第百四話 王家の新たな命と父親の処分
こんな感じで日々を過ごしていき、段々と暑い季節になってきた。
奉仕活動中に問題を起こしてきた貴族へは、王家より厳重注意をしてもらった。
だが、肝心の本人がキチンと聞いてるかは全く不透明だ。
よちよち、よちよち。
「ルートちゃん、こっちだよ」
「こっちこっち」
「あーう、あーう」
今日は、僕の屋敷に親戚がみんな集まっていた。
応接室で、よちよちとハイハイを始めたルートちゃんを、クリスとシンシアお姉様が手を叩きながら呼んでいた。
赤ちゃんの成長は本当に早く、この前まで首が座っていただけかなと思っていた。
「ふふ。みんなの前だと、ルートも本当に元気ね」
セリナさんも、元気いっぱいなルートちゃんを微笑ましく見ていた。
ルートちゃんの周りにはスラちゃんたちもいて、ぴょんぴょんとルートちゃんを応援していた。
ルートちゃんはスラちゃんたちとも友達として接していて、時々スラちゃんたちをなでなでしていた。
こうしてにこやかな時間を過ごしていたところで、応接室に至急を知らせる連絡が入った。
「失礼します。王城から、王太子妃様の陣痛が始まったとの連絡がございました。至急、スラちゃんたちを王城に派遣して欲しいとのことです」
「「おおー!」」
使用人の報告に、クリスちゃんとシンシアお姉様は歓声を上げた。
遂に、メアリーさんの出産が始まったんだ。
もちろん、スラちゃんたちは張り切って準備を始めた。
王城から出迎えの馬車が来ているそうで、スラちゃんたちは直ぐに馬車に乗って王城に向かった。
「どんな赤ちゃんが生まれるんだろう。とっても楽しみだなあ」
「そうね。男の子でも女の子でも、元気な子が生まれるのを待ちましょうね」
ニコニコが止まらないクリスちゃんに、セリナさんもニコリとしていた。
一方で、シンシアお姉様は出産の大変さを思い出していた。
「セリナお義姉様がルートちゃんを出産した時は、とても時間がかかりました。きっと、今回も赤ちゃんが産まれるのは時間がかかるのかなと……」
「そうね、私もルートを出産した時はかなり大変だったわ。でも、スラちゃんたちが回復魔法で助けてくれたし、今回もきっと大丈夫よ」
「あう」
セリナさんは、ルートちゃんを抱っこしながらこの後の状況を楽観視していた。
僕も、王城は治療設備を整えているし問題ないと思った。
「ただ、話は聞いていたけど実際に初産はとても時間がかかるわ。だから、スラちゃんたちももしかしたら帰ってくるのは明日になるかもしれないわ」
セリナさんがこの後の展開を予想してくれたが、スラちゃんたちは念のために一週間王城に滞在することになっている。
回復魔法が使えないアクアちゃんとリーフちゃんは、王家から別の用事を頼まれる事になっていた。
「ふわぁ……」
「あらあら、ルートはたくさん遊んだからおねむなのね」
「「とっても可愛いね」」
そして、予想通りこの日は何も報告はなかった。
ルートちゃんが眠くなったのもあり、セリナさんとシンシアお姉様も一足先に屋敷に帰った。
クリスは、僕の屋敷に泊まる日なのでそのまま屋敷に泊まっていき、そのまま夜も過ぎていった。
吉報が届いたのは、翌朝の朝食時のことだった。
「ケン様、クリス様、王城より元気な王子様とお姫様がお生まれになったとの連絡がございました」
「わぁ!」
何と、メアリーさんは双子を出産したのだ。
これには、僕もとってもビックリした。
そういえば、同じく妊娠しているシーリアさんは回復魔法を通じて一人を妊娠しているのを知っていたが、メアリーさんには僕から回復魔法などを行っていなかった。
今思えばメアリーさんのお腹はかなり大きかった気がしたが、女性にあれこれ聞くのは失礼かなと思っていた。
是非とも赤ちゃんを見に来て欲しいと誘われ、僕とクリスは急いで朝食を食べて身支度を整えた。
因みに、王家の赤ちゃんの保護のために面会はごく限られたもののみ行うことができる。
光栄にも、僕とクリスはそのごく僅かの人に選ばれた。
普段から王家と良好な関係を築いており、更に僕が治癒師というのもあった。
メアリーさんの出産のサポートをした、スラちゃんたちのこともあるしね。
着替えを終えたら、さっそく王城に向かった。
「「うにゅ……」」
「わあ! 小さいね、可愛いね!」
王城の一室に用意された出産育児用の部屋に案内され、ベッドに腰掛けているメアリーさんとベビーベッドにいる双子ちゃんがいた。
双子ちゃんは王家らしい金髪の髪で、今は見た目もそっくりだ。
そして、クリスは双子ちゃんに目を奪われていた。
「とっても可愛い赤ちゃんですね。でも、その代わり出産はとても大変だったと思います」
「ケン君は、早速私の体を気にしてくれたのね。時間はかかったけど、それでもスラちゃんたちのおかげで安産だったわ」
この世界は出産時には危険が伴い、双子だと更に危険も増す。
こうして安産だったのも、間違いなく多くの人のおかげだ。
「メアリーさん、名前は何というんですか?」
「お姉ちゃんがアリアで、弟がブライトよ。出産前に、幾つか名前の候補を決めていたのよ」
「わあ、アリアちゃんとブライトちゃんだね」
クリスは、とにかく赤ちゃんが可愛くて仕方ないみたいだ。
そういえば、屋敷でルートちゃんを相手にしていた時も、抱っこしたりハイハイの時に呼んだりとずっと相手をしていたっけ。
良いお姉ちゃんとして、このまま接して欲しい。
コンコン、ガチャ。
「おお、ケン君はここにいたのか。悪いが、スラちゃんも一緒にちょっと来てくれ」
ここで、アーサー様が育児部屋に顔を見せて何故か僕のことを呼んだ。
なんだろうなと思いつつ、僕は同じく呼ばれたスラちゃんと共にアーサー様の後をついていった。
そして、やってきたのは陛下の執務室で、部屋の主の陛下だけでなくルーカス様とヘルナンデス様も部屋にいたのだ。
余計に分からなくなったけど、取り敢えず席についた。
「ケン、楽しんでいるところ悪いな。実は二つ話があるのだ」
「二つ、ですか?」
「そうだ。最初に、面倒くさい話をしておこう」
うーん、陛下からの話ってなんだろうか。
スラちゃんと共に不思議に思っていたら、最初の話は僕に関することだった。
「ギャイン騎士爵を含む、先の帝国との軍事衝突で敵前逃亡した貴族当主たちへの処分だ。全員強制当主交代の上で、十年の強制労働刑となっている。更に、罰金を納めることになった」
敵前逃亡だけでなく、今まで軍の中で色々やってきた不法行為を合算したという。
因みに、強制労働刑の働き先はかなり厳しいところらしく、十年の刑期を無事に終えるのは不可能と思われていた。
「また、ギャイン騎士爵家の継承保留としている。兄があの調子では、爵位を継ぐのは難しいだろう。一定期間様子を見るが、改善が見られない場合はケンが爵位を預かり、将来産まれた子どもに爵位を継がせる」
つまり、僕のアスター男爵家と実家のギャイン騎士爵家の両方に対応することになった。
昔から似たような事例はあり、今回も何も問題ないということになった。
「面倒くさい話は、この辺りで終わりにしよう。もう一つも、ある意味面倒くさいことだ。王子と王女が同時に産まれたと言うのもあり、贈り物攻勢が予想される。そこで、メアリーたちの健康確認とは別に贈り物の確認としてスライムたちを派遣するように」
陛下の話を聞き、スラちゃんは綺麗な敬礼をしていた。
鑑定魔法が使えるスラちゃんたちなら、怪しいものは直ぐに見つけるだろう。
もちろん、近衛騎士も一緒に確認をするそうだ。
「あの、僕はおしめやタオルなどの育児セットだったのですけど、贈り物として大丈夫でしたか?」
「何も問題はない。というか、そっちの方が助かると当人も言っていた。変な贈り物をされるよりも、とても現実的で助かる」
僕の贈り物は、事前にメアリーさんに確認をしていた。
中には、王家に気に入ってもらえるチャンスだと張り切って贈り物をするものもいるという。
その貴族の感性がズレていて、とんでもない贈り物をする時もあるらしい。
「話はこの位にするとしよう。ケンもスラちゃんも、育児部屋に戻ると良い」
話はこれで終わったんだけど、中々面倒くさい話だ。
因みに、暫く回復魔法が使えるスラちゃん、シロちゃん、レモンちゃんが交代で育児部屋に泊まることになった。
もちろん、アクアちゃんとリーフちゃんも、贈り物確認を頑張るぞと意気込んでいたのだった。
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