第百二話 慰労会での婚約発表
数日後、王城で関係者を集めて帝国との軍事衝突で活躍したものへの慰労会が開かれた。
国境で実際に戦闘に参加した兵は、その殆どが引き続き国境の前線基地で任務にあたっている。
停戦合意直後ということもあり、司令官のジーグルト様も前線基地の指揮を執っていた。
そのため、軍事衝突時に国境にいて現在王都にいるのは、上級官僚の研修としてガルフォース辺境伯領に行っていた僕たちと引率者のヘルナンデス様だった。
しかし、ヘルナンデス様曰く一番活躍した僕とスラちゃんたちがいるから全く問題ないらしい。
しかも、上級官僚たちは自分たちは何もしていないからと、慰労会の参加を辞退しようとした。
支援として動いてくれたことも大切なことだと、ヘルナンデス様に慰留されたのだった。
とはいえ、今日は帝国との軍事衝突よりもこっちの話題が中心となった。
「ここで、アスター男爵家ケンと、ダイナー男爵家クリスの婚約を発表する」
僕とクリスが陛下の隣に並び、陛下直々に婚約を発表した。
これはかなり異例なことであると共に、とても名誉なことでもあった。
集まっている多くの人から温かい拍手を贈られ、僕とクリスは深々と頭を下げた。
スラちゃんたちも、ちゃっかりと僕たちの隣に来てお辞儀をしていた。
その後は王家への挨拶なのだが、ここからがとても大変だった。
「ふふ、二人の赤ちゃんを抱くまで、私も生きていないといけないわね」
ニコリと微笑む王太后様から、もう何度目かというセリフを聞かされた。
王妃様、メアリーさん、シーリアさんからも似たような話をされ、フリージアお祖母様、シンシアお姉様、ケーラさんも赤ちゃんを早く抱っこしたいと盛り上がっていた。
何というか、知り合いの女性陣は手が付けられない状況だった。
「やっぱり、二人はくっついたわね。最初から仲が良かったのよね。奉仕活動でも、仲良さそうにしていたわ」
「確か、ケン君が瀕死の重傷だったクリスちゃんを治療したのよね。最初からロマンティックな展開だったのね」
「そして、お互いに魔法の訓練で切磋琢磨しながら気持ちを深める。これだけで、恋愛の本が一冊書けるわ」
ロマンティックな話が好きな貴族令嬢は、テーブルに集まって夢物語だと語り合っていた。
更に貴族令嬢はスラちゃんを呼び寄せて、あーだこーだ語り合っていた。
スラちゃんは僕とクリスをくっつけたいと思っていたらしく、色々な情報を貴族令嬢に提供していた。
うん、あそこに混ざるのはかなり危険だ。
因みに、知り合いの貴族令嬢は僕とクリスがいつくっつくかも予想していたという。
すると、今度は別の意味で面倒くさい人がいたのだ。
「なぜ、なぜ私よりも圧倒的に若いケン君が婚約するの……」
ローリー様が、テーブルで一人お酒を飲みながらブツブツと呟いていた。
オーフレア様曰く、ローリー様はまたお見合いに失敗したという。
だからといって、お酒に逃げるのは良くないですよ。
「クリスも、あんな感じになるのは駄目だ。悪い大人の典型例だ」
「うん、流石に分かります……」
クリスも、オーフレア様の指摘を素直に聞いていた。
因みに、オーフレア様の奥様は第二子妊娠中だという。
オーフレア様は、盗賊みたいな見た目とは違って家庭を大事にしているもんなあ。
「あの、帝国軍に勝ったという意味も含めての慰労会なんですけど、これで良いのでしょうか?」
「良いんじゃねーのか。ヘルナンデス様が指揮をして、ケンとスライムたちであっという間に帝国軍を制圧したんだ。それに、この程度なら戦争じゃねーし、身内が集まっての食事会みたいなものだ」
オーフレア様は、もぐもぐとお肉を食べながら問題ないと言っていた。
因みに、クリスはいつの間にか貴族令嬢に捕まってあれこれ話を聞かれていた。
そこで、僕はどうしようかと迷っていた上級官僚たちに話しかけた。
「その、ケン様の魔法であっという間に終わってしまったので、我々は書類整理しかやることはありませんでした」
「報告書を書く良い練習にはなりました」
「前線基地に、数人文官がいてもいいかもしれません。その、私はもう無理ですけど……」
上級官僚と、前線基地での感想を話した。
全員が、軍事衝突を目の前で見るのはもうこりごりだと言っていた。
僕の場合、六歳で最初の戦争を経験したから今回も全然平気だったのかもしれない。
「まあ、あれだ。お前らは、お前らにしかできない仕事をやればいい。魔法を使った戦闘など、俺やケンに任せればいいんだ」
「「「「「はい!」」」」」
オーフレア様の励ましに、上級官僚も元気よく返事をしていた。
この分なら、きっと気持ちも回復するはずだ。
「ケン、私を抜きにして楽しくお喋りしないの!」
ここで、クリスがプリプリしながら僕のところにやってきた。
どうやら、ようやく貴族令嬢たちから抜け出したみたいだ。
かくいう僕も、流石に女性陣に囲まれるのはちょっと気まずい。
そんな僕とクリスのやり取りを、オーフレア様や上級官僚が少し笑いながら見ていたのだった。
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