表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ashpunk Blues−灰燼世界のマシンシティ−  作者: I∀
第一章:【灰色の男】
7/82

第6話:「闇の運び屋」

 ネストシティへ続く崩れかけた通路を駆け抜けるアッシュ。肩にはラズ。


 ――背後では、ヴァルスが金属音を立てながら迫ってくる。


 その瞬間、空気が一変する。

 重たい熱気が背後から迫り、皮膚に刺すような圧力を感じる。


 通路の温度が急上昇する。

 蒸し暑さと共に、嫌な光のちらつきが視界に入る。


「……来る」


 アッシュは無意識に足を速め、ラズをしっかりと抱え直す。


 キィンッ――!!


 鋭い光が背後から放たれ、アッシュのすぐ横を焼き切るように駆け抜けた。

 壁面が蒸発し、爆ぜる。


「チッ、レーザーまで持ち出してきたか……!」


 体勢を低くし、次の一撃をギリギリで回避する。

 ラズをかばいながら、コンクリートの瓦礫の隙間を縫うように駆け続ける。


『さすがにこのままじゃヤバいよ!』


 アリアの警告が響く。


「分かってる!」


 アッシュはラズを片腕で支えながら、ポケットから小型の閃光ジャマーを取り出す。


 カチリ。


 スイッチを押し、背後へと投げる。


 バンッ!!


 白い閃光が炸裂し、ヴァルスたちの動きが一瞬止まった。


「今だ……!」


 アッシュは全速力で通路を駆け、ようやく開けた空間――アークシティの縁へたどり着く。

 そこには、ぼろぼろの看板がかろうじてぶら下がる古い市場跡が広がっていた。


 ラズを地面へと投げ下ろす。


「ここでひとまず隠れる」


『……で、どうするつもり?』


「ラズを運び出すには、別ルートを使うしかない」


 アッシュは周囲を見渡す。

 このあたりには、かつての住民たちが密かに使っていた“密航路”があるはずだった。


 一瞬の静寂。


 そのとき――


「誰が、あの女のところに行くか……!」


 ラズが目を覚まし、荒い息と共にポケットから銃を抜き、構えた。


 アッシュは反射的に転がっていた鉄パイプを掴む。


 次の瞬間。


 ――ガッ!!


 ラズの手首めがけて鉄パイプを叩きつける。


 鋭い音と共に銃が宙を舞い、地面へと落ちる。


 間髪入れず、左肩めがけてパイプを振り下ろす。


 ――ガンッ!!


 乾いた衝撃。ラズの体がびくりと跳ねる。


「なっ――!」


 蹴りが腹に突き刺さる。

 ラズは数メートル吹き飛ばされ、瓦礫に背をぶつけて呻く。


 アッシュがにじり寄る。

 ラズは血を吐くようにうめいた。


「クソが……お前の依頼は、俺をあの女のところに無事に連れて行けって言ったはずだろ……!」


 手にしたパイプを背後に放り投げる。


 ――カランッ。


 乾いた金属音が響く。


 アッシュは無言で落ちた銃を拾い、ためらいなくラズへ向ける。


 ――バンッ!!


 銃声と同時に、ラズの体が仰け反る。


「ッ…………!」


 右肩を押さえながら膝をつく。

 ラズの呼吸の合間に、歯を食いしばる音が漏れた。


 肩口から流れ出た血が、服に赤く染みを描いていく。ラズは顔を青ざめさせ、苦痛に顔をゆがめる。


「手足がついてりゃ問題ないんだとよ」


 アッシュは歩み寄り、冷たく言い放つ。


「お前、手足ついてるよな?」


『うん。全く問題ない』


 アリアが静かに応じる。


 ラズがもがきながらも何かを言おうとするが、アッシュは無造作に襟首をつかみ上げる。


「暴れたり逃げたりしたら、もっと痛いからな。

 さあ、行こうぜ」


 そのままラズの体を引きずり、アッシュは再び闇の中へと消えていった。





――See you in the ashes...

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
乾いたハードボイルドな文体に、手汗握るような戦闘シーン。 とてもワクワクしますね。 主人公アッシュと、AIのアリア、これからどこへ向かっていくのでしょうか? 展開が楽しみです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ