多元思考で次元が削減されると情報が欠落する問題
本稿は思考実験の一例です。ご参考としてお読みください。
まず、「専門家」の分布と「一般の人の分布」を、視点の違いごとに分け複数用意してみます。
たとえば、『「医療の専門家」と「一般の人」』と『「法律の専門家」と「一般の人」』と。
つまり、最低限4次元で考える前提があるとき、「専門家も専門外の領分では一般の人になるのだからみんな一緒」と一次元に次元削減される場合があります。
この時、一体何が起きているんでしょうか?
興味深い現象に見えたので、掘り下げてみましょう。
ちなみにこの現象は頻繁に見られるもので、例えば、みなさん、SNSで専門家の投稿を“分かりやすい一文”にまとめようとした経験はありませんか?
このように、多くの方がしばしば無意識に次元削減してしまう現象に関しての考察です。該当したと思われたとしても、否定する意図はありません。ご安心ください。
1. 情報の入力
例えば、「専門家と一般の人の分布は、視点によって変化する」という複数次元の概念を受け取ったとしましょう。ここでは、専門性が視点ごとに異なるため、最低限4次元の分布で考える必要があります。
(専門家は、要素数が少なく密度が高い分布、一般の人は、要素数が多く密度が低い分布をそれぞれ想定しています。要素は人数、密度は説明情報の圧縮率と関係しています。つまり、専門家と一般の人との間で説明情報の圧縮率が異なるという話をしてることを想定しており、専門家の説明は専門知識を背景にした高圧縮で一様の説明に近づきやすいことを意味しています。)
2. 認知的負荷の発生
4次元の分布を(例えば)二元的思考で処理するには、既存の思考の枠組みを拡張する必要がありますが、思考を拡張するよりも理解を単純化したほうがコストが低いため、理解の単純化へ向かうことが多いです。
3. 認知的不協和の発生
「専門家と一般の人の関係性は常に固定されていない」という考え方が、既存の二元論の枠組みと矛盾するため、認知的不協和が生じます。矛盾を解消するために、「何かしらの単純な結論」に収束させようとする心理が働きます。(ここで認知的不協和の種が生じています)
4. 確証バイアスによる情報の再解釈
4次元のモデルを処理する代わりに、「専門外では専門家も一般人になる=みんな一緒」という形に情報を圧縮します。これにより、視点の変化による専門性の変動を考慮せず、「一括りにする」という方向に認識が向かいがちです。
5. 一次元への次元削減
「専門家も専門外では一般人=みんな一緒」という単純な構造に変換され、全体が一次元の枠組みへと収束します。これにより、情報の処理負荷が減り、「明確で理解しやすいモデル」が完成します。認知的不協和が解消されて安心を得ることができますが、元の情報の関係性(専門家と一般の人間の説明情報の圧縮率の関係性)が失われてしまいます。つまり、もともとの話が多元のまま維持されず、削減されてしまうため、よく解らない難しい話になってしまいます。
このようなフローを経ることで、多次元的なモデルを単純化し、効率的に認知的不協和をなくすために、既存の思考との一貫性を維持しようとしているんじゃないか、と思われます。
皆さんはどのように感じられますか? ご感想をいただけると嬉しいです。