表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

第5話 墓地の戦い

1話あたりの文字数が多すぎたので、9話まで分割して再投稿しています。

 見下していた平民に足蹴にされ、投げ飛ばされ、土埃に塗れた。これがプライドの塊の少年貴族にとってどういった影響を及ぼすか。答えは単純である。

 フランク・ヘンズリーは我を忘れ、丸腰の相手に抜刀した。


「殺す!」


 絶叫しながら突進してくる相手に、武器を持たないジョージがとれる行動は1つしかない。栗色の髪の少年は脱兎のごとく逃げ出した。


(冗談じゃない!エドワード隊長も剣は抜かなかったのに!)


 心の内で毒づきながら、ジョージは全速力で墓地の出入り口を目指す。怒りに支配されて得物を振り回すばかりのフランクから離れることは簡単なもので、すぐに教会と墓地を囲う石壁に取り付けられた通用口の木扉に手を掛ける。しかし──


「くそっ、なんで開かないんだ!?」


 扉を押しても引いても、何度も把手に力を込めても、木と石畳が擦れる不快な音しか奏でず、開閉が出来ない。教会の施設はどれも年季が入ったものばかりだが、今日入ってきた時は問題なかったはずだ。ジョージが扉の前で何度も開けようと奮闘していると、ふと足元に違和感を覚えた。定まらない視線を向けると、扉と石畳の隙間に、意図的に木の端材が食い込められている!

 フランクたちが仕掛けたもので間違いない。いじめを外部に干渉させず、そして現在のように、ジョージが簡単に逃げられないように工作したものだ。


「徹底してるな、おい!」


 ジョージは悪態を吐いて端材を抜き取ろうとしたが、さっき何度も扉に力を加えたせいか、変に引っかかって中々取れない。


「っこんの!抜けろって!」


 ジョージは両手に力を込めて端材を掴み、全身でのけぞるようにして引いた。ミシミシ鳴っていた端材が、徐々に悲鳴を上げ始める。


(もう少しだ!)


 この障害物を取り除くのは秒読みだと確信したジョージは、爪を食い込ませて、思いっきり端材を引く。

 バギィッ!!という耳に残る音を放ちながら、端材が粉々になって引き抜かれた。よく見ると、木扉の一部も引っかかって抜いてしまったが、背に腹は代えられない。


「よし!」


 ジョージがようやく把手に手を掛け直したその時、背後から強烈な害意を感じ取った。咄嗟に身をひねりながら後ろを向くと、フランクが剣を突き立てて迫る寸前で、切っ先がジョージの右頬に浅い傷を残して木扉に突き刺さった。


「……貴様、避けるな!」


「あんた頭おかしいのか!?」


 理不尽な怒号に当然の反応を返すジョージに、フランクは剣を手放して、素早いパンチを繰り出してきた。最初とは打って変わって狙いが読めず、ジョージの小さい体に次々と拳が当たり、よろけてしまう。視界が殴られた反動でブレる中、フランクの右ストレートが顔面に迫るのが見えた。


(これは……避けられないな……)


 生意気にも、歳上の貴族の喧嘩を買ったことを後悔しかけたが、タダではやられたくはない。ジョージは防御を捨て、がら空きのフランクの胴体に渾身の右フックを放とうと準備動作に入ったその瞬間、視界の左端から伸びてきた腕がフランクの拳を掴み取った。


「!?」


 第三者の介入に驚いたフランクが視線をジョージから外した瞬間、神速の連撃が彼の腹に叩き込まれた。だが、フランクはまだ倒れない。すぐさま反撃を与える暇すら与えない第二撃が、彼の顔面に打ち込まれる。白目を向いたフランクが崩れ落ちるのを目にしたジョージは、恐怖で右拳を介入者に向けて突き出した。しかし、ブレブレの攻撃は一瞬ではじかれ、凄まじい殺意を肌で感じ取ったのを最後に、ジョージの意識は介入者の乱撃によって沈んでいった。

登場人物

・ジョージ・ウェブスター……革新派の襲撃を受け、記憶と両親を失った。トーマスの被保護者。

・フランク・ヘンズリー……前オルグレン辺境伯爵の遺児。

・ノエル……フランクの側近。父が男爵。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ