしていた。
「サイオン枢機卿様、久々の来訪となり申し訳ありません」
「いやいや、ケン君が詫びを入れる必要はない。それに、いつも王都の各教会を回って治療をしてもらい、こちらが感謝を言わないといけないのだよ」
治療の合間に、奉仕活動の様子を見に来たサイオン枢機卿様と簡単に話をした。
僕のファンだったある貴族令嬢に襲われかけたのもあり、僕は年数回行われる王家主催の奉仕活動以外は大教会にあまり行かなかった。
もちろん教会側も僕の心情は把握しており、無理に僕を大教会に誘うことはなかった。
それに、僕は奉仕活動が嫌いではなく、強引な人とのやり取りがあまり好きでないだけだった。
大教会で奉仕活動で一緒になる貴族令嬢は僕とクリスの婚約関係も知っているし、話をしていても全く嫌悪感はなかった。
「クリスちゃん、ケン君ってやっぱり可愛いよね」
「とっても可愛いです! この前ルートちゃんを抱っこしていたら、ルートちゃんと一緒にニコリと笑い合っていたんですよ」
「それは、とてもいい話ね。ケン君は赤ちゃんにも優しく接するし、可愛いものが好きなんだろうね」
何というか、僕の隣でクリスと貴族令嬢たちがツッコミ難い話をしていた。
僕だって、可愛いものは普通に可愛いと思いますよ。
ルートちゃんだけでなく、王家の双子ちゃんやシーリアさんの赤ちゃんとも触れ合うことが多かった。
みんなとても可愛いし、更に僕にもとても懐いてくれていた。
でも、僕よりもお世話が上手なスラちゃんたちの方が懐いているんだよなあ。
その点に限っては、ちょっと悔しいと思った。
シュイン、ぴかー!
「うーん、お腹の調子が良くなかったですよ。お酒は程々にして下さいね」
「ガハハ、こりゃ参ったな。でも、仕事終わりの酒は美味いんだよな」
僕はというと、目の前に並んでいる多くの人への治療に集中していた。
スラちゃんとレモンちゃんも頑張って治療をしていくが、年末とあって人の数もとても多かった。
それでも、僕は治療の手を緩めることはなかった。
やっぱり、元気になってもらいたいという気持ちに偽りはなかった。
「ふふ、やはりケン君はとても優しいわね。それに、どんな人にもにこやかに接しているわね」
今日は、王家から王太后様が代表して奉仕活動に参加していた。
僕は別に見た目がどうこうで差別するつもりは毛頭ないし、厳つい顔の町の人でも全く問題無い。
シュイン、バシッ、ふわーっ。
「おい、何だ何だ!?」
もっとも、治療や炊き出しの列に並んでいる犯罪者は、リーフちゃんとアクアちゃんの鑑定で一発で分かってしまう。
そして、拘束魔法で動けなくしてから兵の所に念動で運んでいた。
今日は軍で飼われているブドウちゃんもやってきていて、先輩スライムに負けじと頑張っていた。
捕まえた犯罪者は直ぐに軍の施設に送られ、厳しい尋問が待っているはずだ。
年末とはいえ、尋問などは関係なかった。
「きっと、来年はアーサーとルーカスの子どもが元気よく教会内を走り回っているはずよ」
「間違いないですな。子どもは、元気が一番ですぞ」
「「「わーい」」」
教会前で追いかけっこをしている町の子どもを、王太后様とサイオン枢機卿様はにこやかに見ていた。
もしかしたら、来年はルートちゃんも一緒に追いかけっこに加わるかもしれない。
とても賑やかな光景が、直ぐに想像できてしまった。
こうして無事に奉仕活動は終わり、僕とクリスは王太后様から王城でのお茶に誘われた。
「「あうあう」」
「ふふ、お兄さんとお姉さんに抱っこしてもらって良かったわね」
応接室に行くとメアリーさんと双子ちゃんが待っていて、僕がアリアちゃん、クリスがブライトちゃんを抱っこした。
二人とも産まれた時よりも随分と身体も大きくなり、手足も活発に動かしていた。
二人は泣くこともなく素直に僕たちに抱っこされており、メアリーさんも思わずニコリとしていた。
「確かに、来年の今頃はとても賑やかなことになっていそうね。でも、ルーカスのところの子は少し大人しめなのよね」
ルーカス様の息子のジョセフちゃんは、早産というのもあり少し体も小さめだった。
しっかりと体は大きくなってきているが、王太后様はその点を心配していた。
「きっと大丈夫ですわ。お姉ちゃんが活発だから、きっと引っ張っていくと思いますわ」
「あー」
メアリーさんの声に、アリアちゃんも元気よく手を挙げていた。
ブライトちゃんよりも、圧倒的にアリアちゃんは活動的なんだよね。
間違いなく、みんなを引っ張っていくお姉ちゃんになりそうだ。
その後も、みんなで赤ちゃんの話題を中心に話していた。
何だか、みんながホッコリとする会話だった。
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