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第11話

 ホラーは待ち合わせ場所の時計塔の下でメロディと合流する。

 メロディは長い黒髪をおさげの髪形にしている。頭には黒い帽子をかぶっていて、起き入りの赤い色のコートを着ている。らくだ色のハーフパンツに黒のタイツをはいていて、足元は皮のブーツをはいていた。(大きな買い物袋をもっていた)

「よかったの? 結構高い買い物だったけど?」

「だってどうしても欲しかったんだもん。それにさ、いつも頑張っているんだからたまには贅沢なお買い物をしたっていいでしょ? 神様だってこれくらいで怒ったりしないよ」横にいるメロディにホラーは言う。

 ……神様。神様か。

 一度も見たことも声を聞いたことのない神様。神様って本当にどこかにいるのかな? この世界のどこかには神様がいてみんなのことをずっと見てくれているのかな? ……私のこともちゃんと知っているのかな?

 そんな疑問をふと思ったホラーはメロディにそのことを聞いてみる。

「世界には大きな物語とたくさんの小さな物語がある。大きな物語はひとつだけ。たくさんの物語は人間の数だけある。その大きさは常には等しい。小さなたくさんの物語が集まって大きな物語になる。小さな物語は人生。大きな物語のことを神様という」得意げな顔をしてメロディは言う。

 帰り道の途中で礼拝堂によってお祈りをした。

 神様に会いたいと思ったけど、やっぱり今日も会うことはできなかった。

 礼拝堂の中ではホラー以外にも何人もの人たちが神様にお祈りを捧げている。穴掘りの仕事をしていると、自分と神様の距離が少し縮まったような気がした。(嘘じゃない)

 お家に帰るとまずどこに獣の頭蓋骨の骨を置こうかと考える。

 いろいろと実際に骨を置いたり影と相談したりして試してみたのだけど、結局食事をするテーブルの真ん中に置くことにした。その場所だとろうそくのすぐ近くでよく頭蓋骨の骨を見ることができたし、どこにいても自然と目の中に入るような目立つところに置いておきたいと思った。

「このあとはどうするの?」メロディが言う。

「もう少しこれを見てたい」ホラーは椅子に座って獣の頭蓋骨の骨を見る。骨を見ながらこの子は生前にどんな生活をしていたのだろうと考えた。

 家族は? 友達は? 恋人はいたのだろうか? お腹を空かせながら冷たい大地の上を走り続けて、そのまま食べ物が見つからなくて、冷たい風が吹く世界の中で一人、孤独に生き絶えてしまったのだろうか? そのときこの子は最後にどんなことを考えたのだろう? 強く生きたと思ったのだろうか? それもと生まれてこなければよかったと思ったのだろうか? そんなことをホラーはずっと空想していた。

 たまにメロディが話しかけてきたけど、ホラーはうん、とか、えっと、とか曖昧な返事しかしなかったのでメロディは一人で(いつものようにお気に入りの)漫画を読み始めてしまったようだった。

 ろうそくの小さな火に照らされている獣の頭蓋骨の骨を見ながらホラーはいつのまにか獣の女の子になって一人、孤独に冷たい大地の上を走り続けていた。

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