第十話 魔力適性と今後の予定
「うーん、うん? ここは……」
翌朝、僕はいつもと見慣れない場所で目が覚めた。
とてもふかふかなベッドから上半身を起こして……
そっか、昨夜は王城の客室に泊まったんだ。
段々と、濃密だった昨日の内容を思い出してきた。
夢のような一日だったが、この豪華な客室にいるということが夢ではなく現実だったと思い起こされた。
さて、今日も一日頑張らないとって思い、僕はうーんと背を伸ばした。
枕元で寝ているスラちゃんも、そろそろ起こしてあげないとね。
「あの、ここで魔力適性を測るんですか?」
「興味を持っているものが多いのでな。直ぐに終わる」
食堂に行くと、何故かテーブルの端っこに前世のタブレットみたいな魔導具にガラス玉みたいなものが繋がれて置かれていた。
ルーカス様曰く、この魔導具で魔力適性が測れるという。
なんというか、高性能な魔導具ですね。
しかも、王家の方々も全員揃って僕のことを興味津々に見ていた。
「よし、準備ができた。ケン君、魔導具のガラス玉に手を置いてくれ」
僕は、ルーカス様に言われるがままガラス玉に手を置いた。
ぴかー!
少し熱さを感じたと思った瞬間、ガラス玉がまるで虹のように様々な色に輝き出したのだ。
僕を見守っていた陛下を始めとした王家の方々も護衛の兵も、信じられないという驚きの表情に変わった。
「これは凄い、ケン君はやはり全属性に適性があった。特に、回復魔法と聖魔法に強い適性がある」
ルーカス様も、驚愕の表情でタブレットみたいな魔導具を見ていた。
王国広しといえども、オールラウンダー系の魔法使いはごく僅かだという。
そしてスラちゃんの魔力適性も行ったが、僕と同じくオールラウンダーという結果だった。
スラちゃんの場合は、回復魔法と水魔法に特に適性があるという。
もしかしたら、三年間ずっと一緒に魔力循環などの訓練をしていた影響かもしれない。
「ふふ、ケン君とスラちゃんは優秀な治癒師だと改めて証明されたのよ。それだけでも、とても凄いことなのよ」
この場は、王太后様がしめてくれて一件落着。
僕とスラちゃんは回復魔法しか使ったことがないから、攻撃魔法を使うにはある程度の訓練が必要だ。
それに、今は負傷兵を治療することが先決だ。
僕とスラちゃんは、急いで朝食を食べて準備を整えたのだった。
「ケン君、おはよう。今日はカッコいい服を着ているわね。髪の毛もサッパリとしているわ」
馬車に乗って王城から軍の治療施設に行くと、今日もシーリアさんが出迎えてくれた。
ルーカス様は、王城で会議をしてから軍の施設に向かうらしい。
偉い人は朝から大変だ。
「じゃあ、今日も最初は大部屋に入院している兵から治療をしましょう。個室に入院している兵の治療は、午後からね」
シーリアさんが今日の予定を教えてくれ、僕とスラちゃんは頑張ろうと気合を入れた。
すると、シーリアさんは周囲を見回してから僕に顔を近づけて小声で話してきた。
「ケン君に話が伝わってしまうかもしれないから、先に言っておくね。ギャイン騎士爵、ケン君が前線で亡くなれば国から見舞金が手に入ると言っているのよ。既に上の方に報告してあるけど、普通にあり得ない話だわ」
つまり、父親と兄は僕に国のために死んでこいと言ったが、死ねばお金も手に入ると甘い考えでいるようだ。
余りにも短絡的な考え方に、僕とスラちゃんは思わず苦笑してしまった。
うん、父親と兄のことなんて気にしないで、目の前にいる負傷兵の治療を頑張ろう。
僕とスラちゃんは、再び気合を入れたのだった。
「その話は私も聞いている。僅か六歳の子どもが、剣を手にして帝国兵と戦うとでも思っているのか? もし、後方作業中に帝国兵に襲われて死ぬとなると、部隊が全滅している事になる。どうせ、周りのことなど考えずに短絡的に言っているのだろう」
治療中に治療施設の状況を視察しに来たヘルナンデス様と会ったが、父親の馬鹿な発言はまたまたこの国の偉い人たちの反感を買ってしまったようだ。
今は大変な時期なので対応は後回しにするそうだが、戦争が終わったら間違いなく処罰の対象になるだろう。
「しかし、ケン君とスラちゃんの回復魔法はもの凄いな。もう、大部屋に入院していた負傷兵の治療を終えそうだ。ただ、まだ負傷兵はいるから、頑張って治療してくれ」
「はい!」
ヘルナンデス様は、僕の返事を聞いて満足そうにしながら治療施設を後にした。
昨日退院した兵のベッドには、既に別の負傷兵が入院していた。
どうも、無理をして動いていたり兵舎で療養していたという。
個室に入院している重傷者もいるし、やることはたくさんある。
こうして、今日も僕とスラちゃんはとても忙しく動いていたのだった。
「ケン君、イリスさんの実家に連絡してみたわ。どうも、イリスさんが亡くなった時の葬儀の際にかなり揉めたらしいわ。なので、今すぐにケン君を引き取るのは難しいとの事よ。だけど、戦争が終わったら是非ケン君に会いたいと言っていたわ」
「王妃様、僕のためにわざわざすみません」
「いいのよ、私もイリスさんのことは気になっていたのよ」
夕食時に、王妃様が僕に話しかけてくれた。
あの父親なのだから、逆にどんなトラブルがあったのか気になってしまった。
ということで、僕は引き続きルーカス様の配下で色々動くことになった。
「明日、明後日は、やることは変わらない。明々後日の朝、私と叔父上と共に現地に向けて出発する。ケン君がたくさんの負傷兵を治療してくれたおかげで、同行者が更に増えた」
ルーカス様は、出発の準備でとても忙しいという。
僕とスラちゃんも、頑張って治療をしないといけないね。
「前線には、私とともに凄腕の治癒師が向かうと伝えてある。前線の指揮官も、とてもありがたいと言っているぞ」
「えっ!? あの、その、僕はそんなに凄い治癒師じゃないですよ」
「ケン君、謙遜しなくていいよ。重傷だった叔父上とお祖母様を治療しただけでも、称賛されるべき事だ」
ルーカス様の話に、王家の方々はウンウンと頷いた。
他の魔法使いがどんな感じなのか分からないので、比べようもなかった。
いずれにせよ、多くの負傷兵が復帰することで戦況もかなり良くなるとも言っていた。
「ケンは、外野の騒音など気にせずに自分のやることをやれば良い。面倒くさいことを対応するのが大人の仕事だ」
お肉を頬張りながら陛下がそう答えたが、この分だと父親の発言は間違いなく陛下にも届いているだろう。
戦争が終わったら、何らかの処分を受けるのは必至だ。
僕も、発言とかには気をつけないといけないね。
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